中国,唐初の書家,学者。字は信本。潭州臨湘(湖南省長沙)の人。はじめ隋に仕え,唐になって高祖・太宗に仕え,渤海男に封ぜられた。太子率更令になったことがあるので,欧陽率更とも呼ばれる。元来学者で,高祖の時,勅命をうけて《芸文類聚(げいもんるいじゆう)》100巻を撰した。その書は今に伝わり,高い評価をうけている。太宗時代,虞世南とともに選ばれて弘文館学士となっている。書は王羲之の伝統をうけ,さらにそれを新時代の精神で,清勁・峻抜,均斉美のある書風をつくりあげ,虞世南・褚遂良(ちよすいりよう)とともに初唐の三大家として不動の地位を保っている。現存の作品では,《皇甫誕碑》《化度寺僧邕禅師塔銘(けとじそうようぜんじとうめい)》《九成宮醴泉銘(きゆうせいきゆうれいせんめい)》《温彦博碑(おんげんぱくひ)》などがあり,楷書の模範とされる。その子欧陽通(おうようとう)(?-691。字は通師)は,行蘭台郎となったので欧陽蘭台と呼ばれ,父の詢に対して小欧陽といわれる。幼少にして父を失い,母の教導によって父の書を学んだ。則天女帝時代,宰相の列に加わったが,女帝の意にさからって獄死した。《道因法師碑》や《泉男生墓誌》によってその書風を知ることができる。
執筆者:外山 軍治
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中国、唐代を代表する書家。虞世南(ぐせいなん)、褚遂良(ちょすいりょう)とともに初唐の三大家と称される。潭州(たんしゅう)臨湘(りんしょう)(湖南省)の人。陳の広州刺史(しし)欧陽紇(おうようこつ)の子で、字(あざな)は信本(しんぽん)。幼時に父を失い、父の友人江総のもとで養育された。生来聡明(そうめい)で、経書や史籍に通じ、隋(ずい)の煬帝(ようだい)に仕えて太常(たいじょう)博士となった。唐が興り高祖が即位すると、給事中に抜擢(ばってき)され、624年(武徳7)、勅命により、裴矩(はいく)、陳叔達(ちんしゅくたつ)とともに『芸文類聚(げいもんるいじゅう)』100巻を撰進(せんしん)。ついで、太祖即位後は、弘文館(こうぶんかん)学士となり、太子率更令(そつこうれい)、渤海男(ぼっかいだん)を経て、光禄大夫(こうろくたいふ)に任ぜられる。貞観(じょうがん)15年に85歳で没。書は飛白(ひはく)や篆書(てんしょ)以下各体をよくしたといわれるが、今日にみる遺品のなかでは楷書(かいしょ)がもっとも優れ、なかでも『化度寺碑』と『九成宮醴泉銘(きゅうせいきゅうれいせんのめい)』とは古来「楷法(かいほう)の極則」とまで賞賛されてきた名品。ほかに『皇甫誕(こうほたん)碑』『温彦博(おんげんはく)碑』『史事帖』などの作品が残る。子の欧陽通(?―691)も能書家として知られるが、遣唐使らによって舶載された彼ら父子の書法は、わが国の飛鳥(あすか)から平安時代の書にも少なからぬ影響を与えている。
[松原 茂]
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557~641
隋末唐初の書家。潭州(たんしゅう)臨湘(りんしょう)(湖南省臨湘県)の人。王羲之(おうぎし)の書風を継いで,特に楷書をよくし,虞世南(ぐせいなん),褚遂良(ちょすいりょう)とともに初唐の三大家といわれる。また古典の内容を事項別に分類した『芸文類聚』(げいもんるいじゅう)を編した。
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…とくにその動きの中心となったのが,太宗李世民である。太宗は財力を尽くして王羲之の書の収集に努めるとともに,弘文館を設置し,王羲之の書風を伝える欧陽詢と虞世南を招いて,貴族の子弟に楷法を教授させた。また官吏を任用する際にも,〈楷法遒美(しゆうび)〉を審査の一基準とした。…
… 唐は隋に引き続き,行政や軍事といった国家の根幹にかかわる制度については,おもに北朝の伝統を受け継いだが,芸術や文学については,漢民族の伝統を守ってきた南朝の貴族文化を受け継ぐことが多かった。唐初の人物画の名手であった閻立本(えんりつぽん)は顧愷之(こがいし)の手法を発展させたし,初唐の三大書家といわれる虞世南,欧陽詢,褚遂良(ちよすいりよう)は王羲之の正統を伝えて楷書を完成させた。儒教においても,太宗が孔頴達(くようだつ)に命じて編集させた《五経正義》は,漢以来の古典解釈学を集大成したものであるが,多く南朝の学説が採用された。…
※「欧陽詢」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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