渡殿(読み)ワタドノ

デジタル大辞泉 「渡殿」の意味・読み・例文・類語

わた‐どの【渡殿】

寝殿造り二つ建物をつなぐ屋根付きの廊下。渡り殿。細殿

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精選版 日本国語大辞典 「渡殿」の意味・読み・例文・類語

わた‐どの【渡殿】

  1. 〘 名詞 〙 二つの建物をつなぐ屋根のある板敷きの廊下。渡り廊下。この廊に部屋を設けたりもする。細殿(ほそどの)。わたりどの。
    1. [初出の実例]「この殿は〈略〉廊、わた殿、さるべきあてあての板屋どもなど、有るべきかぎりにて」(出典:宇津保物語(970‐999頃)俊蔭)

わたり‐どの【渡殿】

  1. 〘 名詞 〙わたどの(渡殿)
    1. [初出の実例]「釣殿・渡(ワタリ)殿・泉殿、棟梁高造り双て、奇麗の壮観を逞くせり」(出典太平記(14C後)二六)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「渡殿」の意味・わかりやすい解説

渡殿
わたどの

寝殿造(しんでんづくり)で寝殿対屋(たいのや)をつなぐ渡り廊下。渡廊(わたろう)、細殿(ほそどの)または単に廊ともいう。両側とも壁がなく、柱だけで吹き放ちのものを透(すい)渡殿という。透渡殿では高欄を両側につけるが、下に遣水(やりみず)が流れるものでは床(ゆか)を反橋(そりばし)のように反り上げてつくられる。一般に渡殿は梁間(はりま)1間であるが、梁間2間のものを二棟廊(ふたむねろう)という。天井の1間ごとに垂木(たるき)がかけられ、あたかも2棟を並べたような形になるのでこの名がある。二棟廊の場合は片側蔀戸(しとみど)が吊(つ)られ、廊下としての性格のほか、細殿として部屋にも用いられる。

[工藤圭章]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「渡殿」の解説

渡殿
わたどの

寝殿造で,寝殿と対(たい)の間など,建物と建物の間をつなぐように建てられた建物。本来は,建物をいくつかつないで区画を形成する廻廊の一種であったが,のちに簀子(すのこ)縁を設け,ここを渡り廊下のようにして使うようになった。また,蔀(しとみ)や遣戸(やりど)で囲われた内部は,家族や女房居所にも利用された。建具のない吹放ちになった渡殿は透(すき)渡殿という。

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百科事典マイペディア 「渡殿」の意味・わかりやすい解説

渡殿【わたどの】

寝殿造で,寝殿と対屋(たいのや)をつなぐ渡廊下。寝殿の南側東西の廊は建具のない吹放ちのもので,特に透(すき)渡殿と呼ばれる。

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世界大百科事典(旧版)内の渡殿の言及

【住居】より

…(a)主人の居所である寝殿,家族の居所である対屋(たいのや)や庭園観賞のための釣殿(つりどの),泉殿(いずみどの),内向の施設である蔵人所(くろうどどころ),侍所(さむらいどころ),随身所(ずいじんどころ),車宿(くるまやどり),台盤所(だいはんどころ)など,独立した建築群から成り立っている。(b)それぞれの建物は廊または渡殿(わたどの)でつながれる。住宅の周囲には築垣(ついじ)を設けて外部と遮断し,出入口として四脚門または棟門を設ける()。…

【寝殿造】より

…完成形または典型をどのようにとらえるかは異論もあるが,現在までは次のような説が有力である。まず敷地は方一町(約120m四方)で,主屋である寝殿を中心に,東および西,場合によっては北,北西,北東などに副屋である対(たい)(対屋(たいのや))を置き,これを廊(渡殿(わたどの))で結ぶ。東西対からは南に細長い中門廊が延び,その南端には釣殿を建てる。…

※「渡殿」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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