潘基文(読み)パンギムン

デジタル大辞泉 「潘基文」の意味・読み・例文・類語

パン‐ギムン【潘基文】

[1944~ ]韓国外交官政治家。1970年外交部に入部、対米・対日外交のさまざまな局面において調整役を果たす。2007年より2016年まで国連の第8代事務総長を務めた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「潘基文」の意味・わかりやすい解説

潘基文
ばんきぶん / バンキムン
(1944― )

韓国(大韓民国)の政治家、第8代国際連合(国連)事務総長。忠清北道(ちゅうせいほくどう/チュンチョンブクド)忠州(ちゅうしゅう/チュンジュ)市に生まれる。ソウル大学で国際関係学を学び、1970年に卒業、同年外務省(現外交通商省)に入省した。1985年にはハーバード大学ケネディ行政大学院で修士号を取得している。外務省において、国連課長、駐米公使、外交政策室長を歴任、金泳三(きんえいさん/キムヨンサム)大統領のもとで外交安保首席秘書官に就いた。その後も駐オーストリア大使、外交通商次官、駐国連代表部大使を歴任、2004年には盧武鉉(ノムヒョン)大統領政権の外交通商相に就任、2006年まで2年間務めた。2007年アナンの後を受けて国連事務総長に就任した。

 潘は一貫して韓国の外交に従事してきたため国連との関係は深い。2001年韓国が国連議長国となったときには、総会議長秘書室長として活躍した。潘の事務総長就任はアジアにとって、ビルマ(現ミャンマー)のウ・タント以来35年ぶりのことになる。就任直前に北朝鮮朝鮮民主主義人民共和国)による地下核実験という衝撃的な出来事が発生したが、就任後は、スーダン人権侵害として非難を集めたダルフール問題、気候変動による地球環境問題国連改革など、多くの困難な問題に取り組んでいる。

[編集部]

『辛雄鎭著、足立康・辛美鎭訳編『努力の証――第八代国連事務総長 潘基文物語』(2008・ダイヤモンド社)』

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知恵蔵 「潘基文」の解説

潘基文

国際連合の第8代事務総長。コフィ・アナン(ガーナ)の後任として2007年に就任。5年の任期を終え、12年から2期目(~16年末)に入っている。韓国出身で、アジアではウ・タント(ビルマ)に次いで2人目の国連事務総長である。
1944年、忠清北道生まれ。ソ連軍がハンガリーの民衆蜂起を鎮圧したハンガリー動乱(56年)で政治に目覚めたといわれる。62年、VISTA留学生として訪米。ケネディ大統領から将来の夢を問われ、得意の英語で「外交官です」と答えたという逸話が残る。名門ソウル大学外交学部に進学し、70年、卒業と同時に外交官試験に合格。将来を嘱望されていたが、外交通商部(外務省)での最初の海外赴任地には、同期の多くがアメリカを目指す中、自らの希望でインドを選んだ。その後、駐米公使、オーストリア大使、国連総会議長秘書室長などを歴任した後、2004年、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権下で外交通商部長官(外務大臣)に任命された。
長官在任中の06年10月、国連事務総長戦に出馬。中東危機、ダルフール紛争、北朝鮮・イランの核開発問題などで国連の存在感が問われる中、卓越した実務・調整能力と穏健な米国重視の姿勢で多くの国の支持を取り付け当選、07年1月に就任した。第1期目は、イラク復興支援やダルフール紛争の解決、地球温暖化防止に当たり、精力的に現場に足を運んだが、十分な成果を上げることができず、また日本が期待していた安保理の拡大を含む国連改革にも着手できないまま任期を終えた。しかし、当初その欠如が指摘されていたリーダーシップについては、政情混乱に揺れるコートジボワールへのPKO派遣、化学兵器使用疑惑が浮上したシリアへの国連調査団派遣などで、少しずつ評価の声も高まっている。

(大迫秀樹  フリー編集者 / 2013年)

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百科事典マイペディア 「潘基文」の意味・わかりやすい解説

潘基文【ばんきぶん】

韓国の政治家。忠清北道忠州市生れ。ソウル大学外交学科卒業後,外務省(外交通商省の前身)入省,アメリカ駐在公使,オーストリア駐在大使,金大中政権外交通商省次官,盧武鉉大統領外交補佐官,外交通商相を歴任。2006年10月の安全保障理事会で,アナン国連事務総長の任期満了に伴う次期事務総長に推薦することが全会一致で決定され,国連総会で第8代国連事務総長に任命,2007年1月に就任した。任期は5年。同国出身の国連事務総長は初めて。

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