改訂新版 世界大百科事典 「白川家」の意味・わかりやすい解説
白川家 (しらかわけ)
花山天皇より出た源氏。代々神祇伯(神祇官の長官)に任ぜられて明治維新に及んだので,伯家ともいう。また神祇伯に任ぜられると某王と称することを許され,その女は女王と称した特異な家である。伯家が王を称することを許された理由は,朝儀において王を称するものが必要であったからである。たとえば,天皇の伊勢神宮への奉幣は王が使者となり,天皇即位礼のとき,高御座(たかみくら)の御帳を褰(かか)げる2人の女性のうち,1人は女王であることなどがそれである。ところが皇親賜姓の盛行と,法親王制が起こってより,諸王の数が激減し,伊勢使王や褰帳(けんちよう)女王にもこと欠くに至った。これが伯家に王を称することが許された一因であろう。神祇伯は宮中祭祀のみならず,全国の神社を統轄するが,古くから神事をつかさどる氏族で伯家に次ぐ神祇大副(神祇官の次官)を世襲した卜部氏吉田家の兼俱(1435-1511)が唯一神道を創始し,神祇官領長上を自称して,地方神社をその支配下におくようになったため,白川家は振るわなくなった。そこで江戸時代に入って,吉田家に対抗して自家の独自の神道説を地方神社に広め伯家神道(はつけしんとう)と称するに至った。しかししょせんそれは吉田神道に及ばなかった。明治維新後,王と称することは止められ,資長のときに伯爵を授けられた。
執筆者:今江 広道
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報