デジタル大辞泉
「無足」の意味・読み・例文・類語
む‐そく【無足】
[名・形動ナリ]
1 中・近世、主君に奉公しながら、領地を与えられないこと。また、その人や、そのさま。
「―なる人一人も候はで」〈甲陽軍鑑・一三〉
2 むだになること。むだであること。また、そのさま。
「―ナ辛労ヲ致イタ」〈日葡〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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む‐そく【無足】
- 〘 名詞 〙
- ① 足がないこと。
- [初出の実例]「聾・騃・無足(ムソク)(〈注〉アシナヘ)にして、蜿転腹行し、もろもろの小虫のためにすいはまれん」(出典:妙一本仮名書き法華経(鎌倉中)二)
- ② ( 形動 ) 中世・近世、家臣で知行領地を持たないこと。また、奉公や職務に対する反対給付のないこと。また、そのさまやその人。転じて、所領・財産がなく貧しいことにもいう。
- [初出の実例]「治
養和以後新恩之地、毎人於過五百町者、召放其余剰、可賜無足近仕
之由」(出典:吾妻鏡‐正治二年(1200)一二月二八日)
- ③ 収入がないこと。
- [初出の実例]「所二経入一之公用無足之間、其後聊雖レ令レ猶二予之一、漸々致二其沙汰一」(出典:押小路文書‐弘安三年(1280)正月二六日・六波羅下知状)
- ④ ( ━する ) 中世、所領からの収益がないこと。自然災害や他人の押妨などによって年貢が納入されなくなること。
- [初出の実例]「もしこのちにおきて、いらんさまたけもいてきたりして、かいぬしむそくせられ候はは」(出典:東寺百合文書‐の・一至一七・暦応三年(1340)一〇月二二日・ほうち田地売券)
- ⑤ ( 形動 ) ( ━する ) 無にすること。むだにすること。また、そのさま。
- [初出の実例]「ヲン ミ ノ スグレタル ノゾミ ヲ musocu(ムソク) ni(ニ) ナス モ ホイ ナケレバ」(出典:サントスの御作業の内抜書(1591)一)
- ⑥ 足りないこと。不足。
- [初出の実例]「偏両僧かち力之無足に候歟」(出典:上杉家文書‐元亀三年(1572)八月二四日・上杉謙信(輝虎)書状)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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無足
むそく
中世・近世において、主君に奉公しながら御恩(ごおん)としての領地を与えられていないこと、知行地(ちぎょうち)をもたないこと、またその人をいう。足とは料足(りょうそく)すなわち報酬の意味である。(1)無足の奉公は封建制の原則に反するので、鎌倉幕府は大身の御家人(ごけにん)の新恩の地を無足の近士に分けさせ、また父母が嫡子の所領の一部を無足の庶子に分け与えるよう定めており、戦国大名大内氏も無足・不足の家臣に隠地(おんち)・闕所(けっしょ)を与えるように計らった。(2)戦国時代以降、米・金の俸禄(ほうろく)のみを受ける下級の家臣を無足人とよぶようになり、身分の呼び名となる。江戸時代、知行取の給人(きゅうにん)の下、足軽(あしがる)・卒(そつ)の上に位置する軽輩の士分をさした。(3)江戸時代の諸藩にみられる農民身分の一種で、本来の意味から転化した呼び名。藤堂(とうどう)藩(津藩)、土佐藩、宇和島(うわじま)藩などでは士分に準ずる上層の農民を無足人といったが、唐津(からつ)藩などでは、高持(たかもち)の本百姓(ほんびゃくしょう)に対して、耕地をもたない下層農民を無足人とよんだ。
[小川 信]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
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無足
むそく
知行の料足 (りょうそく) のない意で,鎌倉~室町時代,武士で所領,給地をもたないこと,またはその人をいう。江戸時代には知行高のない軽輩の武士をいった。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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世界大百科事典(旧版)内の無足の言及
【無足人】より
…(1)無足,無足の仁,無足の輩,無足の族(やから),無足衆ともいう。日本中世で主従関係を結びながら知行する所領,[所帯]を与えられていない下級の家臣。…
※「無足」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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