源氏香(読み)ゲンジコウ

デジタル大辞泉 「源氏香」の意味・読み・例文・類語

げんじ‐こう〔‐カウ〕【源氏香】

組香の一。5種の香をそれぞれ5包ずつ計25包作り、任意に5包を取り出してたき、香の異同をかぎ分け、5本の縦線横線を組み合わせた図で示すもの。図は52種あり、源氏物語54帖のうち桐壺夢浮橋を除く各帖の名が付けられている。後水尾ごみずのお天皇時代に考案されたという。

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精選版 日本国語大辞典 「源氏香」の意味・読み・例文・類語

げんじ‐こう‥カウ【源氏香】

  1. 〘 名詞 〙 香道の組香の一つ五種の香を五包ずつ作り、香元がそれら二五包から任意に五包とって炷(た)き、連衆が聞き分けて、その異同を五包の香に対応した五本線の源氏香の図で表わす。志野流内十組香、御家流中古十組香の一つ。
    1. [初出の実例]「有一昨日之源氏香之勝負銚子事也」(出典:後法興院記‐明応一〇年(1501)二月七日)

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改訂新版 世界大百科事典 「源氏香」の意味・わかりやすい解説

源氏香 (げんじこう)

組香の一種。香木5種,それぞれ5炷(ちゆう)ずつ計25包を用意し,このうち5包だけ炷(た)く。5炷同香から全部異香まで52種類の組合せの可能性がある。答は5本の縦線が右から初炉,左端が5炉目を意味し,その聞(きき)(香を聞いた結果)は同香を横線で連結する図形で表示される。52の図形ができるが,香人はこの数から源氏物語54帖を連想し,各図形を初巻の〈桐壺〉と終巻の〈夢浮橋〉を除いて源氏各巻に宛てたものを源氏香之図と呼んでいる。たとえば は5種のうち3種の香が炷かれ,初炉と三炉,二炉と四炉が同香の場合で〈花散里〉の巻の図柄と定められているのである。源氏香と同じことを香4種で行えば縦棒4本で似たような図柄ができる。この組香を系図香と呼ぶのはその図柄が家系図に似ているからである。源氏香之図や系図香之図を香之図と呼ぶことがあるが,大阪高津新地の裏長屋路地が香之図に似ていたため香之図裡と俗称されたことは,江戸時代の民衆にとって香之図が身近なものとなっていたことを物語っている。なお,源氏香之図は流儀による差異はなく,美麗な折帖が作製されている。また源氏香之図は香文様と呼ばれ,棚物茶箱,棗(なつめ)などの茶器のほか着物の文様としても多く用いられている。
組香
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