死斑
しはん
livor mortis
死後,血流の停止のために,死体内の血液が自重によって死体の下方に移行する (これを血液就下という) ために皮膚表面に生じる,紫赤色ないし紫青色の変色部をいう。普通は背部,殿部など地軸に近い方向に発現する。死後 30分ないし数時間内に現れ,15時間程度で最高となる。 15~20時間以内では圧迫すると消える。窒息死,中毒死の場合は鮮明で,一酸化炭素中毒,青酸中毒,凍死の場合は鮮紅色を呈することが多い。
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し‐はん【死斑/×屍斑】
死んだ人の皮膚に現れる、紫赤色あるいは紫青色の斑点。血液が自重で沈降するために生じ、下側となった部分に死後2、30分から現れ、6~10時間後には全面に及ぶ。その程度から死後経過時間や死因の推定が可能。
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死斑【しはん】
死体の皮膚に現れる淡紫〜暗紫色の斑点。死後に血圧の消失や血流の停止に伴い,血管内血液が自重により下方に沈下することによって生ずるもので,体位によって異なるが,背部や臀(でん)部に現れることが多い。初めは薄く斑点状であるが,やがて合して一様の着色となる。死後1〜2時間から生じ始め,普通10〜15時間で最高に達し,以後退色する。死斑は窒息死や中毒死では特に顕著で,一酸化炭素中毒,青酸中毒,凍死などでは鮮紅色を呈する。→死体硬直
→関連項目死体現象|青酸中毒|窒息
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しはん【死斑 livor mortis】
血液循環の停止により,血液が重力の作用で死体の下位になった部分に移動(この移動を血液就下という)して,非圧迫部の皮膚が血液の色によって斑状に着色することで,死体現象の一つである。死斑は死後30分くらいから発現し,2~3時間で著しくなり,半日で完成する。色調は一般に帯紫赤色であるが,これは血管と皮膚を通して見た血液の色で,還元ヘモグロビンと酸素ヘモグロビンの混合した色である。一酸化炭素中毒死体では一酸化炭素ヘモグロビンによって鮮紅色を呈するが,寒冷な場所に置かれた死体の死斑も酸素ヘモグロビンによって同様の鮮紅色を呈する。
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死斑
しはん
血液を放置すると血球は自己の重量によって沈降するが、死体内では血管内を移動し下位の部分に就下(しゅうか)してくる。この血液の色が皮膚を通して観察できる場合、これを死斑という。興奮時に顔面が紅潮するのと似ているが、死斑はかならず下位の部分に現れるので、たとえばうつぶせ死体の背中側に死斑があれば、これだけで、だれかが死体位を転換したものと推測できる。ただし、死斑が下位に現れるといっても、強く圧迫される部分には生じない。死斑は死後20~30分くらいで斑紋状に現れ、徐々に広く・強くなり、10~14時間くらいで最強になるが、この推移は死因等によく相応した変化を示す。たとえば、急死体の血液は流動性であるため、早く・強く発現し、失血死では弱いか、発現しない。死斑は、通常、暗赤色~暗紫赤色(酸素が消費された還元ヘモグロビンの色)を呈するが、急性一酸化炭素中毒では死斑は鮮紅色となり、死因の推定上有用である。また、死斑には死後経過時間の推定に有用な法則性もある。すなわち、死後5時間くらいまでは、死体位を転換すると死斑は新たな下位部分へ完全に転移するが、約12時間以上ではほとんど転移しなくなる(これは指圧等で簡単に検することもできる)。その理由として、血漿(けっしょう)成分の血管外漏出による血液濃縮説や、溶血したヘモグロビンによる周囲組織への浸潤説等が示されている。[古川理孝]
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世界大百科事典内の死斑の言及
【死体現象】より
…これは早期,晩期,異常死体現象に分けられる。
[早期死体現象]
死後1日以内に現れるもので,瞳孔の対光反射の消失および散瞳,眼圧の低下,上位の皮膚の蒼白化と下位になった部位への死斑の出現,筋肉の弛緩後に現れる死体硬直rigor mortis,皮膚や口唇粘膜などの乾燥,角膜の混濁,死体の冷却がある。死亡時に散大した瞳孔は,死後1~2時間で直径5mmくらいになる。…
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死斑の関連キーワード
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