低所得者・障害者・高齢者世帯を対象に、その世帯の状況と必要にあわせた資金、たとえば就職・技能習得や高校、大学等への就学、介護サービス・障害者サービスを受けるための費用等を無利子または低利で貸し付ける制度。この制度は、資金の貸付けによる経済的な援助にあわせて、地域の民生委員が資金を借り受けた世帯の相談支援を行うことが特徴である。それは、この制度の沿革による。
生活福祉資金貸付制度は、もともと「世帯更生資金貸付制度」として、1952年(昭和27)の第7回全国民生・児童委員大会における要援護者の防貧と自立更生を意図した「世帯更生運動の実践申合決議」に基づき、全国的な民間活動として始められた「世帯更生運動」のもつ意義と役割の重大さに着目して、1955年8月世帯更生運動を助成するため創設されたことによる。1990年(平成2)、在宅福祉のいっそうの推進要請にこたえ、経済社会情勢の変動に応じた貸付条件の改善が図られ、名称も「生活福祉資金貸付制度」と改められた。また、2009年(平成21)10月に、同制度が大幅に見直され、継続的な相談支援とともに、生活費や一時的な資金の貸付けを行う「総合支援資金」が設けられた。
2016年の時点で、実施主体は、都道府県社会福祉協議会、相談・窓口は都道府県内の市区町村社会福祉協議会である。貸付資金は、総合支援資金(生活支援費、住宅入居費、一時生活再建費)、福祉資金(福祉費、緊急小口資金)、教育支援資金(教育支援費、就学支援費)、不動産担保型生活資金(不動産担保型生活資金、要保護世帯向け不動産担保型生活資金)の4種類である。4種類の資金のうち、福祉資金の福祉費は、資金の用途に応じて、貸付上限目安額が設定されている。原則、連帯保証人を必要とするが、連帯保証人をたてないことも可能であり、利率は、前者は無利子、後者は年1.5%である。ただし、教育支援資金と緊急小口資金は無利子、不動産担保型生活資金は、年3%または長期プライムレートのいずれか低い利率、である。2015年4月の生活困窮者自立支援法(平成25年法律第105号)施行に伴い、資金の種類によって借入申込の流れが一部変更された。総合支援資金、緊急小口資金の借入には、生活困窮者自立支援制度による自立相談支援事業の利用が貸付の要件となっている。
貸付に必要な原資は、総合支援資金は国が10分の10、要保護世帯向け不動産担保型生活資金は国が4分の3、都道府県が4分の1、前記以外は、国が3分の2、都道府県が3分の1の割合で負担している。貸付件数は、徐々に減少傾向にあったが、厳しい経済・雇用情勢を背景とした2009年の制度改正により低所得世帯が利用しやすくなった結果、貸付実績は増加した。
[岩永理恵 2016年7月19日]
『生活福祉資金貸付制度研究会編『生活福祉資金の手引』各年度版(筒井書房)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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