妹背山(読み)イモセヤマ

デジタル大辞泉 「妹背山」の意味・読み・例文・類語

いもせ‐やま【妹背山】

和歌山県北部、かつらぎ町を流れる紀ノ川北岸背山南岸妹山鉢伏はちぶせ山と長者屋敷のこと。[歌枕
「後れ居て恋ひつつあらずは紀伊国妹背の山にあらましものを」〈・五四四〉
奈良県中部、吉野町吉野川を隔てて向かい合う南岸の背山と北岸の妹山。
[補説]川を挟んで相対する山の併称で、他にも各地にある。

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精選版 日本国語大辞典 「妹背山」の意味・読み・例文・類語

いもせ‐やま【妹背山・妹兄山】

  1. [ 一 ]
    1. 和歌山県北部、かつらぎ町にある二つの山。紀ノ川をはさんで、北岸に背山(鉢伏山)、南岸に妹山(長者屋敷)があった。いもせのやま。歌枕。
      1. [初出の実例]「後れゐて恋ひつつあらずは紀伊の国の妹背乃山(いもせノやま)にあらましものを」(出典:万葉集(8C後)四・五四四)
    2. 奈良県吉野町、吉野川を隔てて相対する二つの山。南岸の飯貝にあるのを背山、北岸の龍門側を妹山または茂山(もやま)。歌枕。
    3. 石見国(島根県)にあるといわれる山。歌枕。
  2. [ 二 ] ( 妹背山 ) 「いもせやまおんなていきん(妹背山婦女庭訓)」の通称。

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日本歴史地名大系 「妹背山」の解説

妹背山
いもせやま

神亀元年(七二四)一〇月の聖武天皇の紀伊行幸の時、笠金村が従駕の人に送った長歌の反歌のうちに、

<資料は省略されています>

があり(「万葉集」巻四)、妹背山は現在の山といも山に比定されている。歌枕で、「能因歌枕」「五代集歌枕」「八雲御抄」などに紀伊国にあるとされる。「和歌初学抄」も紀伊の山とし「山フタツアリ、イモトセノ山トモ、中ニヨシノガハナガレ、ヲトコ女ノコトニソフ」と記し、兄妹・男女の恋歌に詠み込まれた。

<資料は省略されています>

「袖中抄」には「顕昭云、いもせの山とは紀伊国にあり。吉野川を隔ていもの山せの山とて二山の有也。昔いもとせうとと河を隔て中のさかひを論じけり。遂に妹かちてせの山の方近く掘て吉野河はながしたりと云」といういい伝えを載せるが、「但此いもの山せの山の中に小山あり。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「妹背山」の意味・わかりやすい解説

妹背山
いもせやま

和歌山県北東部,紀ノ川中流沿岸にある二つの丘の総称。南岸の丘を妹山(124m),北岸の丘を背山(兄山,168m)といい,ともにかつらぎ町に属する。川に沿って旧南海道(現国道24号線)が通り,古くから旅人に親しまれ,歌枕として『万葉集』『古今和歌集』などにうたわれている。大化2(646)年,背山が畿内南限と定められた。

妹背山
いもせやま

奈良県中部,吉野町上市の東方にある妹山 (260m) と背山 (272m) の総称。吉野川をはさんで相対する孤立丘陵で,北岸の妹山は全山天然記念物のツルマンリョウなど暖地性植物におおわれる。万葉時代から数多くの歌に詠まれ,浄瑠璃歌舞伎の『妹背山婦女庭訓』で知られている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「妹背山」の意味・わかりやすい解説

妹背山(奈良県)
いもせやま

奈良県中部、吉野川を挟んで相対する右岸の妹山(いもやま)(260メートル)と左岸の背山(せやま)(272メートル)の総称。吉野町に属す。両山は吉野川の侵食によって切り離されたと考えられ、背は夫、妹は妻を意味し、浄瑠璃(じょうるり)、歌舞伎(かぶき)の『妹背山婦女庭訓(おんなていきん)』で知られる。妹山にはツルマンリョウ、ルリミノキテンダイウヤクなど暖地性植物の群生がみられ、妹山樹叢(じゅそう)として国の天然記念物に指定されている。その南西麓(ろく)に大名持神社(おおなもちじんじゃ)があり、神山とされたため、原始林の林相を現在に保つことができた。

[菊地一郎]


妹背山(和歌山)
いもせやま

和歌山県北部、伊都(いと)郡かつらぎ町にある山。紀ノ川を挟み、北を背ノ山、南を妹山とするが、元来、両岸が迫る「狭山(せやま)」の意味で、兄山(せやま)と書き、妹山をつけて称したもの。中央に船岡山(ふなおかやま)があり、河流を二分し景色もよく、この狭隘(きょうあい)部が大化改新のとき畿内(きない)の南限とされ、北岸の南海道を旅する人々の旅愁を誘い、『万葉集』や『古今集』に残る歌枕(うたまくら)となった。

[小池洋一]

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「妹背山」の解説

妹背山
(通称)
いもせやま

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
妹背山婦女庭訓 など
初演
享保17.9(大坂・嵐国石座)

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