熱電子放出(読み)ネツデンシホウシュツ

デジタル大辞泉 「熱電子放出」の意味・読み・例文・類語

ねつでんし‐ほうしゅつ〔‐ハウシユツ〕【熱電子放出】

熱電子効果

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精選版 日本国語大辞典 「熱電子放出」の意味・読み・例文・類語

ねつでんし‐ほうしゅつ‥ハウシュツ【熱電子放出】

  1. 〘 名詞 〙 金属または半導体高温に熱すると、固体内の電子が熱的に励起(れいき)されて運動が盛んになり、物体表面から飛び出す現象エジソン効果リチャードソン効果熱電子効果。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「熱電子放出」の意味・わかりやすい解説

熱電子放出
ねつでんしほうしゅつ

物質を高温に加熱すると、電子が放出される現象。1884年エジソンが、真空電球に2本のフィラメントを入れ加熱すると、接続していない2本のフィラメント間に容易に電流が流れることからこの現象を発見し、また1901年イギリスのO・W・リチャードソン系統だてた理論を発表したので、エジソン効果あるいはリチャードソン効果ともよばれる。金属に例をとると、自由電子は金属中で自由に動くことができるが、金属より外に出るには、一種障壁があって容易に出られない。しかし高い運動エネルギーをもった電子は、その壁を乗り越えて外に出ることができる。この壁の高さをその金属の仕事関数Wといい、この仕事関数より大きい運動エネルギーをもった電子は、金属の外に出ることができる。金属の温度を絶対温度でTとすると、金属から単位時間に放出される熱電子の数Ne
  NeAT2e-W/kT
の形に表される。この式はリチャードソン‐ダッシュマンの公式といい、eは自然対数の底、A係数kボルツマン定数となっている。この式によれば、金属の温度が高いほど、また仕事関数が小さいほど、放出される熱電子の数が多いことになる。

 熱電子放出をもっとも直接に応用して発達したものに真空管がある。それまでは気体中の放電によってしか取り出せなかった電子の流れを、真空中でも金属を加熱さえすれば容易に取り出せることを利用し、その電子の流れを第三電極で制御する装置が真空管である。仕事関数の小さい物質としてセシウム、バリウム、ストロンチウムなどの金属やその酸化物があり、これらが真空管やブラウン管にも用いられている。蛍光ランプ、高圧水銀ランプなどのアーク放電においても熱電子放出の現象が寄与しており、電極には酸化バリウムなどの仕事関数の低い酸化物が塗布されている。

[東 忠利 2024年6月18日]

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化学辞典 第2版 「熱電子放出」の解説

熱電子放出
ネツデンシホウシュツ
thermionic emission

真空中で物体を熱してその内部の自由電子に運動のエネルギーを与えると,電子が仕事関数Wに打ち勝って物体の外に出てくる現象.最初,T. Edison(1883年)が発見したのでエジソン効果ともいう.一方,W. Richardson(1902年)が理論を考えたが,のちに自由電子のエネルギー分布にパウリの原理を取り入れた結果は放射電子の数を A cm-2 単位で表すと,

となる.ここで,Tは絶対温度,kボルツマン定数A(A cm-2 K-2)は実験的には物質に依存してPt(17000),W(60~100),Th(70),Ba(60),Cs(162)の程度である.よく知られたタングステンフィラメントや,低温でもよく電子を放射する性質がある酸化物被覆陰極が熱電子放出源としてよく用いられている.[別用語参照]熱陰極

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「熱電子放出」の意味・わかりやすい解説

熱電子放出
ねつでんしほうしゅつ
thermoelectronic emission

高温に加熱された固体表面から電子が放出される現象。金属または半導体などの固体が加熱されて高温になると,固体内の自由電子の運動は激しくなり,表面のエネルギー障壁を越えて外へ飛出すものが出てくる。これを熱電子と呼び,温度が高いほど毎秒放出される電子数は多い。 1883年 T.エジソンは白熱電球のフィラメントの近くに別の電極を置くと,この間に電流が流れることを発見した。これをエジソン効果といい,熱電子放出の研究の始りとなった。 1910年に O.リチャードソンは熱電子放出を理論的に説明し,その後の研究により熱電子放出による電流密度 i を表わす次のリチャードソン=ダッシュマンの式を得た。

iAT2 exp (-eφ/kT)

A は定数,T は絶対温度,e は電気素量,φ は仕事関数,k はボルツマン定数である。

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改訂新版 世界大百科事典 「熱電子放出」の意味・わかりやすい解説

熱電子放出 (ねつでんしほうしゅつ)

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世界大百科事典(旧版)内の熱電子放出の言及

【電子放出】より

…しかし外部からの何らかの刺激により,物質内の電子がエネルギーを得て真空準位より高いエネルギーをもつようになると,その電子は真空中に放出される。電子がエネルギーを得て真空中に放出される原因は種々あり,それによって,熱電子放出,二次電子放出,電界放出,エキソ電子放出,光電子放出などと呼ばれる。
[熱電子放出]
 固体が熱せられると,固体を形成している原子の振動が激しくなり,電子は原子振動からエネルギーを得て固体外に飛び出すようになる。…

※「熱電子放出」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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