西洋音楽において、音楽を楽譜の形態にする際に現れてくるさまざまな知識や理論の総称。英語やドイツ語で「音楽の文法」とよばれるように、音楽の記譜と読譜のために必要な諸約束や諸規則をその内容とする。転じて、それらの事項を取り扱う教科や書物のことをいう場合も多い。一般的には、17世紀以降の西洋音楽、つまり五線譜表によって表記される音楽を対象としている。
具体的な内容は、便宜的に次の3段階に類別できる。第一の段階はごく表面的な知識に類するものであり、音名と譜表、音符と休符、拍子とリズム、発想記号、速度記号、省略記号、強弱記号、装飾音などが含まれている。第二の段階では、それらを土台にした一般的理論、たとえば音程や音階などに関する理論が説かれている。そして最後の段階では、和声に関する初歩的な知識や対位法の概要、あるいは楽式論や演奏の形態といった音楽の理論的内容までが触れられている。もっともこれらの類別は確固としたものではなく、書物によってもその取り扱う段階はさまざまである。また、さらに詳しい楽典書では、音楽史概説や世界各地に現存する音階の種類と音楽内容の説明を加えたものもみられる。だが、これらの事項までを含んだ書物は、音楽通論とか音楽概説とよばれるのが普通である。このように、楽典は西洋音楽を知るうえでの重要な手掛りの一つではあるが、これだけをもって西洋音楽を知ることはけっしてできない。
[黒坂俊昭]
楽譜の読み書きに関する基本的な諸規則を教える学科目,あるいはその教科書。西洋音楽では,近代の5線式記譜法は15世紀に始まり18世紀には定着するが,今日の楽典がこれに立脚するものであることはいうまでもない。内容は音の高低(音,音名,音程,音階,譜表,調,旋法,移調,転調),音の長短や韻律(音符と休符,リズム,拍子,小節・小節線),音の強弱,音色,速度,表情などに関する各種の記号や標語,装飾音や各種の略記法などを含む。より高度な音楽通論の場合は,上記の諸項目の原理的な検討のほか,和声学や対位法,楽式論,楽器法,演奏法,総譜読解,音響学などに関する初歩的な知識に言及することもある。
執筆者:土田 英三郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 (株)ヤマハミュージックメディア音楽用語ダスについて 情報
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