封禅(読み)ホウゼン(英語表記)fēng shàn

デジタル大辞泉 「封禅」の意味・読み・例文・類語

ほう‐ぜん【封禅】

中国古代に天子の行った天と地の祭り。山上に土壇をつくって天を祭り、山の下で地をはらい清めて山川を祭った。

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精選版 日本国語大辞典 「封禅」の意味・読み・例文・類語

ほう‐ぜん【封禅】

  1. 〘 名詞 〙 中国古代に天子が泰山で行なった祭礼で、山上に土壇をつくって天をまつることと、山の下で地を祓い清めて山川をまつること。天下太平を天に報ずる儀式だったが、のちには、あまり太平でないのに行なうことが多くなった。
    1. [初出の実例]「つよく謙譲めさるるほどに、終に封禅をはめされぬぞ」(出典:史記抄(1477)八)
    2. [その他の文献]〔管子‐封禅〕

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改訂新版 世界大百科事典 「封禅」の意味・わかりやすい解説

封禅 (ほうぜん)
fēng shàn

中国の帝王がその政治上の成功を天地に報告するため,山東省の泰山で行った国家的祭典。〈封〉と〈禅〉は元来別個の由来をもつまつりであったと思われるが,山頂での天のまつりを封,山麓での地のまつりを禅とよび,両者をセットとして封禅の祭典が成立した。《史記》封禅書には,春秋斉の管仲のことばとして,有史以来,封禅を行った帝王は72人,そのうち管仲の記憶するところは12人であること,天命を受けたうえで封禅は行われること,封禅を行うためには祥瑞(しようずい)の出現が必要であること,が述べられているけれども,後世における仮託の説であろう。経書のなかにも封禅の根拠をもとめることはできない。封禅説の成立は戦国末以後のことであって,それには方士が深くかかわっていたものと考えられる。史実として確認できる最初の封禅は秦の始皇帝28年(前219)に行われたそれであり,つづく漢の武帝の元封1年(前110)に行われたそれによって詳細が明らかとなるが,注目されるのは,政治上の成功の報告にも増して不死登仙の観念が封禅にともなっていることである。たとえば,方士の李少君は漢の武帝に次のように述べている。〈鬼神を駆使して丹砂黄金に変え,その黄金で食器を作れば命がのび,命がのびれば東海中の蓬萊山仙人にあうことができる。そのうえで封禅を行えば不死となる〉。泰山は古くから鬼神の集まるところと考えられ,そこを天への通路とみなす信仰も存在した。鬼神と交わる術をもっぱらあやつった方士たちは,泰山のこのような宗教的な性格,ならびに《書経》舜典篇などで,泰山が帝王の巡狩の地として政治的に重要視されている事実に注目し,泰山において政治上の成功の報告を行うとともに不死登仙を求めるところの封禅の説をつくりあげたものと考えられる。その後,後漢の光武帝,唐の高宗や玄宗,宋の真宗たちも莫大な国費を投じて封禅を行った。
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普及版 字通 「封禅」の読み・字形・画数・意味

【封禅】ほうぜん

天子が天地を祭る礼。〔管子、封禅〕古は泰山に封じ梁に禪する七十二家、而して夷吾(管仲)の記す二。~王、泰山に封じ首に禪す。皆命を受けて、然る後に封禪することを得たり。

字通「封」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「封禅」の意味・わかりやすい解説

封禅
ほうぜん
Feng-shan

中国古代に帝王が行なった報天祭儀。封は天を祀る儀式で,泰山の上に土壇をしつらえて行い,禅は地神を祀るもので,ふもとの地でなされた。秦の始皇帝 28 (前 219) 年泰山において始皇帝が封禅したのが始りとされ,漢の武帝,後漢の光武帝,魏の明帝,唐の玄宗,宋の真宗ら多くの帝王によって盛大に営まれている。封禅の意義は,初めは山神,地神に不老長寿や国運の長久を祈願するところにあったが,膨大な国費を投じて行われる国家的祭儀であったため,のちには次第に帝王の威武を誇示する政治的な祭儀へと形を変えていった。

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旺文社世界史事典 三訂版 「封禅」の解説

封禅
ほうぜん

中国の祭祀 (さいし) の1つ
天命を受けた皇帝が山東省泰山 (たいざん) の頂に天を祭り(封),麓の小丘梁父で地を祭って(禅),王朝国家の成立と永続を祝福する。『史記』にその起源を伝えるが,確実には秦の始皇帝が最初。前漢の武帝,後漢の光武帝,唐の玄宗などが実施した。

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世界大百科事典(旧版)内の封禅の言及

【壇】より

…歴代の皇帝は,天命を受けて政をしく天子として,上帝をまつってその功徳に報ずる儀式を行うのがつねであった。その祭祀には,とくに霊山聖域を選んで行う封禅(ほうぜん)と,主として都城の郊外で行われる郊祀とがあった。封禅は,山上に土を盛り壇を築いて天をまつる封拝と,山下に土を平らにし塼(ぜん)(また壇,禅)をつくって地をまつる禅祭とを併称する。…

※「封禅」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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