歌行(読み)カコウ(英語表記)gē xíng

デジタル大辞泉 「歌行」の意味・読み・例文・類語

か‐こう〔‐カウ〕【歌行】

楽府がふ一体。同じ題が南北朝以前の楽府になく、古体詩七言長編が多い。

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精選版 日本国語大辞典 「歌行」の意味・読み・例文・類語

か‐こう‥カウ【歌行】

  1. 〘 名詞 〙 中国の詩の一体。楽府題(がふだい)によく用いられた歌、行、吟、曲、引などを題名に使った作品で、六朝以前の古い楽府にはないものをさす。たとえば、「長恨歌」「兵車行」など。通常はその中でも、七言古詩詩体のものに限っていうことが多く七言歌行と呼ぶこともある。広い意味では楽府体の一種ともいえる。
    1. [初出の実例]「予少年のとき白雪魚の七言歌行を作る」(出典:随筆・孔雀楼筆記(1768)四)

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改訂新版 世界大百科事典 「歌行」の意味・わかりやすい解説

歌行 (かこう)
gē xíng

漢詩(中国の古典詩)の体(ジャンル)の一つ。〈--歌〉とか〈--行〉という題が多いので,この名がある。詩の分類にこの一類を立てる選集は宋初(987)に成った《文苑英華》がおそらく最も早い。以下それによってこの体の性格を考えよう。〈--歌〉〈--行〉などの題をもつ作品は〈楽府(がふ)〉体の詩にも多い。しかし《英華》は〈楽府〉と〈歌行〉をはっきり分け,〈楽府〉門には作品1082首(大部分は唐代詩人の作だが,少数の南朝詩人の作を含む)を20巻に分けて収め,〈歌行〉門には(同じく南朝と唐の詩人の作を含む)作品365首をやはり20巻に分けて収める。〈楽府〉門では漢代以来ながく伝承されていた楽曲の歌詞(実はその替歌),およびそれらを模倣した詩人の作品が集められ,〈歌行〉門ではそれらの曲の名(すなわち〈楽府題〉と呼ばれるもの)に似せて新しく考え出された題をもつ作品(すべて詩人の作)が集められている。それゆえ《英華》による限り,両者の違いは〈楽府〉門の詩が伝承された〈楽府題〉を用いるのに対し,〈歌行〉は前例のない新しい題をつけたことにある。白居易の作を例とすれば,《長恨歌》や《琵琶行》(《英華》では〈琵琶引〉と題する)などだけでなく,彼みずから〈新楽府〉と総称した〈七徳の舞〉以下の50首をも《英華》は〈歌行〉門に入れ,〈楽府〉門には入れなかった。李白の〈襄陽(じようよう)の歌〉のように両門に重出する作品があるが,ごくわずかである。詩の形式の上から見ると,〈楽府〉門に収められた作品は今体詩(律詩または絶句)が少なくないのに対し,〈歌行〉門の作品はほとんどすべて古体詩(古詩)である。この点において〈歌行〉の詩は古体詩の一種だと言うことができるが,上に述べたごとき〈楽府〉体の変種から発展した歴史を見のがすことはできない。この二つのことを〈歌行〉体の詩の特質とすべきである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「歌行」の意味・わかりやすい解説

歌行
かこう

中国古典詩の詩体名。もとは歌謡の楽府(がふ)作品の題に用いられ、「子夜歌(しやか)」「従軍行(じゅうぐんこう)」のようにいう。命名の由来については諸説があり、たとえば、情感の吐露に中心を置いたうたが「歌」、行書のごとく流麗な体をもつのが「行」とする説、あるいは、長短の句が入り交じるものを「歌」、歩行する調子をもち渋滞のないうたを「行」という説など、定義はかならずしも明確でなく、両者の厳密な区別はむずかしい。しばしば「歌行」とあわせて、楽府体の作品を総称することもある。楽府の題にはほかにも「吟(ぎん)」「辞(じ)」「引(いん)」などの名が用いられるが、それらとの区別もはっきりしない。唐以後、楽府が歌われなくなってからも、伝統的な楽府題を借りた作品が多くつくられ、また楽府の民間的色彩を模倣する詩も少なくなかったため、歌謡とは無関係の「歌行」詩がつくられるようになった。おもに七言古詩の詩体をもつ。たとえば、白居易(はくきょい)の『長恨歌(ちょうごんか)』『琵琶行(びわこう)』がその例である。

[佐藤 保]

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普及版 字通 「歌行」の読み・字形・画数・意味

【歌行】かこう(かう)

歌いもの。〔唐音癸籤、体凡〕歌曲の名なり。其の事を衍して之れを歌ふを行と曰ふ。歌は最も古し。行と歌行とは、皆に始まり、人之れに因る。

字通「歌」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「歌行」の意味・わかりやすい解説

歌行
かこう
Ge-xing

中国,古典詩の一形態。元来は楽府 (がふ) に基づくもので,その題名に歌もしくは行とつけられたものが多いところからこの名があるが,唐以降は,歌うメロディーとはかかわりなく,物語的な内容をもつ長編の,主として七言の古詩をさしていう。やはり題名に歌,行,吟などとつくことが多く,代表的なものが杜甫の『兵車行』,白居易の『長恨歌』『琵琶行』などである。

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