水中に増殖した微小な生物が、有機物を一定条件下、一定期間内に酸化分解することによって消費した溶存酸素量。biochemical oxygen demandの訳語で、BODと略称する。
有機物による水の汚染度を示す尺度として、広く利用されており、普通、20℃の暗黒の条件下で5日間の溶存酸素消費量(BOD5)を、mg/l(ppm)単位で求める。BODの概念は、ヨーロッパやアメリカ、とくにイギリスの汚染された河川で、自浄作用の機構を考えるにあたって考案された概念である。
日本では、1971年(昭和46)に環境庁告示第59号として、初めて水質環境基準が公示された。そのなかで、「生活環境の保全に関する環境基準」として、河川の水質環境基準が設定され、BODは河川環境の保全上重要な基準項目の一つとして採用されている。ただし、BODを測定するための試水中に、生物の生理作用を妨害する物質が含まれているときには、BODの値が小さくなるために、有機物による水の汚染度の尺度とはなりにくいことも生じる。
[渡辺仁治]
BODと略称されることが多い。水質の有機物による汚染の指標の一つ。水中に存在する分解可能な有機物を,微生物が分解安定化するために要する酸素量をいい,酸素のmg/l,またはppmで表される。ここで,分解可能とは,微生物(主として細菌で原生動物も含まれる)が有機物を食物としてエネルギー獲得と増殖のために利用できることをいう。BOD値は,下水や産業排水の汚染度を酸素量で表現するとともに,これらが公共水域に放流された場合,水域で酸化,安定化するのに要する酸素量を示しており,水中の溶存酸素濃度を維持し,魚類などが生息できる良好な水環境管理のための重要な指標となっている。測定は,微生物を利用する特殊な試験法で行われ,ふつう5日間要するため,5日間BODと称されたりBOD5と表記されることもある。一般に他の水質汚染を表す指標と合わせて利用され,有機物質が微生物分解可能か,あるいは難分解性かを判断する指標ともなっている。
→化学的酸素要求量
執筆者:松井 三郎
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(杉本裕明 朝日新聞記者 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
… 水の有機物汚染を示す指標には,このほかに生物化学的酸素要求量(BOD。biochemical oxygen demandの略),全酸素要求量(TOD。total oxygen demandの略),全有機性炭素量(TOC。…
…COD値が高いほど有機汚染が進んでおり,CODMnで都市下水は約50~100mg/l,生屎尿(なましによう)7000mg/l程度で,工場廃水の場合は含まれている成分によって大きく変化する。 水の有機物汚染を示す指標には,このほかに生物化学的酸素要求量(BOD。biochemical oxygen demandの略),全酸素要求量(TOD。…
…またpH値が7より小さいか大きいかによって水の酸性・アルカリ性が判定できるので,工場排水の流入や藻類の増殖(pH上昇)を知ることができる。BOD(生物化学的酸素要求量)は水中の好気性微生物の増殖・呼吸により消費される溶存酸素の量で,本来は水系の酸素不足状態判定の指標であるが,日本では生物分解性有機物濃度の間接指標として,水質基準や自浄作用の推定に広く用いられている。COD(化学的酸素要求量)は微生物のかわりに過マンガン酸カリウムKMnO4や重クロム酸カリウムK2Cr2O7によって酸化される物質量を表し,藻類の現存量も評価できるので,湖沼・海域の有機汚染指標となる。…
※「生物化学的酸素要求量」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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