化学式Al(OH)3。3種の結晶形が知られている。(1)ギブス石gibbsite α-Al(OH)3。また水バン土とも呼ばれる。ボーキサイトの主成分である。実験室では,アルミン酸ナトリウムNaAlO2水溶液に二酸化炭素CO2を通じてつくる。
2[Al(OH)4]⁻+CO2─→2Al(OH)3+H2O+CO32⁻
80℃でアルミン酸ナトリウム溶液から再結晶できる。比重2.43,酸に溶けにくく,100℃で数時間加熱しても脱水反応が進行しない。(2)バイヤー石beyerite β-Al(OH)3。天然には産出しない。20℃においてアルミン酸ナトリウム溶液に二酸化炭素を通じ,速やかに生成させるとバイヤー石が得られる。ゆっくりと沈殿させると前記のギブス石となる。比重2.50。(3)ノルドストランド石nordstrandite アルミニウム塩溶液にアンモニア水を加えるとゲル状水酸化物を生ずる。これをエチレンジアミン,エチレングリコール,EDTAなどの存在で熟成させると生ずる。天然にはほとんど産出しない。以上3種の結晶では,いずれも水酸化物イオンの六方最密充てん内にアルミニウムが入り,アルミニウムには6個の酸素原子が八面体六配位型に配位している点が類似しているが,ギブス石は六方晶系,バイヤー石は三方晶系,ノルドストランド石はその中間の結晶構造をもっている。
執筆者:水町 邦彦
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アルミニウムの水酸化物。化学式Al(OH)3、式量78.0。α(アルファ)型、γ(ガンマ)型のいずれも単斜晶系の結晶。天然にはギブス石(γ型)、バイエル石(α型)として産出するほか、酸化水酸化物AlO(OH)がダイアスポア、ベーム石として産出する。アルミン酸ナトリウム水溶液に二酸化炭素を吹き込む方法や、アルミニウム塩水溶液のアンモニアまたは水酸化アルカリによる中和などで得られる(α型)。α型の比重2.49、γ型は2.40。通常は水溶液から沈殿させるとコロイド状の水和物が得られる。水にはほとんど不溶。アセトンに不溶。メチルアミンに溶ける。両性水酸化物で強酸、水酸化アルカリ溶液に溶けるが、放置しておくとしだいに溶けにくくなる。加熱すると脱水がおこり、いろいろな中間相を経て最後にはα-アルミナとなる。アルミナの製造原料となるほか、化学薬品(硫酸アルミニウム、フッ化アルミニウム、合成ゼオライト)の原料、窯業材料、ゴム、プラスチックの填料(てんりょう)、紙用充填剤など、水酸化アルミニウムで耐火性、難燃性、白色度などを向上させるのに用いられる。また、媒染剤、制酸剤、繊維の防水にも使われる。
[守永健一・中原勝儼]
Al(OH)3(78.00).天然にはギブス石Al(OH)3,ダイアスボアAlO(OH)またはAl2O3・H2Oとして産出する.アルミン酸塩水溶液に二酸化炭素を通じるとAl(OH)3の白色の結晶が得られる.密度2.42 g cm-3.水に難溶.両性水酸化物で,鉱酸にもアルカリにも溶解する.エタノールに不溶.300 ℃ で脱水して酸化アルミニウムを生じる.水和したゲルは吸着力が強い.ガスや液体の精製,クロマトグラフィーの吸着剤,乳化剤,媒染剤,製紙,繊維の防水,セラミックガラス,難燃剤,耐火物の製造,医薬品(制酸剤,収れん剤)などに用いられる.[CAS 21645-51-2:Al(OH)3][CAS 14457-84-2:AlO(OH)]
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