組香(読み)クミコウ

デジタル大辞泉 「組香」の意味・読み・例文・類語

くみ‐こう〔‐カウ〕【組香】

数種の香をたき、その香の名を言い当てること。また、その香。

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精選版 日本国語大辞典 「組香」の意味・読み・例文・類語

くみ‐こう‥カウ【組香】

  1. 〘 名詞 〙 香道で、種々の香木を定められた方法で(た)いて、その香りを聞き、香の異同を言い当てる、寄り合いの会の様式。〔香道千代の秋(1733)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「組香」の意味・わかりやすい解説

組香 (くみこう)

複数の香木を和歌や物語の主題によって組み,香を聞き当てる遊戯をいう。主題には和歌を用いることが多く,証歌という。素材が香木の薫りであるから,それにふさわしい主題は限定され,またあまり複雑な表現は困難である。

 組香の原型は15世紀,室町時代に始まる十炷(じつちゆう)香,十種香である。このころ催された香会(こうかい)はほとんどが十種香で,ときには名香合や炷継香(たきつぎこう)も行われた。室町時代の十炷香については確認できないが,少なくとも桃山時代には現在と同様式であったと思われる。香は4種で内3種が3炷ずつ,1種が1炷で計10炷で,その10炷の出の順を聞き当てるのである。いっぽう3炷ずつの3種にそれぞれ試し聞きを付けたものが十種香である。十種茶と同様式である。香を組んで聞き当てる点では組香であるが,文学的主題はない。16世紀蜂谷宗悟の《香道軌範》には連理香,花月香がみられるが,多彩な組香の出現は江戸時代に入ってからである。細川幽斎作と伝えられる《香之記序》には十炷香,花月香,宇治山香,小鳥香,郭公(ほととぎす)香,小草(おぐさ)香,系図香,十種香焼合(たきあわせ),源平香,鳥合(とりあわせ)香の御家流古十組が記載されており,慶長(1596-1615)ころには成立していたとみられる。当時,組香はもっぱら禁裡を中心に行われたが,米川常伯が出て香道を一変し,地下(じげ)のあいだにも組香が広まった。寛永正保(1624-48)のころにはすでに約200種の組香が行われたという。18世紀に入ると蜂谷家は志野流家元制度を整備し,それに伴って組香も整理され,また各流派幕末まで組香の収集を中心とする多くの伝書を作成した。いずれの流派でも〈みだりに組香すべからず〉とされ,古典的組香を十分に鑑賞し,その技法を極め香木の本質に迫りえたうえで,はじめて新組香の創作が許された。今日,確認できるだけのものでも,約50種の伝書に約2000組香が記載されているが,重複が多く,実質的には約500種ほどである。 香道の稽古は基本的な組香を繰り返し習熟することから始まる。御家流では古十組,中十組,新十組,志野流でも内十組から三十組,四十組,五十組に,それから外組にすすむ。初心者用の組香には盤物(ばんもの)が多く,80種ほどある。組香ごとに定められた立物(たてもの)(建物)が進路の描かれた盤上に並べられ,聞香の成績によって進退し勝負経過が示されるものである。連衆が2組に分かれる場合と個人の勝負とがある。組香の実例を示せば,〈白河香〉(《香道組香大成》)は能因法師の〈都をば霞と共に出でしかど秋風ぞ吹く白河の関〉を証歌とする。歌の趣を〈都の霞〉〈秋風〉〈白河関〉各1炷ずつ計3炷に組む。本香を炷く前に〈都の霞〉と〈秋風〉は親しみやすいので試しの香がたかれ,〈白河関〉ははるかに遠く未知の地であるところから試しはない。そしてこれら3種を聞き当てれば無事関所を越えたことになる。この3種にどの香木を使うかは,その日の香席を考えて決める。これを香組という。全部聞き当てれば3点で皆(かい)という。あとは1点か0点であるが点数は香の雰囲気にそぐわないので出によって〈下付(したづけ)〉という成績表示の雅語を定める。皆は〈関越ゆる〉,無中(むちゆう)(全部外れること)のときは〈関止(せきどめ)〉,〈都の霞〉のみ中(ちゆう)(当たること)なら〈春風ぞ吹く〉,〈秋風〉のみ中は〈紅葉散る〉,〈白河関〉のみ中は〈旅衣〉と評定するのである。香会の次第は〈記録〉にまとめられる。組香名,香組,連衆名とその出(解答),その中と不中の表示および点数もしくは下付,年月日,香席の場所,出香者,香元,執筆の名を奉書紙に記録し,最高点者に授与する。同点の場合は上席の者が授与される。
香道 →香道具
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「組香」の意味・わかりやすい解説

組香
くみこう

室町時代より始まった香名をあてる鼻識の競技。古い作法の十炷香(じっちゅうこう)は、火元の香本は、3種の香名を参加者に順次聞かせ、次に四種十封などとよばれる複雑な組合せをする。まだ試していない香を「客」とし、初客、二客、三客とする。組香の種類には競馬香、源氏香など200~300種あった。聞香は、三条西実隆(さねたか)の御家(おいえ)流を祖とし、志野流、建部(たけべ)流、米川(よねかわ)流など流派が分かれ、組香も各家に伝わる外組の香があったが、多くは江戸末期に廃れた。なお、平安時代よりある薫物合(たきものあわせ)の名香合(めいこうあわせ)は、香質の良悪を競うもので、組香とは異なる。

[猪熊兼勝]

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世界大百科事典(旧版)内の組香の言及

【香道】より

…さらに連衆が前の人のたいた香を基に連歌式要領でたき継いで鑑賞する〈炷継香(たきつぎこう)〉では宗祇などの連歌の考え方が基盤にあるとみてよいであろう。こうして香合や炷継香は組香を中心とする香道の成立を準備したのである。
[香道の成立と沿革]
 香道の成立については享保(1716‐36)ころの大枝流芳(おおえだりゆうほう)(岩田漱芳)以来南北朝の婆娑羅(ばさら)大名佐々木道誉を始祖とする説があるが(《読史備要》),道誉は香木に執心した収集者ではあっても,その香は闘香であり香道ではない。…

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