日本大百科全書(ニッポニカ) 「生涯スポーツ」の意味・わかりやすい解説
生涯スポーツ
しょうがいすぽーつ
lifelong sports
人が生涯にわたってスポーツ活動を楽しみながら健康増進を図るとともに、スポーツを通して人生を豊かなものにすること。一般的な解釈として、(1)自己が生涯に継続してスポーツを楽しむこと、(2)幼児から高齢者までのあらゆる人たちがスポーツに親しむこと、という二つの視点でとらえられる。
生涯スポーツが国際社会で強調されるようになったきっかけは、1960年代にヨーロッパで高まったスポーツの大衆化運動、スポーツ・フォー・オールSports for All運動である。その結果、1968年のユネスコ(国連教育科学文化機関)のスポーツ宣言や、1975年のスポーツのヨーロッパ会議における「みんなのスポーツ憲章」の採択勧告が行われ、続く1976年には、ユネスコの第1回青少年体育・スポーツ担当相会議において、すべての人々に対してスポーツの機会を提供することの必要性が強調された。これにより幼児から高齢者、身体障害者を含めて参加し、楽しむことができる生涯スポーツの権利に注目が集まるようになった。
日本ではスポーツ振興法の規定に基づき、スポーツ振興基本計画が2000年(平成12)に策定された。「国民の誰もが、それぞれの体力や年齢、技術、興味・目的に応じて、いつでも、どこでも、いつまでもスポーツに親しむことができる生涯スポーツ社会を実現する」ことを目ざし、成人の週1回以上のスポーツ実施率が50%になることが目標であった。2012年に文部科学省が今後5年間の政策目標を策定したスポーツ基本計画では、さらなる生涯スポーツ社会の整備を掲げ、成人の週1回以上のスポーツ実施率が65%程度、そのうち週3回以上の人が30%となることを目ざす一方、1年間に一度もスポーツをしない未実施者がゼロに近づくことが目標とされた。また、子供の体力に関しては、今後10年以内に1985年(昭和60)ごろの水準を上回るようにスポーツ機会を充実することが掲げられている。
このようなスポーツ振興政策の実施に先だち、1988年度に当時の文部省体育局に生涯スポーツ課(現、文部科学省スポーツ・青少年局スポーツ振興課)が設置され、スポーツ活動の場となる総合型地域スポーツクラブやその人材の育成が進められてきた。また、全国スポーツ・レクリエーション祭や生涯スポーツ功労者の表彰などの事業が実施されている。
[編集部]