大正・昭和期の社会主義者,経済学者,評論家
出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報
昭和初期のマルクス主義理論家。新潟市に生まれ,長岡中学,早稲田大学専門部政治経済科,ウィスコンシン大学卒業後,1921年早大講師となったが,23年第1次共産党事件に連座,26年に禁錮4月の刑に服した。27年同志と雑誌《労農》を発刊したが,のち同人を脱退。37年に人民戦線事件で検挙されたが腎臓炎が悪化,39年出所し入院,42年死去。労農派初期の理論家,経済評論家として《中央公論》《改造》誌上でも活躍したが,とくに金融資本論,帝国主義論など当時の日本では新しい領域を開拓したほか,インフレーションや農村問題などに幅広く論陣をはった。著書は,《金融資本論》(1925),《現代日本研究》(1929),《金の経済学》(1932)など19冊にのぼる。
→日本資本主義論争
執筆者:林 健久
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経済学者。明治22年4月23日新潟市に生まれる。早稲田(わせだ)大学政経学部を卒業、さらにアメリカのウィスコンシン、シカゴ、コロンビアの諸大学で経済学を学ぶ。在米中、片山潜(せん)の組織した「在米日本人社会主義者団」に加入。1921年(大正10)帰国して早大講師となる。22年結成の日本共産党に参加、23年の第一次共産党事件で検挙され、早大を追われた。共産党の再建には加わらず、共産党の革命戦略論や現状分析とは対立する論文、著作を発表し、27年(昭和2)12月には山川均(ひとし)などと雑誌『労農』を創刊、労農派の中心人物の一人として論壇で活躍を続けた。『金融資本論』(1925)、『現代日本研究』(1929)、『金の経済学』(1932)、『農村問題入門』(1937)ほか数多くの著作があり、マルクス経済学の普及と日本の政治、経済のマルクス主義的分析の開拓に果たした役割は大きい。
37年に人民戦線事件で検挙され、39年には病気のため、刑の執行を停止されたが、病いえず42年(昭和17)1月19日没した。
[山崎春成]
『猪俣津南雄研究会編・刊『猪俣津南雄研究』1~16号(1970~74)』
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…B.ラッセル,サンガー夫人,アインシュタインなどの外国知識人を招いたり,プロレタリア文学流行期にはそれに多くの誌面を割くなど,つねに時代の新思潮を敏感にとらえ大正末年には《中央公論》とならぶまでに成長した。本誌の最多執筆者だった山川均のほか河上肇,猪俣津南雄,櫛田民蔵ら多くのマルクス主義者に誌面を開放し,社会主義運動とマルクス主義の普及に多大の貢献をした。いっぽう,文芸欄は文壇の登竜門としての権威をもち,志賀直哉《暗夜行路》,中条(宮本)百合子《伸子》,芥川竜之介《河童》などの名作も生まれた。…
…当時のマルクス主義者はこの危機打開の道をめぐって二つの陣営に分かれて対立した。その代表的論争は,野呂栄太郎と猪俣津南雄との戦略論争である。野呂は日本共産党の〈27年テーゼ〉を支持する立場から,日本国家の民主主義化のための闘争は,不可避的に封建的残存物にたいする闘争から資本主義それ自体にたいする闘争に転化するであろうと主張した。…
…これがいわゆる〈二段階革命論〉であったが,それが日本共産党のいわゆる〈32年テーゼ〉とぴったりと一致することは,周知のことがらであった。 これに対して,雑誌《労農》に結集した山川均,猪俣津南雄,向坂逸郎(1897‐1985),大内兵衛,櫛田民蔵,土屋喬雄(1896‐1988)らの学者は,総じて労農派と呼ばれたが,彼らはほぼ次のように主張した。明治維新は一種のブルジョア革命であり,したがってそれ以後,日本社会の構造は土地所有よりも資本の運動によって規制されるようになった。…
…1927年12月,山川均,猪俣津南雄,荒畑寒村らによって創刊された理論雑誌。1926年3月に創刊された雑誌《大衆》同人の鈴木茂三郎,黒田寿男,大森義太郎らも合流した。…
※「猪俣津南雄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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