洗い(読み)アライ

デジタル大辞泉 「洗い」の意味・読み・例文・類語

あらい〔あらひ〕【洗い】

洗うこと。洗濯。「洗いのきく布地」「灰汁あく洗い
(「洗膾」「洗魚」とも書く)新鮮なコイコチスズキなどを薄く刺身に作り、冷水で洗って身を縮ませた料理 夏》中食ふなの―をよきものに/白水郎
[類語]刺し身叩き生け作りお作り

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「洗い」の意味・わかりやすい解説

洗い
あらい

刺身の一種。一般には夏の料理であるが、コイを用いるものなどは四季を通じてつくられている。タイ、スズキ、コチ、ボラ、コイ、フナなどの魚を使い、原則として生きているものを材料にしてつくる。まず、三枚におろし、皮を引き、肉を薄切りにしてから手早く冷水で洗うと、身がしまってちりちりっと縮む。これを氷片の上にのせて供する。つまには青ジソか穂ジソなどを添える。また、わさびじょうゆを用いるのが一般的であるが、コイ、フナなどの淡水魚には、酢みそ、からし酢みそを用いるのがよい。普通のしょうゆを用いる場合、ショウガを使うと、生臭いにおいが除かれる。アユの洗いは背越(せごし)という名称のほうが一般的であるが、これはアユの内臓を抜き、背骨と直角に包丁を薄く入れて輪切りにしたものをいう。洗いは、手早く調理することと、水洗いの水が冷たいことを条件とする。

多田鉄之助

 洗いにより魚肉収縮がおこるのは、氷水など冷水で洗うことで筋肉中に含まれるATPアデノシン三リン酸)が分解され、さらにアクトミオシンが生成されて、魚筋肉に収縮がおこるためである。つまり人工的に硬直をおこしたものである。したがって、死後硬直をおこす前の新鮮で収縮力の強い筋肉をもつ魚肉を用い、12℃以下の冷水を使用することが条件である。なお洗いには、湯洗いといって、70~80℃の湯に通したのち冷水で急冷する方法もあり、癖の強いコイなどに行われることもある。

[河野友美・大滝 緑]

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改訂新版 世界大百科事典 「洗い」の意味・わかりやすい解説

洗い (あらい)

刺身の一種。活(い)けしめにした魚を薄いそぎ身などにつくり,ざるに入れて氷を浮かべた冷水の中で振洗いし,身をちぢませた料理。スズキ,クロダイ,イシダイ,メジナ,ボラ,カレイ,コイなど,ちょっと癖のある魚に適する。氷を入れた鉢などに盛り,カラシじょうゆ,カラシ酢みそ,梅じょうゆなどを添える。
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百科事典マイペディア 「洗い」の意味・わかりやすい解説

洗い【あらい】

刺身の一種。新鮮な魚肉をそぎ切りまたは糸切りにして,冷水で振り洗いすると,身が堅く縮み,脂肪が除かれるので,さっぱりとした夏向きの料理となる。タイ,スズキ,コイ,フナなど白身の魚や川魚が適し,ワサビ醤油や酢みそを添える。
→関連項目刺身

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世界大百科事典(旧版)内の洗いの言及

【刺身】より

…前者を湯びき,皮霜作り,後者を焼霜作りと呼ぶ。洗いは,コイやスズキをそぎ作りにして,冷水で洗って身を収縮させるもので,水作りと呼ばれていた。また,原則的に身のしまったものは薄く切り,やわらかいものは厚く切るが,カレイなどを盛った皿の文様が透けて見えるほどの薄切りにした場合,フグになぞらえてフグ作りと呼んでいる。…

※「洗い」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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