家庭医学館 「爪の色の異常」の解説
つめのいろのいじょう【爪の色の異常 Dyschromia of the Nails】
さまざまな原因による爪の色の異常です。
■黒色(こくしょく)の爪(つめ)
文字どおり黒い爪ですが、その原因は爪下(そうか)の出血(血腫(けっしゅ))と、メラニン色素による場合とがあります。
血腫による黒色斑(こくしょくはん)は突然現われ、指先に移動してゆくのが特徴です。出血量が多いときには爪甲(そうこう)が脱落します。
メラニン色素による場合は、褐色~黒色の線または帯のような筋が縦にできるか、爪甲全体が着色します。前者は、爪母(そうぼ)に色素性母斑(しきそせいぼはん)、そばかすのような斑があるときや、爪母の炎症の後にできます。そのため、慢性爪郭炎(まんせいそうかくえん)や爪白癬(つめはくせん)の治療中や治癒後(ちゆご)にも現われることがあります。後者は薬剤や全身疾患が原因です。
●治療
血腫による黒色斑は爪の成長とともに消失します。メラニン色素による場合、多くはそのまま放置してかまいませんが、まれに悪性黒色腫(あくせいこくしょくしゅ)の始まりのことがあります。爪甲が変形してきたり、色素斑の色や幅が急に変化したときには、皮膚科の専門医を受診しましょう。薬剤による場合は、薬剤を中止すれば色調は薄くなります。
■黄色(おうしょく)の爪(つめ)
爪甲がぶ厚くなり、黄色みを帯びるものです。第1趾(し)(足の親指)の爪によくおこります。鈎彎爪(こうわんそう)(コラム「鈎彎爪」)の初期で、爪の成長が妨害されて生じるのですが、その原因は、深爪(ふかづめ)や抜爪(ばっそう)(究極の深爪)です。爪白癬(つめはくせん)(爪みずむし)でも一部の爪が黄色になることがあります。
手足のすべての爪が黄色みを帯びるのは、黄色爪症候群(おうしょくそうしょうこうぐん)という病気で、リンパのうっ滞(たい)(循環不全)が原因です。
●治療
鈎彎爪の初期は人工爪(じんこうづめ)で治ります。黄色爪症候群の爪の変形には、エトレチナートの内服がよく効きます。
■緑色(りょくしょく)の爪(つめ)
緑膿菌(りょくのうきん)という細菌の出す色素によって爪甲が緑色に染められたものです。健康な爪には緑膿菌が感染することはありませんから、爪が緑色になるのは爪が何かの病気になっているためです。多いのはカンジダ感染や爪白癬、ときには爪の乾癬(かんせん)などです。人工爪や付け爪をしても、爪甲との間にすき間があると、そこに緑膿菌が感染して緑色になることがあります。
●治療
緑膿菌は湿った環境で増殖しますから、患部を乾燥させることが治療の基本です。また、原因である爪の病気を治すことも大事です。カンジダ感染で爪甲が緑色になっているときは、浮き上がっている爪甲をニッパー型の爪切りで取り除いて乾燥させ、抗真菌薬(こうしんきんやく)を外用すると簡単に治ります。爪白癬や爪乾癬による着色は、それらの病気を治せば治ります。人工爪、付け爪の場合は、それらを取り除かないと治りません。なお、緑色に染まった爪甲は、爪の成長につれて前方に移動し、消えてしまいます。
■白色(はくしょく)の爪(つめ)(白色爪甲(はくしょくそうこう))
爪が白く見える状態です。爪甲が白く濁る原因でもっとも多いのは、爪白癬(「爪白癬(爪みずむし)」)です。点状の白い斑点(はんてん)ができるものを点状爪甲白斑(てんじょうそうこうはくはん)といいます。爪甲をつくる爪母(そうぼ)に外傷を負って、角化の異常がおこるためです。斑点は横線状に並ぶこともあれば、爪半月と平行に弓形の白い帯のように現われることもあります。低アルブミン血症などが原因です。
爪全体が白っぽくなることが幼児期にありますが、病気ではありません。おとなの爪が白いのは低色素性貧血、肝硬変(かんこうへん)、腎障害(じんしょうがい)などの病気のためです。
●治療
点状爪甲白斑は爪が伸びるにつれて前方に移動し、消えてしまいます。その他の白い爪は、原因である病気の治療が必要です。