漢中(読み)かんちゅう

精選版 日本国語大辞典 「漢中」の意味・読み・例文・類語

かん‐ちゅう【漢中】

中国の秦嶺山脈大巴山脈に囲まれた盆地状の地域。北は揚水盆地、南は四川盆地に通じ、漢水が貫流して東南揚子江に通じる。漢の全国支配の拠点となり、三国時代には魏、蜀の争奪の地となった。漢。

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デジタル大辞泉 「漢中」の意味・読み・例文・類語

かんちゅう【漢中】

中国陝西せんせい省南西部の商業都市。漢水上流にある。古来戦略・交通上の要衝で、漢の拠点であった。ハンチョン

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「漢中」の意味・わかりやすい解説

漢中
かんちゅう / ハンチョン

中国、陝西(せんせい)省南西部の地級市。1市轄区、10県を管轄する(2016年時点)。人口341万6196(2010)。漢中盆地の中央にある。北を秦嶺(しんれい)山脈でくぎられ、この地域は自然のうえでは南方に属するが、北方の渭河(いが)平原、陝西と南方の四川(しせん)、湖北(こほく)を結ぶルートにあるため、戦略上きわめて重要な地域で、歴史的には南方に帰属する時代と北方に帰属する時代が交互し、独特の地域性を形成した。春秋時代には蜀(しょく)に属したが、戦国時代には秦(しん)と蜀に分属し、ついには全部が秦に帰した。秦代に南鄭(なんてい)県と漢中郡を設け要害の地とした。秦末には劉邦(りゅうほう)がこの地を本拠地として漢王朝を創設し、三国時代にはこの地をめぐって蜀と魏(ぎ)が争ったのは有名である。その後も多くの歴史的事件の舞台となった。1949年南鄭市を設けたが、1953年漢中市に改名し、南鄭県は別に市の南に設けた。1964年県に戻されたが、1980年ふたたび市となった。

 高温多湿な気候により沖積平野では水稲が栽培されるほか、アブラナ、果物などの農産物に恵まれる。南北両地域からの物資集散地として商業が発達し、とくに四川地方から移住してくる人口も多かった。航空機製造やウラン濃縮、冶金などの工業が同市の経済を支えている。市内には漢代にゆかりのある遺跡が多く、劉邦が漢王になったときの宮廷の遺跡といわれる古漢台などがある。

[秋山元秀・編集部 2017年7月19日]

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改訂新版 世界大百科事典 「漢中」の意味・わかりやすい解説

漢中 (かんちゅう)
Hàn zhōng

中国,陜西省南西部,漢水上流の漢中盆地の中心都市。人口50万(2000)。現在は陝西省に属するが,宋以前は南の巴蜀と結びつけて考えられていた。四川・陝西間の要地であり,漢水を下って長江(揚子江)とも通じるので,古来この地をめぐって争いがくり返された。漢楚の際,劉邦は漢中王に封じられ,三国時代,劉備の所有に帰した。秦代に郡,明・清代に府が置かれた。
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百科事典マイペディア 「漢中」の意味・わかりやすい解説

漢中【かんちゅう】

中国,陝西省南西部の都市。漢水の上流左岸に沿い,漢中盆地の中心地。付近は水田が開け,米,薬材,生糸,漆器等を産する。漢水による水運と,四川省へ通じる道路交通の要衝をなす。漢の劉邦はこの地を根拠に天下一統を達成した。56万人(2014)。

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旺文社世界史事典 三訂版 「漢中」の解説

漢中
かんちゅう
Hànzhōng

中国陝西 (せんせい) 省南部,漢水上流にある都市
交通の要地で,古来,争奪の的となった。また,劉邦は漢中王に封ぜられた。

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世界大百科事典(旧版)内の漢中の言及

【漢水】より

…樊城は漢の建安年間(196‐219)に関羽が漢水の急流を利用して立てこもる于禁を撃破した古戦場として有名である。また上流部は秦の漢中郡で,劉邦は秦を滅ぼした後,漢中王としてこの地に封じられた。古来,南北抗争の地で,三国時代蜀の劉備と魏の曹操がこの地を争ったことは有名。…

【南鄭】より

…中国,陝西省南西部,漢中地区の県。人口52万(1994)。…

※「漢中」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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