化膿症の原因菌の一つ。グラム陰性で,長さ1.5~4.0μm,幅0.5μmの通性嫌気性杆菌。1~3本の極毛性鞭毛をもつ。自然界に広く分布している。色素産生菌であり,膿汁が青緑色になることから緑膿菌と呼ばれる。青緑色色素ピオシアニン,赤色色素ピオルビン,褐色色素ピオメラニン,水溶性蛍光色素ピオベルジンなどを産生する。緑膿菌は,消毒剤や抗菌剤,化学療法剤に対して抵抗性が強い。病原性は強くなく,健康人からも糞便,皮膚などから分離されるが,通常の状態で発病をきたすことはまれである。しかし生体側の感染防御機能が弱まったときに,尿路系および気管支系などに感染した場合,治療が難しく,長く患者を苦しめる。近年,入院患者の泌尿器科病室などでの院内感染が問題になっている。緑膿菌は湿潤な場所を好み,未熟児・新生児室や手術室なども緑膿菌の汚染を受けやすい。対応として,無菌的な操作・処置がとられている。
執筆者:川口 啓明
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プセウドモナス(シュードモナス)科プセウドモナス属の細菌。名の由来は、本菌によって化膿(かのう)性疾患がおこった場合、緑色の膿汁が出ることによる。グラム陰性の桿菌(かんきん)で、大きさは0.5~1.0×1.5~5.0マイクロメートル(1マイクロメートルは100万分の1メートル)、一端に1本または数本の鞭毛(べんもう)を形成する。胞子は形成せず、好気性、オキシダーゼ陽性。培養の際は、普通寒天(一般細菌用培養基)37℃でよく発育する。緑膿菌は水溶性色素を生産するため、培地が着色する。色は青緑色、赤紫色、褐色、蛍光色などさまざまである。なかには色素を生産しないものもある。緑膿菌は自然界に広く存在する細菌であるが、病原性が弱いので、健康なヒトには原発性の感染をおこすことはない。しかし、一度本菌で感染がおきた場合は特効的治療剤が少ないため、重篤となることがある。
[曽根田正己]
『三橋進他編『緑膿菌感染症の基礎と臨床 感染症研究会「第3回富山シンポジウム」』(1993・ライフサイエンス・メディカ)』▽『斎藤厚・山口恵三編『緑膿菌の今日的意味――したたかな生命力とその病原性』(1996・医薬ジャーナル社)』
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… 菌交代現象や菌交代症の発生機序を考えるとき,微生物,宿主(ヒト),薬剤および環境の4因子を検討するのが便利である。微生物すなわち耐性菌は抗生物質の発達に伴い時代とともに当然変化するが,現在ではグラム陰性杆菌,とくに緑膿菌,およびその類縁菌,霊菌,カンジダなどが重視されている。宿主側では,3歳以下および60歳以上により多く,基礎疾患や感染防御力の低下があると起こりやすい。…
…多種類の有機化合物を分解し,自然界の物質循環に大きな役割を果たしている。緑膿菌P.aeruginosa,蛍光菌P.fluorescensは美しい蛍光性色素を生成する。緑膿菌などは日和見感染症の原因菌となるが,蛍光菌はグルコン酸などの製造に用いられる。…
※「緑膿菌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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