大阪府南東部、和歌山県に接する市。1954年(昭和29)長野町と高向(たこう)、加賀田(かがた)、三日市(みっかいち)、天見(あまみ)、川上の5村が合併して市制施行。市域の東部を金剛(こんごう)山地、南部を和泉(いずみ)山脈に囲まれ、北部に羽曳野(はびきの)丘陵が延び、この間を石川、西条川、天野(あまの)川が流れて河岸段丘を形成する。中心の長野は古来交通の要地で、中世には高野(こうや)信仰の往還路として、京都から河内の国へ入り、交野(かたの)、古市(ふるいち)、長野を経て紀見峠を越えて高野山へ至る東高野街道(国道170号)と堺(さかい)と長野を結ぶ西高野街道(国道310号)との会合点であった。現在も南海電気鉄道高野線と近畿日本鉄道長野線が会合する。開発は古く、大師山古墳は前期古墳の代表として知られる。中世、高野山真言密教にまつわる天野山金剛寺(別称、女人高野(にょにんこうや))や観心寺などの寺院が建立され、南北朝時代には南朝の拠点となり、多くの史跡を残す。産業には、山間部でのスギ、ヒノキの用材、シイタケの栽培があり、山麓(さんろく)ではミカン、段丘上ではナシやナス、キュウリなどの抑制野菜の近郊農業が行われる。工業には地場(じば)産業としての可鍛鋳鉄やベアリング、鋼管など中小規模工業がある。ほかに竹簾(たけすだれ)、高向の爪楊枝(つまようじ)は全国に販路をもつ。金剛寺境内、観心寺境内は国史跡に指定され、観心寺金堂と本尊の如意輪観音坐像(にょいりんかんのんざぞう)は国宝。小深(こぶか)の山本家住宅は江戸初期の庄屋(しょうや)で国指定重要文化財。景勝地に金剛生駒紀泉国定公園(こんごういこまきせんこくていこうえん)域の岩湧山(いわわきやま)、滝畑四十八滝や、サクラの名所の長野公園、紅葉で知られる延命寺などがある。面積109.63平方キロメートル、人口10万1692(2020)。
[位野木壽一]
『『河内長野市史』全12冊(1972~2006・河内長野市)』
大阪府の南東端に位置する市。1954年長野町と三日市,高向(たこう),加賀田,天見,川上の5村が合体,市制。人口11万2490(2010)。南の和泉山脈を隔てて和歌山県と接する。市街は大和川の支流石川の河岸段丘上にあり,市域の大部分は山林である。空海が高野山を開いて後,京都からの東高野街道と堺からの西高野街道がここで合する交通の要地となった。高野山への道筋にあることから,真言宗の寺院が建てられ,南北朝時代には金剛寺,観心寺などが南朝方の拠点の一つとなった。近世には庶民化した高野詣の宿駅として三日市に宿場町が成立した。丘陵部にはミカン,ナシなどが栽培され,山地部はかつて薪炭,高野豆腐の産地として有名であった。明治半ばに農家の副業として始まった高向のつまようじは全国生産の約90%を占め,特産地として知られる。近年は木材,家具工業のほか金属,機械部品工業も盛んになってきた。1960年ころから宅地造成が進み,南海高野線沿線を中心に市街地が拡大している。
執筆者:秋山 道雄
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