熱電子発電(読み)ネツデンシハツデン

デジタル大辞泉 「熱電子発電」の意味・読み・例文・類語

ねつでんし‐はつでん【熱電子発電】

熱電子効果利用した発電方式。陰極を加熱して熱電子を放出し、低温の陽極に流入させることで、熱エネルギー電気エネルギーに直接変換する。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「熱電子発電」の意味・わかりやすい解説

熱電子発電
ねつでんしはつでん

金属の表面を真っ赤に加熱すると熱電子が放出される現象を利用して、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電方式。真空または低圧力ガス中に陰極(エミッタ)と陽極(コレクタ)の電極を一定の距離を隔てて配置し陰極を加熱すると、陰極のなかに存在する自由電子のうち、十分に大きなエネルギーをもった電子が束縛に打ち勝って金属の外に飛び出す(熱電子放出)。この放出された熱電子は、低温になっている陽極に飛び込んで集められ、電位差が生じる。陽極と陰極間に接続された外部負荷に電流が流れエネルギーを供給し、ふたたび陰極に戻る。熱電子発電は、MHD発電(磁気流体発電)や熱電発電と同じように、電子の加熱によって直接電気を発生するという意味で一種の直接発電方式といえる。陰極と陽極間の封入物質によって、真空形とプラズマ形の二つがある。熱電子発電器の構造は、高温熱源で加熱されて熱電子を放出する電極(エミッタ)と、熱電子を捕集する低温の電極(コレクタ)とを、0.5ミリメートル以下に接近させ、対向配置しておくものである。その空間に空間電荷を中和するセシウム蒸気で満たしたセシウムリザーバーを設けている。熱電子発電の用途としては、太陽熱および原子炉を熱源とした海洋極地宇宙における人工衛星用の電源などとして有望である。

道上 勉・嶋田隆一]


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百科事典マイペディア 「熱電子発電」の意味・わかりやすい解説

熱電子発電【ねつでんしはつでん】

熱電子を電力源として利用する直接発電の一種。真空またはプラズマ中に対向する陰極(エミッター)と陽極(コレクター)を置き,陰極を加熱し陽極を冷却し,陰極から放出されて陽極に吸引される熱電子から電力を取り出す。太陽熱,放射性同位元素,原子炉等を熱源にして,人工衛星の電源に利用。
→関連項目直接発電発電

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「熱電子発電」の意味・わかりやすい解説

熱電子発電
ねつでんしはつでん
thermionic generation

導体または半導体を高温に熱するとき,固体内より放出される電子 (熱電子) を利用した発電方式をいう。真空または低圧気体 (プラズマ) を封入した容器内に,仕事関数の大きい陰極と小さい陽極とを対立設置し,陰極を加熱して熱電子を放出させ,低温の陽極に流入させて発電する。軽量であり,放熱を容易にできるので,太陽熱,放射性同位元素,原子炉などを熱源として,その用途は多様である。

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世界大百科事典(旧版)内の熱電子発電の言及

【直接発電】より

…ところが,直接発電においては高温作動流体と接触する可動部分が存在せず,この材料問題が存在しないため,より高温の作動温度を設定でき,その結果熱効率の改善が実現されうるのである。 このような目的で研究されている方式としてはMHD発電のほか,EHD発電(電気流体発電),熱電子発電などがある。ここでEHD発電とは,高温高速の燃焼気体に電荷を与え,それを流れ方向に設置された正負電極の間に通して静電的に発電を行わそうとするもので,electrohydrodynamic generatorの意味である。…

※「熱電子発電」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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