燃え尽き症候群(読み)もえつきしょうこうぐん(その他表記)burnout syndrome

最新 心理学事典 「燃え尽き症候群」の解説

もえつきしょうこうぐん
燃え尽き症候群
burnout syndrome

バーンアウトと,訳されずに使われることもある。昨日まで元気に働いていた人が,急にやる気を失って何もしなくなる。いわば燃え尽きてしまう,疲れ果てるのである。何もしたくなくなり,仕事をさぼったり手抜きをしたりなど,真面目さを欠くようになる。欠勤が続くようなこともある。これまで意欲的に熱心に働いていた人ほど,燃え尽きてしまうことが多いので,いっそう目立つのである。何をしても思うようにならない。高い壁に囲まれた気分になる。モチベーションの急速な低下である。その症状うつに似ているところがある。職場にまだ適応できていない若い人に発症することが多く,とくに看護師やソーシャル・ワーカー,小中学校教師など医療・福祉・教育などの対人サービスの領域の対人援助職に多発しがちである。そのため彼らに特有の職業病的なストレスstressとして位置づけられ,理想主義者のストレスということもある。

 対人援助職におけるストレスが特異であるのは,一方でサービスの受け手に対する気づかいが欠かせず,他方では専門的な知見をもって対応しなければならず,温かい気持ちと冷静な気持ちを両立させることを強いられるからである。セミプロフェッショナルとして,裁量の余地が比較的少なく,職業人としてよりも,組織の一員として行動しなければならないため,役割葛藤として過重にストレスが負荷されるようになるのである。これらの症状の発現を少しでも軽減するためには,過重負担を減らすような人事労務施策,差し障りのない範囲での休養や休憩などの対処法copingの工夫,相談相手などのソーシャル・サポートsocial supportなどが必要とされる。個人的に心身トレランス耐性)を強化するような工夫も重要である。

 なお,同様の分野でありながら,医師の症例報告が少ないのは,プロフェッショナルであり,患者からある程度距離をおき,判断に自由裁量の余地が大きく,自立自営が原則で,サービスの受け手の意向に左右されることがほとんどないためとされている。

 ストレスを測定するために,心理学的な尺度がいくつか工夫されているが,その中でもよく知られているのが社会心理学者マスラークMaslach,C.の考案したMBI(Maslach's burnout inventory),すなわちバーンアウト尺度である。それは情緒的消耗感(疲れ果てた,もう働きたくないなどの気分),個人的な達成感のなさ(何をしても意味がないなどの気分),脱人格化(冷淡になってしまう,相手をモノのように扱ってしまうなどの気分)の三つの症状を軸として自覚症状を測定している。ほかに,BI(burnout index)のように,気が滅入ったり,疲れやすくなったり,自分がいやになったりするなど,疲労を中心にした測定尺度もある。
〔田尾 雅夫〕

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「燃え尽き症候群」の意味・わかりやすい解説

燃え尽き症候群
もえつきしょうこうぐん
burnout syndrome

意欲に満ちあふれていた人が,突然無気力や自己嫌悪に陥って職場不適応や出社拒否の兆候を示すこと。バーンアウト・シンドロームともいう。 1970年代のアメリカ合衆国で,医療従事者など激務を強いられる専門職に多くみられた。仕事への心的エネルギーが過剰に要求され続けることによってストレスが重なり,精神的・身体的に疲労が極度になることが原因とされる。気持ちがふさいで晴ればれしないうつ状態,偏頭痛,めまい,自律神経失調といった心身症の症状から始まることが多い。仕事のみならず,受験勉強に追われる学生,災害ボランティア,教員,長い介護の末に身内の最期をみとった家族にも症候がみられる。

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