片男波(読み)かたおなみ

精選版 日本国語大辞典 「片男波」の意味・読み・例文・類語

かた‐おなみ ‥をなみ【片男波】

[1] 〘名〙 (「万葉‐九一九」の「和歌の浦に潮満ち来れば潟(かた)無み葦辺をさして鶴(たづ)鳴き渡る」の「潟(かた)を無(な)み」をもじった語) 高い波、低い波のうち、高い波をいう。男波
謡曲松風(1423頃)「寄せては帰る片男波、芦べの鶴こそは立ち騒げ」
[2] ((一)の「万葉集」の歌の「潟(かた)を無(な)み」を地名にあてたもの) 和歌山市和歌浦(わかうら)にある砂嘴(さし)の名。
歌謡・松の葉(1703)三・和歌の浦「和歌の浦には名所がござる、一に権見二に玉津島(たまつしま)、三に塩釜四に妹背山、かたをなみこそ名所なれ」

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デジタル大辞泉 「片男波」の意味・読み・例文・類語

かた‐おなみ〔‐をなみ〕【片男波】

《「万葉集」九一九の山部赤人の歌「和歌の浦に潮満ち来ればかたを無み葦辺あしべをさしてたづ鳴き渡る」の「潟を無み」をもじった語》打ち寄せる波のうちの高い波。おなみ。
「寄せては帰る―」〈謡・松風

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日本歴史地名大系 「片男波」の解説

片男波
かたおなみ

新和歌浦しんわかのうらの東部から南南東に延びた砂嘴で、幅は狭く標高は低い。現在は人為的に大きく変えられており、和歌川河口右岸となっている。玉津島から市町いちまち川に架した石橋(不老橋)を渡り南に三〇〇メートルで片男波に出る。呼称は先引山部赤人作歌の第三句「潟を無み」に由縁するか。対岸葦辺あしべなる地名もあるが、これも同歌によったと考えられる。元禄二年(一六八九)当地を訪れた貝原益軒は「南遊紀行」に「和歌の浦は、南をうけて入海なり、俗説に、此浦におなみ有てめなみなし、故に片男波と云、此説非也、男波とは大なみなり、女波とは小波也、(中略)和歌の浦にしほみちくればかたをなみと古歌によめるは、(中略)しほみち来りて、かたなくなると云意也、(中略)此浦の佳景、聞しにまさりて、目を驚せり、我此景色をむさぼりみて、海辺に躊躇し、去事をわすれて時をうつせり、つとめて又本の道に帰り、玉津嶋にいたる」と記している。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「片男波」の意味・わかりやすい解説

片男波
かたおなみ

和歌山県北西部,和歌浦湾に突出する砂嘴。長さ 2.5km。和歌山市に属する。内側の潟湖紀ノ川の古い分流和歌川の河口にあたる入江で,和歌浦と呼ばれる古くからの名所。地名は『万葉集』の「和歌の浦に潮満ちくればかたをなみ…」に由来。和歌ノリの養殖地で和歌浦漁港ではかまぼこの製造が行われる。

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世界大百科事典(旧版)内の片男波の言及

【和歌浦】より

…和歌山市の南部,和歌川河口一帯の海辺で,古くより景勝の地として著名。河口には砂嘴(さし)の片男波(かたおなみ)が長く延び,かつては海中の島であった玉津島には和歌の神として信仰された玉津島神社が鎮座する。724年(神亀1)聖武天皇が行幸,風光を賞して名を〈明光浦〉と改め,玉津島神をまつった(《続日本紀》)。…

※「片男波」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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