熱学(読み)ネツガク(その他表記)theory of heat

デジタル大辞泉 「熱学」の意味・読み・例文・類語

ねつ‐がく【熱学】

現象を研究対象とする物理学および化学の一部門熱力学統計力学分子運動論を総称していう。

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精選版 日本国語大辞典 「熱学」の意味・読み・例文・類語

ねつ‐がく【熱学】

  1. 〘 名詞 〙 物質の熱現象を研究する学問。熱による物質の状態変化熱伝導熱対流熱放射などを研究の対象とする。学問内容は、熱力学、統計力学、分子運動論に大別される。
    1. [初出の実例]「例へば物理学の如き、之を修むる者、光学・熱学或は電気学の如く、僅に其部分を研究し得る而已」(出典:東洋学芸雑誌‐八号(1882)学術上の訳語を一定する論〈菊池大麓〉)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「熱学」の意味・わかりやすい解説

熱学
ねつがく
theory of heat

熱および物体の熱的性質を研究する学問。熱伝導熱膨張、反応熱、熱機関など熱に関連した現象や装置は、物理学、化学、生物学、工学において多種多様な形で現れる。その研究を目的とするのが熱学であるが、内容を大別すると、熱力学、気体分子運動論、統計力学の三つに分類される。

 熱力学は19世紀なかばから後半にかけて完成されたが、その基本的な思想は、物質の微視的詳細に立ち入らず、むしろ巨視的性質に注目し熱力学関数の間の関係を導こうとするものである。すなわち、熱力学は現象論という立場に立脚している。熱力学は実験結果と矛盾することはないが、熱力学関数を原子、分子といった微視的観点から求める手段を提供しない。この点に不満をもった物理学者は、19世紀なかばころから、分子の立場で熱学を構築していった。とくにマクスウェルは1859年、気体分子の運動が乱雑である点に着目し、分子の速度分布を与える一つの法則を導いた。さらに、この気体分子運動論はボルツマン、ギブスなどにより一般化され、今日、統計力学とよばれる一分野が完成した。統計力学は熱力学の基礎づけと同時に、微視的な立場から熱力学関数を求めるための具体的な原理を与える。統計力学は、量子力学と並んで、現代の物性物理学(物性論)を支える大きな支柱となっている。

[阿部龍蔵]

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改訂新版 世界大百科事典 「熱学」の意味・わかりやすい解説

熱学 (ねつがく)
theory of heat

熱が関与するいろいろな現象を扱う物理学,化学などの領域を総称して熱学という。物質の熱的性質,状態変化,熱機関,熱放射,熱伝導などはすべて熱学の対象である。19世紀には熱学というまとめ方に意義があったが,現在では,この名称はあまり使われず,熱力学,統計力学,あるいは化学熱力学などといった理論体系の明らかな呼び方をする。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「熱学」の意味・わかりやすい解説

熱学
ねつがく
thermal science

熱に関する現象を論じる物理学の部門。熱の移動 (伝導,対流,放射) ,物質の状態変化 (液化,気化など) ,熱と他のエネルギーとの相互転換,熱膨張,温度変化に伴う物性の変化などの熱現象を扱う。これらを巨視的立場で論じる熱力学,微視的立場で論じる分子運動論,これを発展させた統計力学がある。

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百科事典マイペディア 「熱学」の意味・わかりやすい解説

熱学【ねつがく】

広義には熱現象に関する物理学的研究全体をいい,熱膨張・状態変化・熱伝導・対流・熱放射など現象論的な部門と,熱力学・気体運動論・統計力学など基礎理論の部門を含むが,狭義には前者のみをさす。今はあまりこの語は使われず,熱力学,統計力学,化学熱力学などといった理論体系の明らかな呼びかたをする。

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