継承すべき親族や縁故者などがいない墓。法律上の名称は無縁墳墓。無縁仏ともいう。地方の過疎化や少子化などの影響のため、家系がとぎれたり、子孫が地域を離れて継承する意思がなかったりするなどして、墓が無縁化し、荒れ墓所が増えたり、墓地管理料の滞納が増加するなどの要因になっている。行政や宗教法人の側からは、墓の継承者となるべき縁故者などを調査して継承指導や改葬依頼をしたり、管理料の徴収を行ったりしているが、調査はむずかしく、無縁墓の増加に追いついていないのが現状である。無縁墓にならないように、墓じまいする人や、子孫の負担にならないように合葬や散骨、樹木葬などを選ぶ人も増加している。
無縁墓の改葬に関する法制度としては、古くは1924年(大正13)に設けられた「納骨堂取締規則」がある。今日では、「墓地、埋葬等に関する法律施行規則」(昭和23年厚生省令24号)が1999年(平成11)に一部改正(厚生省令29号)され、無縁墓等となった墓や納骨堂について、共同墓地や無縁塚に改葬する手続が簡素化されている。これにより、現在は墓地使用権が永代であるという概念は、実態に即したものとはいえない状態になっている。無縁墓の整理にあたっては、法律に基づく1年間の立札設置や官報公告などを行ったのち、妥当な継承者がいなければ、土地の使用許可などを取り消して墓を撤去し、遺骨を改葬する。破棄された墓石は、処分場などで細かく砕かれ、道路工事用などとして再利用されることになっている。
[編集部 2016年7月19日]
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