叩き(読み)タタキ

デジタル大辞泉 「叩き」の意味・読み・例文・類語

たたき【×叩き/×敲き】

打つこと。また、その人。「太鼓―」
(「三和土」とも書く)叩き土石灰や水をまぜて練ったものを塗り、たたき固めて仕上げた土間。のちにはコンクリートで固めた土間。「玄関の―」
カツオをおろして表面を火であぶり、そのまま、あるいは手や包丁の腹でたたいて身を締めてから刺し身状に切ったもの。薬味や調味料を添える。土佐作り
たたきなます」の略。
生の魚肉・獣肉などを包丁の刃でたたいて細かくした料理。「アジの―」
石の表面をたたいてならし細かいつちのあとを残す仕上げ方。石工いしくの語。
俗に、強盗のこと。「―に入る」
徹底的に批判すること。また、厳しく仕込んだり、攻撃したりすること。「外資―」「新弟子―」
江戸時代の刑罰の一。罪人の肩・背・尻をむちで打つもの。重敲き(100打)と軽敲き(50打)があった。
10 江戸時代、正月や祭礼などに手拍子をとり、早口に文句を唱えながら門付けをした芸人。たたきのよじろう。よじろう。
11 義太夫節の曲節の一。9の唱えごとの節を取り入れたもの。
12 落語講釈で、前座を務める者。
[類語](5刺し身洗い生け作りお作り

はたき【×叩き】

はたくこと。
室内や器物のほこりを払う道具。細長い布切れ・羽毛などを束ねて柄につけたもの。「叩きをかける」
はたき込み」の略。
失敗。しくじり。
「今までの―を取り返し、此度はしっかり極まりであらう」〈黄・本の能見世物〉

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精選版 日本国語大辞典 「叩き」の意味・読み・例文・類語

たたき【叩・敲】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「たたく(叩)」の連用形の名詞化 )
  2. ( 敲 ) 江戸時代の刑罰の一種。罪人の肩、背、尻を鞭で打つもの。軽・重の二種があり、江戸では牢屋同心が小伝馬町の牢屋の門前で執行した。八代将軍吉宗の時代から行なわれた。
    1. 敲<b>①</b>〈刑罪詳説〉
      〈刑罪詳説〉
    2. [初出の実例]「一、敲 数五十敲、重きは百敲」(出典:徳川禁令考‐別巻・棠蔭秘鑑・亨・一〇三・享保五年(1720))
  3. 料理で、魚・鳥肉を包丁で細かく叩くこと。また、その料理。〔新撰類聚往来(1492‐1521頃)〕
    1. [初出の実例]「これもよい・叩きで喰はす秋鰹」(出典:雑俳・若とくさ(1790))
  4. 「たたきの与次郎」のこと。また、そのうたう歌。
    1. [初出の実例]「吉原太夫浮世たたき〈略〉吉原太夫紋尽しのたたき」(出典:歌謡・淋敷座之慰(1676)目録)
  5. の拍子をとり入れた、浄瑠璃ふし
    1. [初出の実例]「しげる竹切て、タタキ(かき)上のする笹の葉は、亡(なき)魂おくる輿車」(出典:浄瑠璃・平仮名盛衰記(1739)三)
  6. ( 腰をたたいて出すところからという ) 腰にさげて携帯するもの。印籠(いんろう)など。腰さげ。
    1. [初出の実例]「腰成るたたきより膏薬を透頂香種取出し」(出典:虎寛本狂言・膏薬煉(室町末‐近世初))
  7. 石の面を突いて細かい突きあとをつけたものをいう、石工仲間の語。
  8. 漆塗りで、細かいしわを寄せたものをいう、漆工仲間の語。
  9. ( 「たたきつち(叩土)」の略。「三和土」とも書く ) 赤土、石灰、砂利などににがりをまぜ、水でねってたたき固めること。また、そうして作った土間。現代ではセメントで固めた所もいう。
    1. [初出の実例]「路地 たたき 路地也」(出典:松屋会記‐久好茶会記・慶長元年(1596)三月八日)
  10. なめし革扇子の形に作ったもの。落語家や講釈師などが、たたいて拍子を取るのに用いる。
  11. 落語や講釈で、前座に出る未熟な者をいう。
  12. たたきだいく(叩大工)」の略。
  13. 強盗をいう、盗人仲間の隠語。〔隠語輯覧(1915)〕
    1. [初出の実例]「『たたきらしい。〆(しめ)た』政戸は、小声でかう言った。強盗がつかまったのだ」(出典:浅草(1931)〈サトウハチロー〉留置場の幽霊)

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和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典 「叩き」の解説

たたき【叩き】

①料理で、包丁の刃で魚や肉をたたくこと。また、その料理。あじのたたきなど。
②かつおや牛肉などの表面を焼き、刺身のように切って二杯酢・ポン酢しょうゆなどのたれをかけ、味をなじませて薬味とともに食べる料理。◇包丁の腹などでたたくようにして味をなじませることからこの名があるともいわれるが、定かでない。かつおのたたきは「土佐作り」ともいう。

出典 講談社和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典について 情報

防府市歴史用語集 「叩き」の解説

叩き

 荒物[あらもの]は延べ作りといい、まず壷[つぼ]の底を作り、ひも状にした粘土で作り上げていきます。各層が密着しにくいため、生乾きの時に壷の内面に板をあて、外面から板で叩き固めます。このため、荒物を作ることを叩きといいます。 

出典 ほうふWeb歴史館防府市歴史用語集について 情報

世界大百科事典(旧版)内の叩きの言及

【たたき(三和土)】より

…江戸時代に三河(三州たたきといわれる)や西日本で,住宅の土間や軒下の舗装として使用され,一般化した。モルタル(砂にセメントと水を加えて練った硬化材)の普及とともに用いられなくなったが,モルタル金鏝(かなごて)仕上げの床を〈叩き(たたき)〉と呼ぶこともある。【鈴木 充】。…

※「叩き」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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