源氏物語絵の略で、『源氏物語』に取材した絵。絵巻や画帖(がじょう)で詞(ことば)と絵によって物語の流れを追ったものから、屏風(びょうぶ)に一場面を大きく描いたものまで種々の形式がある。11世紀初めに原典がつくられ、まもなく絵画化が始められたと推定され、以後、大和絵(やまとえ)、とくに物語絵のもっとも中心的題材として近世に至るまで広く取り上げられている。最古の遺品は平安末期(12世紀前半)の『源氏物語絵巻』で、濃麗な画面と流麗な詞書(ことばがき)により王朝美術の粋を伝える。鎌倉時代のものでは「浮舟」の巻の白描(はくびょう)挿絵(徳川美術館、大和文華館)と、彩色絵巻(天理図書館、メトロポリタン美術館)が伝存する。室町時代には享受層の拡大とともに制作も増大し、とくに小形の白描絵巻が流行。また物語の各帖から特定の場面を選び絵画化の指示をし、詞書を抄録した『源氏物語絵詞』なる書物も編纂(へんさん)された。
桃山時代には土佐派が源氏絵をお家芸とし、ことに光吉(みつよし)は精緻(せいち)、華麗な色紙絵を得意とした。また光則(みつのり)はさらに緻密このうえない筆技で白描の小品画を盛んに描き残している。一方、源氏絵を屏風などに拡大する傾向も活発化し、54帖から各1図を1双に描き収めたものや、数場面を集めたもの、そして1隻に1図のみを大きく描いた屏風絵も登場する。狩野山楽(かのうさんらく)筆『車争(くるまあらそい)図屏風』(東京国立博物館、旧九条家襖絵(ふすまえ))、俵屋宗達筆『関屋(せきや)・澪標(みおつくし)図屏風』(静嘉堂(せいかどう))などは、大画面の源氏絵のなかでもとくに有名である。また、しだいに様式化した源氏絵の図柄は、蒔絵(まきえ)や染織など各種工芸品の意匠の主題としても幅広く応用されている。
[村重 寧]
『秋山光和編『日本の美術119 源氏絵』(1976・至文堂)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…平安時代の代表的絵巻物の一つ。《源氏物語》の絵画化,すなわち源氏絵は,物語成立後まもなくはじめられ,中世・近世を通じて愛好された。そのなかで現存する最古の作品が徳川黎明会(尾張徳川家伝来)と五島美術館(阿波蜂須賀家伝来)に分蔵されている《源氏物語絵巻》である。…
※「源氏絵」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
働き手が自分の働きたい時間に合わせて短時間・単発の仕事に就くこと。「スポットワーク」とも呼ばれる。単発の仕事を請け負う働き方「ギグワーク」のうち、雇用契約を結んで働く形態を指す場合が多い。働き手と企...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新