機能心理学という概念は一般に心の働きを研究する心理学のことで、心に浮かぶもの(意識内容)を研究する心理学などに対立するものであるが、ここではイギリスの心理学者ティチナーの構成心理学に対立する機能主義心理学の意味に限定して説明する。C・ダーウィンの進化論の流れはアメリカの風土に受け入れられ、W・ジェームズに始まるアメリカ心理学の底流をなしており、これが機能主義心理学の母体となった。
20世紀の初めに、この流派と意識内容を研究するティチナーの構成心理学との間に論争があり、その結果デューイ、エンジェルJames Rowland Angell(1869―1949)、カーHarvey A. Carr(1873―1954)らのシカゴ学派とキャッテルJames Mckeen Cattell(1860―1944)、ウッドワースRobert Sessions Woodworth(1869―1962)らのコロンビア学派によって代表される機能主義心理学が成立した。その特徴は、心の働きを環境に対する適応の産物としてとらえる点にあるが、まもなくワトソンの主張する行動主義によって吸収された。アメリカの心理学は本質的に機能主義的である。
[宇津木保]
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…この問題をさらに厳密に考えぬき質量,力,エネルギー,原子,時間,空間といった近代科学の基本概念を,実体的なものの表現としてではなく,現象相互の関係やその変化を法則的に表現しようとする関数概念と解すべきだと説くカッシーラーの主張(《実体概念と関数概念》1910)なども,〈機能(関数)主義〉とよばれてよい。 一方,個別科学の領域で機能主義的と見られるのは,心理学においてはW.ジェームズの流れをくむデューイやJ.R.エンジェルらの機能心理学,それを継承するJ.B.ワトソン,G.H.ミードらの行動主義心理学,民族学や人類学の領域ではデュルケームの影響下に立つB.K.マリノフスキー,ラドクリフ・ブラウンらの機能学派,経済学におけるベブレンの制度学派,法学ではR.パウンドの社会工学,G.D.H.コールらギルド社会主義者の機能的国家論などである。しかし,この場合も,たとえば心理学における機能主義が,意識をその内容にではなく作用に即して考察し,その生物学的意味を解明しようとするものであり,C.ダーウィンやH.スペンサーの進化論の強い影響下に発想されたものであるのに対して,人類学におけるそれは,むしろ歴史主義や進化主義への批判から出発し,社会や文化を孤立した要素の複合体と見る従来の考え方に反対して,現存の制度や慣習の機能を全体としての文化や社会との関連のうちで解明しようとするものである。…
…1873年心理学に関するその最初の論文《空間表象の心理学的起源》によってビュルツブルク大学教授となり,94年以降ベルリン大学教授。F.ブレンターノの作用心理学の影響をつよく受け,ドイツの機能心理学Funktionspsychologieの創始者とされる。彼は知覚という機能と知覚される内容とを区別し,心理学は精神の機能に関する研究を本分とすべきであり,内容に関する研究は現象学に属するとした。…
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