流行性耳下腺炎(読み)りゅうこうせいじかせんえん(英語表記)mumps

  • (子どもの病気)
  • (感染症)
  • Epidemic parotitis (Mumps)
  • epidemic parotitis
  • りゅうこうせいじかせんえん リウカウ‥
  • りゅうこうせいじかせんえん〔リウカウセイ〕
  • ムンプス
  • ムンプス、おたふくかぜ
  • 流行性耳下腺炎 epidemic parotitis

翻訳|mumps

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

俗におたふくかぜともいう。ムンプスウイルスによる伝染病。4~14歳頃に感染しやすく,一度罹患すれば終生免疫となる。の運動,加圧などで疼痛を感じることがあり,食欲不振,頭痛,吐き気,四肢痛および発熱があり,耳下腺腫脹が現れ,口腔内の下腺開口部が赤みを増す。一般に予後はよいが,13歳以上の場合には合併症として男子の睾丸炎が2~3週目に現れることもあり,女子では乳腺,卵巣の障害を起すこともある。その他無精子症,腎臓炎,髄膜炎,多発性神経炎,膵臓炎などがある。ときには,片方または両方の高度で回復不能の難聴 () を起すこともある。

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デジタル大辞泉の解説

ムンプスウイルスの感染による伝染性耳下腺炎症。幼児期から学童期に多く、学校感染症の一。感染症予防法の5類感染症の一。2、3週間の潜伏期ののち高熱が出て、片側あるいは両側の耳の下の部分がはれて痛む。成人が発病した場合は睾丸炎(こうがんえん)・卵巣炎を起こすこともある。おたふくかぜ。ムンプス。→ムンプス難聴

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栄養・生化学辞典の解説

 マンプスともいい,俗におたふくかぜともいう.パラミキソウイルスの感染によって起こる耳下腺など唾液腺腫脹をともなう炎症.ときに精巣などにも炎症を起こす.耳下腺が大きく腫れ丸い顔の状態になることから,おたふくかぜと呼ばれる.

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世界大百科事典 第2版の解説

ムンプスウイルスによる感染症。ムンプスmumpsともいい,また耳下腺がはれて特有の顔つきとなることから,俗に〈おたふく風邪〉ともいう。このウイルスはパラミクソウイルス属に属し,径85~300nm,ヒトからヒトへの飛沫感染によって伝染する。発症は大部分が5歳以下の小児で,冬から早春にかけて流行することが多い。潜伏期間は2~3週間。全身倦怠,発熱をもって発症し,唾液腺が腫張して痛む。とりわけ耳下腺に著しく,多くの場合両側とも腫張するが,片側のこともある。

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大辞林 第三版の解説

ムンプスウイルスの感染による耳下腺炎。二~三週間の潜伏期ののち、発熱とともに耳下腺がはれて痛む。睾丸炎・卵巣炎を併発することがある。治癒後は終生免疫が得られる。おたふくかぜ。ムンプス。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ムンプスmumpusともいい、ムンプスウイルスの感染によっておこる急性伝染病で、高熱を出して耳下腺が腫(は)れ、お多福(おかめ)のような特有の顔つきになるところから、俗に「おたふくかぜ」とよばれる。幼稚園から学童期の小児がかかりやすく、学校感染症の第2種に含まれている。感染症予防・医療法(感染症法)では、5類感染症の定点把握疾患に指定されている。都市部では1年を通じてみられるが、一般には冬から早春にかけて多発する。
 潜伏期は2、3週間で、初めは熱がすこし出て頭痛がしたりするが、そのうち耳下腺部(耳たぶの下方)が片側だけ、あるいは両側が腫れてくる。片側の場合でも2、3日すると反対側も腫れてくることが多い。このころには熱が40℃前後になることもあり、腫れた部分は弾力があり、押したり口を動かすと痛むが、その部分に熱をもったり、見たところ色が変わったりすることはない。
 特効薬はなく、安静にして腫れた部分に冷湿布を当て、柔らかい食事を与え、うがいをたびたび行って口中を清潔にしておけば、1週間くらいで熱や腫れが引いて治癒する。まれにウイルスが頭部に移行して脳炎や髄膜炎をおこすと、頭痛、嘔吐(おうと)、意識混濁、けいれんなどの症状を呈する。また、成人が罹患(りかん)した場合には精巣炎や卵巣炎をおこすことがあり、両側の精巣が侵されると男性不妊症の原因となることがある。予防としては、発熱の初期から解熱後1週間までは飛沫(ひまつ)感染の危険があり、耳下腺の腫れが完全に消失するまでは幼稚園や学校を休ませる。また、個人的な予防には弱毒生(なま)おたふくかぜワクチンが有効である。なお、一度かかれば終生免疫が得られる。[柳下徳雄]

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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 学童期に多く、秋から春にかけて流行する伝染性の耳下腺の炎症。疼痛、発熱を示す。耳の下の部分がはれるため、おたふくかぜとも呼ばれる。

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六訂版 家庭医学大全科の解説

どんな病気か

 唾液をつくる耳下腺(耳の前~下)、顎下腺(がくかせん)(あごの下)がはれて痛む発熱性の病気です。

原因は何か

 ムンプスウイルスが原因です。飛沫(ひまつ)感染し、潜伏期間は2~3週間です。

症状の現れ方

 突然の発熱、両側あるいは片側の耳下腺のはれと痛みで始まります。2~3日以内に対側の腫脹(しゅちょう)がみられ、顎下腺にも広がることがあります。ひとつの唾液腺のはれは3~5日で引くことが多く、7~10日で治ります。

 一度下がった熱が再発し、腹痛、頭痛、あるいは精巣(せいそう)のはれを起こした場合には、無菌性髄膜炎(ずいまくえん)膵炎(すいえん)精巣炎(せいそうえん)などの合併症が起きた可能性があります。聴覚障害の合併は1万人に1人程度とされていましたが、最近の研究では1000人に1人という報告があります。

検査と診断

 症状から、診断は容易です。耳下腺炎(じかせんえん)であるか否かは尿中アミラーゼの測定で診断できますが、ムンプスの診断にはウイルスの検出か抗体検査が必要です。

 片側の場合には診断は困難で、ワクチン接種後の発病、化膿性(かのうせい)唾液腺炎、唾液腺の結石(けっせき)、反復性唾液腺炎などとの区別が必要になります。

治療の方法

 有効な治療薬はありません。ワクチン接種による予防が第一です。発熱や痛みに対してはアセトアミノフェンの内服・坐薬が使われますが、感染症では解熱薬は使用しないほうが免疫系のはたらきも良いようです。

 頭痛、嘔吐などが強い無菌性髄膜炎を合併した場合には、腰椎穿刺(せんし)(背骨のなかに針を刺す)で脳脊髄液を排液して脳圧を下げます。膵炎の場合にはその程度に合わせて抗菌薬、酵素阻害薬を使います。年長児、成人では精巣炎の合併頻度が高いのですが、片側性の場合は不妊の原因になることはまれです。

 難聴を合併した場合には、治療法がなく、聴力の回復はほとんど期待できません。通常は精巣炎と同様に片側性です。

病気に気づいたらどうする

 痛みが軽くがまんできるようであれば、家庭で安静にしているのがよいでしょう。痛みが強い、あるいは頭痛、嘔吐を伴うようでしたら小児科を受診してください。強い腹痛、嘔吐(おうと)を伴う場合には重症膵炎の場合があるので、ただちに入院施設のある病院の小児科を受診してください。

 ムンプスワクチンは麻疹(ましん)風疹(ふうしん)のような定期接種には入っていませんが、90%以上の陽転率で、予防効果も優れています。

脇口 宏

どんな感染症か

 片側あるいは両側の耳下腺の腫脹(しゅちょう)(はれ)を特徴とする急性ウイルス感染症で、通称「おたふくかぜ」と呼ばれています。ムンプスウイルスによって起こり、通常は1週間~10日で回復する予後良好な病気ですが、日本では200万人以上の患者さんが毎年発生しています。

 患者さんからの飛沫(ひまつ)、患者さんとの接触を介して感染します。患者さんの年齢は4歳が最も多く、3~6歳で約60%を占めています。おたふくかぜワクチンを接種していると、90%以上の人が発症を免れることができます。

症状の現れ方

 2~3週間の潜伏期ののち、片側あるいは両側の耳下腺を中心として、顎下腺(がくかせん)舌下腺(ぜっかせん)の腫脹が起こります。圧痛や嚥下痛(えんげつう)を伴うことが多く、通常発熱を伴います。感染しても症状が現れない場合が30~35%あるといわれています。

 合併症としては、症状が明らかであった患者さんの約10%が無菌性髄膜炎(むきんせいずいまくえん)を併発します。また、思春期以降の男性では約20~30%に精巣炎(せいそうえん)を、女性では約7%で卵巣炎(らんそうえん)を起こすといわれています。

 重要な合併症のひとつとして難聴があり、最近の研究で、頻度は約1000人に1人といわれています。永続的な障害となるので注意が必要です。その他、膵炎(すいえん)や脳炎を合併することもあります。

検査と診断

 特徴的な臨床症状、まわりの流行状況などで診断されることがほとんどですが、耳下腺炎を起こすのはムンプスウイルスだけではないため、流行性耳下腺炎(ムンプスウイルス感染症)であることを証明するにはウイルス学的な診断が必要です。

 唾液(だえき)、尿、髄液(ずいえき)からウイルスを分離することが最も直接的ですが、症状が出てから早い時期に検体を採取することが必要である、結果が出るまでに時間を要する、健康保険の適用ではないなどの理由で、一般的には血清学的診断が多く用いられています。

 急性期にムンプス特異的IgM抗体を検出するか、ペア血清でのIgG抗体価の上昇にて診断されます。また最近では、RT­PCR法でウイルス遺伝子(RNA)を検出することが可能になっています。

治療の方法

 基本的に対症療法であり、合併症を併発した場合は入院して治療することが多くなります。集団生活に入る前にワクチンで予防しておくことが、現在とりうる最も有効な感染予防法です。

病気に気づいたらどうする

 流行性耳下腺炎は、学校保健安全法では第二種の感染症に属しており、耳下腺のはれが消えるまで登校・登園停止となります。発症が疑われた場合は、かかりつけの小児科(成人の場合は内科)を受診してください。

多屋 馨子

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

知恵蔵の解説

おたふくかぜ」のページをご覧ください。

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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