一休宗純の詩集。上下2巻,別に続1巻。一休は純粋孤高,飄々(ひようひよう)として天衣無縫の生涯を送った。彼の禅の本質や言動は世間の常識ではとうてい計ることができなかった。世間は〈風狂(ふうきよう)〉と彼を評し,一休は〈狂雲〉とみずから号した。この詩集の名の起因である。狂雲の意は,乱れ湧く雲のことで,風狂の意と同じ。〈狂雲誰れか識らん,狂風に属するを。朝(あした)には山中にあり,暮(ゆうべ)には市中にあり〉と,一休は吟ずる。隠遁孤高の山中の禅者から,一転して一休は,疾風怒濤の狂雲や狂風のように,激情にまかせて,京洛の巷に出て遊女や酒に沈淪する。禅宗界の常識は一休に通用しない。凡人を越えて禅に帰し,禅を越えて凡人にもどる。一休はこれを〈昨日は俗人,今日は僧〉とも,この詩集で詠じた。晩年の一休が溺愛した盲目の美女,森侍者(しんじしや)との愛情詩も多くある。一休の禅を知る根本史料である。《続群書類従》第12輯所収。
執筆者:藤井 学
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
一休宗純(そうじゅん)の作品集の一つ。一休にはほかに『狂雲詩集』『自戒集』などがある。『狂雲詩集』が漢詩の集であるのに対し、『狂雲集』は頌(じゅ)、偈(げ)、賛などの集である。頌や偈は仏教の教えや自己の宗教的境涯を詠むもので、外形はまったく詩と変わらない。詩が情緒や感覚によって詠まれるのに対して、頌、偈は思想や精神の境涯が表出される。『狂雲集』には収録作品数の異なる11の諸本があるが、作品はすべて七言絶句である。内容は狂雲の名にふさわしく、自信と悔恨の間に揺れ動く激情と、飲酒(おんじゅ)・肉食(にくじき)・女色(にょしょく)の破戒と、偽善と腐敗を暴く非常識と、求道(ぐどう)の真摯(しんし)さとの、熱烈な精神に満ちている。
[中本 環]
『平野宗浄著『狂雲集全釈 上』(1976・春秋社)』▽『中本環校註『狂雲集・狂雲詩集・自戒集』(1976・現代思潮社)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
一休宗純(いっきゅうそうじゅん)の漢詩集。書名は一休の号狂雲子による。一休が没した1481年(文明13)には本書の原型が成立していたと推定される。真珠庵蔵本・蓬左文庫本など数種類の写本が伝存し,収録された詩の数も写本により異なる。一休の弟子祖心紹越筆の奥村家蔵本が最も多くの詩を収め,良質の写本である。「新撰日本古典文庫」「続群書類従」所収。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…語録や,偈頌もこの意味で解釈される。一休の《狂雲集》は,多分にその影響をうけている。【柳田 聖山】。…
※「狂雲集」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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