最新 心理学事典 「燃え尽き症候群」の解説
もえつきしょうこうぐん
燃え尽き症候群
burnout syndrome
対人援助職におけるストレスが特異であるのは,一方でサービスの受け手に対する気づかいが欠かせず,他方では専門的な知見をもって対応しなければならず,温かい気持ちと冷静な気持ちを両立させることを強いられるからである。セミプロフェッショナルとして,裁量の余地が比較的少なく,職業人としてよりも,組織の一員として行動しなければならないため,役割葛藤として過重にストレスが負荷されるようになるのである。これらの症状の発現を少しでも軽減するためには,過重負担を減らすような人事労務施策,差し障りのない範囲での休養や休憩などの対処法copingの工夫,相談相手などのソーシャル・サポートsocial supportなどが必要とされる。個人的に心身のトレランス(耐性)を強化するような工夫も重要である。
なお,同様の分野でありながら,医師の症例報告が少ないのは,プロフェッショナルであり,患者からある程度距離をおき,判断に自由裁量の余地が大きく,自立自営が原則で,サービスの受け手の意向に左右されることがほとんどないためとされている。
ストレスを測定するために,心理学的な尺度がいくつか工夫されているが,その中でもよく知られているのが社会心理学者マスラークMaslach,C.の考案したMBI(Maslach's burnout inventory),すなわちバーンアウト尺度である。それは情緒的消耗感(疲れ果てた,もう働きたくないなどの気分),個人的な達成感のなさ(何をしても意味がないなどの気分),脱人格化(冷淡になってしまう,相手をモノのように扱ってしまうなどの気分)の三つの症状を軸として自覚症状を測定している。ほかに,BI(burnout index)のように,気が滅入ったり,疲れやすくなったり,自分がいやになったりするなど,疲労を中心にした測定尺度もある。
〔田尾 雅夫〕
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