湯灌(読み)ユカン

デジタル大辞泉 「湯灌」の意味・読み・例文・類語

ゆ‐かん〔‐クワン〕【湯×灌】

[名](スル)仏葬で、死体を棺に納める前に湯水でぬぐい清めること。湯洗い
[補説]使用する湯は逆さ水(水に熱湯を注いで適温にしたもの)を用いる。現在ではアルコールでふき清めたり、洗髪や顔周辺を洗うことで湯灌の代わりとすることもある。

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精選版 日本国語大辞典 「湯灌」の意味・読み・例文・類語

ゆ‐かん‥クヮン【湯灌】

  1. 〘 名詞 〙 仏葬で、死体を棺に納める前に、湯で洗い浄めること。湯洗い。
    1. [初出の実例]「どこで死んでも浅ましい、子共の水も受まひ、ゆくん・葬礼誰がせうぞ」(出典浄瑠璃・鑓の権三重帷子(1717)下)

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改訂新版 世界大百科事典 「湯灌」の意味・わかりやすい解説

湯灌 (ゆかん)

入棺にあたり死者身体を湯で洗うこと。近親者の主として男が行う。深更にわら縄のたすきをかけ,死者をたらいに入れて左杓で湯をかけて行う。死体をおこすとき声をかけてするところが多い。湯灌のあと近親者などが死者の頭や顔をそる。湯は床下などの日のあたらない所に捨てる。身体を洗い頭をそるので,湯灌は出家作法を意味している。平安時代末期にも行われ,湯殿事とか沐浴とか書かれている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「湯灌」の意味・わかりやすい解説

湯灌
ゆかん

死者の納棺に先だって遺体を洗うこと。以前は近親者が裸で、あるいは縄帯(なわおび)・縄襷(なわだすき)姿で、たらいの湯で洗った。その湯は逆(さか)さ水といって、水の中に湯を注ぐ。湯灌の水をくむときは、逆さ柄杓(ひしゃく)といって川下に向かって柄杓ですくう。使った湯は縁の下など日の当たらないところに捨てる。いまは簡略になって、ぬれ手拭(てぬぐい)でちょっと体をふいたり、アルコールでぬぐう。遺体を清潔にするためと、仏教の灌頂(かんじょう)儀礼混同であるが、人の一生の通過儀礼のうち、次の段階への移行儀礼の一つである。

[井之口章次]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「湯灌」の意味・わかりやすい解説

湯灌
ゆかん

納棺に先立って死体を洗い清めること。本来死者を裸にして,たらいの湯で全身を洗うのをたてまえとし,近親者が縄帯縄襷 (たすき) 姿で洗った。使用した湯は日に当てないよう,床下などに捨てる。近来は簡略化され,アルコールや濡れ手拭などで顔と手足をふくだけになった。

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