おたふくかぜとして知られる。九州大大学院医学研究院などの研究チームによると、国内では小児を中心に、毎年数十万~100万人以上の患者が出ている。耳の近くの腫れや発熱が主な症状だが、髄膜炎や精巣炎、卵巣炎、難聴といった合併症を引き起こすことがある。感染力が強く、学校保健安全法では出席停止の対象となる。
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出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報
ムンプスmumpusともいい、ムンプスウイルスの感染によっておこる急性伝染病で、高熱を出して耳下腺が腫(は)れ、お多福(おかめ)のような特有の顔つきになるところから、俗に「おたふくかぜ」とよばれる。幼稚園から学童期の小児がかかりやすく、学校感染症の第2種に含まれている。感染症予防・医療法(感染症法)では、5類感染症の定点把握疾患に指定されている。都市部では1年を通じてみられるが、一般には冬から早春にかけて多発する。
潜伏期は2、3週間で、初めは熱がすこし出て頭痛がしたりするが、そのうち耳下腺部(耳たぶの下方)が片側だけ、あるいは両側が腫れてくる。片側の場合でも2、3日すると反対側も腫れてくることが多い。このころには熱が40℃前後になることもあり、腫れた部分は弾力があり、押したり口を動かすと痛むが、その部分に熱をもったり、見たところ色が変わったりすることはない。
特効薬はなく、安静にして腫れた部分に冷湿布を当て、柔らかい食事を与え、うがいをたびたび行って口中を清潔にしておけば、1週間くらいで熱や腫れが引いて治癒する。まれにウイルスが頭部に移行して脳炎や髄膜炎をおこすと、頭痛、嘔吐(おうと)、意識混濁、けいれんなどの症状を呈する。また、成人が罹患(りかん)した場合には精巣炎や卵巣炎をおこすことがあり、両側の精巣が侵されると男性不妊症の原因となることがある。予防としては、発熱の初期から解熱後1週間までは飛沫(ひまつ)感染の危険があり、耳下腺の腫れが完全に消失するまでは幼稚園や学校を休ませる。また、個人的な予防には弱毒生(なま)おたふくかぜワクチンが有効である。なお、一度かかれば終生免疫が得られる。
[柳下徳雄]
ムンプスウイルスによる感染症。ムンプスmumpsともいい,また耳下腺がはれて特有の顔つきとなることから,俗に〈おたふく風邪〉ともいう。このウイルスはパラミクソウイルス属に属し,径85~300nm,ヒトからヒトへの飛沫感染によって伝染する。発症は大部分が5歳以下の小児で,冬から早春にかけて流行することが多い。潜伏期間は2~3週間。全身倦怠,発熱をもって発症し,唾液腺が腫張して痛む。とりわけ耳下腺に著しく,多くの場合両側とも腫張するが,片側のこともある。症状はふつう1週間内外で消失するが,ときに髄膜炎,膵炎,関節炎,睾丸炎,卵巣炎を合併することがある。これらの合併症も一定の期間を経てほぼ完全に治癒するが,思春期以後の男子が罹患し睾丸炎を合併すると,不妊となることがある。治療は安静のうえ,痛みや発熱などに対して対症療法を行う。一過性の病気で,予後は良好であり,ほとんどが完全に治癒する。また一度罹患すると終生免疫が得られる。
執筆者:佐藤 祥之
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