涙嚢炎(読み)るいのうえん

百科事典マイペディア 「涙嚢炎」の意味・わかりやすい解説

涙嚢炎【るいのうえん】

涙嚢涙器)の急性または慢性炎症。多くみられるのは慢性涙嚢炎で,鼻涙管が閉塞(へいそく)し涙嚢に涙液がたまっているとき,肺炎球菌ブドウ球菌連鎖球菌などの感染により化膿を起こすもの。流涙が激しく,涙嚢部を圧迫すると膿が出る。治療はペニシリン液などによる涙嚢洗浄,また鼻涙管にレジン管(ブジー)などを挿入して閉塞をなおす。急性涙嚢炎は慢性涙嚢炎の経過中に涙嚢周囲に蜂巣(ほうそう)織炎を起こすもの。発赤,腫脹(しゅちょう),疼痛(とうつう)が激しい。治療は冷湿布サルファ剤,抗生物質などによる。
→関連項目トラコーマ

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「涙嚢炎」の意味・わかりやすい解説

涙嚢炎
るいのうえん

涙は眼瞼(がんけん)内縁にある涙点を通り、涙嚢にたまり、鼻涙管を経て鼻腔(びくう)に排出される。涙嚢の炎症である涙嚢炎の大部分は、この鼻涙管の閉塞(へいそく)によって涙が涙嚢に貯留し、細菌が侵入繁殖しておこる。通常、慢性型であるが、急性悪化すると充血浮腫(ふしゅ)、痛みが激しくなる。慢性型では涙嚢部を圧迫すると、涙点から膿(のう)が逆流してくる。原因菌は肺炎菌が多いが、ほかの菌によるものもある。抗生物質の投与、ブジー挿入のほか、涙嚢鼻腔吻合(ふんごう)術、涙嚢摘出術が行われる。涙嚢閉塞には人工チューブの挿入も行われる。

 新生児にみられるものは鼻涙管の鼻腔開口部の先天性閉塞によるもので、ブジー挿入で完治する。新生児で涙や眼脂(目やに)が多いものはほとんどこれである。鼻根部のマッサージで治癒することもある。

[岩田和雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「涙嚢炎」の意味・わかりやすい解説

涙嚢炎
るいのうえん
dacryocystitis

涙嚢の炎症。レンサ球菌,ブドウ球菌などの感染によるもので,急性と慢性がある。慢性の場合は,流涙が唯一の症状ということが多く,涙嚢部を圧迫することによって,粘液または膿汁が涙点から排出される。急性の場合は,涙嚢部の皮膚に発赤,腫脹がみられ,疼痛もある。新生児にみられる難治性の結膜炎は,先天性鼻涙管閉鎖に基づく新生児慢性涙嚢炎によることが多く,涙嚢部指圧または涙管ブジーで開通すれば,容易に治癒する。

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