狂雲集(読み)きょううんしゅう

精選版 日本国語大辞典 「狂雲集」の意味・読み・例文・類語

きょううんしゅうキャウウンシフ【狂雲集】

  1. 詩集。二巻。一休宗純著。寛永一九年(一六四二)刊。京都紫野大徳寺四八世である一休禅師の一代の詩偈を編集したもの。

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改訂新版 世界大百科事典 「狂雲集」の意味・わかりやすい解説

狂雲集 (きょううんしゅう)

一休宗純の詩集。上下2巻,別に続1巻。一休は純粋孤高,飄々(ひようひよう)として天衣無縫の生涯を送った。彼の禅の本質や言動は世間の常識ではとうてい計ることができなかった。世間は〈風狂(ふうきよう)〉と彼を評し,一休は〈狂雲〉とみずから号した。この詩集の名の起因である。狂雲の意は,乱れ湧く雲のことで,風狂の意と同じ。〈狂雲誰れか識らん,狂風に属するを。朝(あした)には山中にあり,暮(ゆうべ)には市中にあり〉と,一休は吟ずる。隠遁孤高の山中の禅者から,一転して一休は,疾風怒濤の狂雲や狂風のように,激情にまかせて,京洛の巷に出て遊女や酒に沈淪する。禅宗界の常識は一休に通用しない。凡人を越えて禅に帰し,禅を越えて凡人にもどる。一休はこれを〈昨日は俗人,今日は僧〉とも,この詩集で詠じた。晩年の一休が溺愛した盲目の美女,森侍者(しんじしや)との愛情詩も多くある。一休の禅を知る根本史料である。《続群書類従》第12輯所収
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「狂雲集」の意味・わかりやすい解説

狂雲集
きょううんしゅう

一休宗純(そうじゅん)の作品集の一つ。一休にはほかに『狂雲詩集』『自戒集』などがある。『狂雲詩集』が漢詩の集であるのに対し、『狂雲集』は頌(じゅ)、偈(げ)、賛などの集である。頌や偈は仏教の教えや自己の宗教的境涯を詠むもので、外形はまったく詩と変わらない。詩が情緒や感覚によって詠まれるのに対して、頌、偈は思想や精神の境涯が表出される。『狂雲集』には収録作品数の異なる11の諸本があるが、作品はすべて七言絶句である。内容は狂雲の名にふさわしく、自信と悔恨の間に揺れ動く激情と、飲酒(おんじゅ)・肉食(にくじき)・女色(にょしょく)の破戒と、偽善腐敗を暴く非常識と、求道(ぐどう)の真摯(しんし)さとの、熱烈な精神に満ちている。

[中本 環]

『平野宗浄著『狂雲集全釈 上』(1976・春秋社)』『中本環校註『狂雲集・狂雲詩集・自戒集』(1976・現代思潮社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「狂雲集」の意味・わかりやすい解説

狂雲集
きょううんしゅう

室町時代後期の漢詩集。2巻。一休宗純 (そうじゅん) 著。成立は文明 13 (1481) 年以前。「狂雲」は作者の号で,みずから風狂をもって任じ,奇矯の多かった面目をよく示している。題材も好色や情事,遊芸など奇抜なものが多く,当時の腐敗した禅界を憤りながら,狂態を示すことによって非道即仏道の自由の境地に達し,衆生を済度しようとしたのであり,新しい詩境を開いたものとして注目される。なおこれに続くものとして『続狂雲集』がある。『続群書類従』所収。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「狂雲集」の解説

狂雲集
きょううんしゅう

一休宗純(いっきゅうそうじゅん)の漢詩集。書名は一休の号狂雲子による。一休が没した1481年(文明13)には本書の原型が成立していたと推定される。真珠庵蔵本・蓬左文庫本など数種類の写本が伝存し,収録された詩の数も写本により異なる。一休の弟子祖心紹越筆の奥村家蔵本が最も多くの詩を収め,良質の写本である。「新撰日本古典文庫」「続群書類従」所収。

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世界大百科事典(旧版)内の狂雲集の言及

【龐居士】より

…語録や,偈頌もこの意味で解釈される。一休の《狂雲集》は,多分にその影響をうけている。【柳田 聖山】。…

※「狂雲集」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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