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産業考古学 さんぎょうこうこがく

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

産業考古学
さんぎょうこうこがく

産業に関する遺跡遺物を研究する学問。初めは産業革命の遺跡を対象としたもので,1955年にイギリスの M.リクスが提唱した。その後しだいに対象や時代が拡大した。日本の場合には,江戸時代以来の伝統的な技術の上に,西欧の近代的な技術が導入されて近代化が進められてきたので,そのような視点からの研究も進められている。たとえば,「からくり」の技術が現代の日本の精密な機械技術の発展と関係があることを,遺物などから明らかにしている。産業・技術の記念物への関心が高まり,77年には産業考古学会,84年には日本産業技術史学会が設立された。

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デジタル大辞泉の解説

さんぎょう‐こうこがく〔サンゲフカウコガク〕【産業考古学】

産業史の遺跡・遺物を考古学の実証的方法によって研究する学問。1955年英国のリクス(Michael Rix)が提唱。

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百科事典マイペディアの解説

産業考古学【さんぎょうこうこがく】

産業遺跡(鉱山設備,工場,鉄道など)と産業遺物(機械,道具,製品など)の調査,記録,保存に関する学際的学問。特に産業革命期が重視される。1955年ころ英国で始まって各国に広がり,日本でも1977年産業考古学会が設立された。

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世界大百科事典 第2版の解説

さんぎょうこうこがく【産業考古学 industrial archaeology】

産業革命に関連する遺跡・遺物の考古学的研究を目ざす学問。1963年にイギリスで誕生し,産業革命時代における工場や鉄道などの遺跡・遺物の保存運動を伴って急速に世界に広がったため,学問としての体系化はかなり遅れている。例えば,その対象とする範囲についても,産業革命時代に限定する意見がある一方で,新石器時代の石器材料の採石場から,廃用飛行機や電算機までをも含めようという見解も出されている状況である。しかし産業考古学の誕生は,遺跡・遺物によって過去の文化を研究する学問と定義される考古学が,時代上の下限を議論するための重要なきっかけを提供している。

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大辞林 第三版の解説

さんぎょうこうこがく【産業考古学】

産業上の遺跡・遺物を考古学的に研究する学問。1955年イギリスのリクス(M. Rix1913~1981)が初めて提唱。初めは産業革命の遺跡を対象としたが、次第に対象物も対象時代も拡大した。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

産業考古学
さんぎょうこうこがく
industrial archaeology

現存する産業史の遺跡・遺物、すなわち産業記念物を考古学の実証的方法によって研究する学問。このことばの使用は、1955年にイギリスのバーミンガム大学市民教育部のリクスMichael Rix(1913―81)が『アマチュア・ヒストリアン』誌に発表した「産業考古学」と題する短文で、「産業革命の遺跡の研究」と簡単に定義したときに始まる。そのころよりイギリスでは産業遺跡の全国調査が開始され、地方史研究者に技術者・教育者・一般市民が自主的に協力し、多数の遺跡・遺物が現存地で保存され、野外博物館が建設された。また多数の地方学会が組織され、研究報告の発行、専門誌の刊行も盛んになった。と同時に、研究対象の時代は拡大され、産業考古学に対しても、ハドソンKenneth Hudsonの「過去の産業の物質的遺跡の組織的・秩序的研究」(1962)、レーストリクの「先史時代から現代に至るあらゆる時期に属する産業全般の考古学(実地調査と記録)」(1972)、ブキャナンR. A. Buchanonの「産業記念物を研究・調査・記録し、場合によっては保存することに関する学問」(1972)などの定義が生まれた。
 イギリスに端を発した産業考古学は1970年代に全ヨーロッパ、アメリカ、日本にも波及し、その実証的な考古学的手法が、もっぱら文献に依存していた従来の産業史、とくに技術史の研究において重視されるようになった。
 産業考古学の概念、とくにその研究対象となる時代には異論があっても、産業または技術の記念物保存については天然記念物と同様にどの国もすべて人類史的意義を認める。1973年からはその国際会議が開かれるようになり、日本でも1977年(昭和52)に「産業考古学会」が結成され、地域ごとに研究が進んでいる。
 産業考古学の用語とは別に、産業技術遺産の研究と保存はすでに18世紀末からヨーロッパで行われ、各国における科学技術博物館の設置は大きな役割を果たしてきた。日本では皇室関係の産業遺跡、たとえば伊勢(いせ)神宮農業や出雲(いずも)玉造、軍関係の韮山(にらやま)反射炉、日本刀の和鋼、島津藩の集成館、官営事業の鉄道や通信などの記念物は第二次世界大戦前にすでに保存を実現している。その保存にもっとも関心が集まったのは、技術革新による産業施設類のスクラップ・アンド・ビルド、オートメーションによる道具・機械・装置の消滅、地域開発に伴う施設の破壊が急速に進行してからである。
 最近の傾向としては、大都市の科学博物館に産業遺産を展示するよりも、産業技術は地域の必要に迫られて生まれるものであるので、現場で保存するほうがよい、ということになっている。1970年代から始まったツーリズム・ブームにのって、地方自治体のなかには、企業の協力を得て、観光を含む文化事業の一環として産業遺跡の保存に力を注いでいるところも少なくない。イギリスの産業革命の中心地だったバーミンガムの西北20キロメートルのブラック・カントリーの巨大な野外博物館、さらにその西北20キロメートルのアイアン・ブリッジ渓谷に広がる博物館群は、もっとも有名なものである。
 産業考古学は地域文化の重要な側面を未来に伝承する国際的な住民運動の一つと考えることもできる。したがって自然・環境・景観などの保存運動とも深い関係がある。[山崎俊雄・中山 茂]
『三輪茂雄著『石臼の謎――産業考古学への道』(1977・産業技術センター、技術書院発売) ▽中川浩一編著『産業遺跡を歩く――北関東の産業考古学』(1978・クオリ) ▽黒岩俊郎・玉置正美著『産業考古学入門』(1978・東洋経済新報社) ▽『技術革新の原型を訪ねて』(『週刊朝日百科 世界の歴史・別冊「旅の世界史」9』所収・1992・朝日新聞社) ▽山崎俊雄著『日本技術史・産業考古学研究論』(1997・水曜社) ▽中部産業遺産研究会編『ものづくり再発見――中部の産業遺産探訪』(2000・アグネ技術センター) ▽山崎俊雄・前田清志編『日本の産業遺産 産業考古学研究1』 ▽前田清志・玉川寛治編『日本の産業遺産 産業考古学研究2』(ともに2000・玉川大学出版部)』

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世界大百科事典内の産業考古学の言及

【考古学】より

…まず,ヨーロッパ考古学,中国考古学,日本考古学というような地域的な大区分があり,それぞれがまた,時代や文化によって細分されている。このほか,特定の課題や生活分野を取り扱う部門として,環境と人間のかかわり合いを研究する環境考古学,産業革命期を中心とした時代の産業技術を研究する産業考古学,キリスト教関係の建物や遺物を研究するキリスト教考古学,聖書の記述と遺跡・遺物の対比研究を行う聖書考古学,仏教考古学,美術考古学などが成立している。また,特定の方法・技術を駆使して研究を推進する部門として,航空写真の判読を行う航空考古学,潜水して水底の遺跡を調査する水中考古学,過去の技術を実験的に復原して仮説を検証したり,仮説構成のためのデータを得ようとする実験考古学などが成立している。…

【博物館】より

…設置者によって分類することもあり,国立,公立のように公的なものと,私立に分けられるが,私立については財団や社団などの団体が設立したもの,学校や宗教などの法人,会社や個人の設立したものなどがある。さらに,野外の施設を多くもつ野外博物館や路傍博物館など,野外の自然と一体となって自然研究を行うとともに,歴史的な建造物や施設を保存し展示するようなものもあり,最近の産業考古学の成果として,各地に産業遺跡の保存が進められ,それらの遺跡と併せて,野外博物館が整備されているものも多い。日本でも,歴史的な鉱山や炭鉱などの坑道や施設の保存が進められ,博物館施設として整備されているものが多い。…

※「産業考古学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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