「温泉を保護し、温泉の採取等に伴い発生する可燃性天然ガスによる災害を防止し、及び温泉の利用の適正」を図ることを目的として、1948年(昭和23)7月に制定された法律(昭和23年法律第125号)。同年8月施行。本法では、「温泉」を、25℃以上の温度または法に定める物質を有する「地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス」と定義している。
「温泉の保護」という視点から、温泉を湧出(ゆうしゅつ)させるために土地を掘削する場合、湧出路を増掘する場合、湧出量を増加させるために動力を設置する場合には、都道府県知事の許可が必要とされる。「温泉の利用」について、温泉を公共の浴用・飲用に供しようとする場合も、都道府県知事等による許可が必要とされるほか、温泉成分等の表示についても義務づけている。
2004年(平成16)夏に、日本各地の温泉で、着色剤の使用や水道水を沸かしたお湯の使用などが判明したこともあり、2005年2月に本法施行規則が改正され、従来の温泉成分に関する表示義務に加え、加水、加温、循環装置の利用、入浴剤の利用など浴槽内の温泉の状況についても表示を義務付けたほか、10年以内ごとの温泉成分分析も義務付けた。
さらに、2007年6月に東京都渋谷区の温泉施設で発生した爆発事故を受けて、同年に法律が改正され、「温泉の採取等に伴い発生する可燃性天然ガスによる災害を防止」することが目的に加えられたほか、温泉源からの温泉の採取に対しても許可制度が導入された。
[田中 謙]
重要な天然資源である温泉の活用のしかたは,国民の保健・休養やレジャーのあり方に大きな影響を与えるが,他方で温泉の利用に伴う利害関係にはきわめて複雑な面がある。こうした温泉の重要性にかんがみ,温泉の保護とその利用の適正を図ることを目的として制定されたのが本法(1948公布)である。本法によれば,温泉をゆう出させる目的で土地を掘さくする場合および温泉を公共の浴用または飲用に供する場合には,知事の許可を受けなければならず,知事は,公衆衛生その他公益上の見地から一定の場合には許可を与えず,または許可を取り消すことができる。また,以上のほか,知事には,公益上必要な措置の命令,施設等の改善命令,温泉利用施設への立入検査など重要な権限が与えられている。なお,本法の運用を民主的なものとするために,知事の諮問機関として都道府県自然環境保全審議会が置かれ,上記の許可や許可の取消しなどにあたって同審議会への諮問が義務づけられている。
→温泉権
執筆者:晴山 一穂
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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