内閣府(旧経済企画庁)が毎年夏発表する、前年の日本経済の動向に関する分析と問題点指摘の報告書のこと。2001年(平成13)の省庁再編時以前には、旧経済企画庁が担当しており、正式には、『年次経済報告』といい、一般的には『経済白書』として広く知られてきた。2001年度以降、省庁再編により発足した内閣府が担当しており、財政の現状分析と問題点の指摘が加えられて、正式名も『年次経済財政報告』に変更され、その通称も『経済財政白書』となった。このように変更されたのは、内閣府が『経済財政白書』を発表する主要な目的が、省庁再編で内閣府に新設された経済財政諮問会議の議論や提言を支えることにあり、そのためには日本経済の経済分析だけでなく財政に関する経済分析も不可欠だと考えられたからである。
旧経済白書の発表は、1946年(昭和21)8月に発足した経済安定本部(経済企画庁の前身)が、翌年7月発表した『経済実相報告――経済緊急対策』に始まる。長官和田博雄(ひろお)のもと、都留重人(つるしげと)らが編集執筆をしたが、従来の政策が「知らしむべからず、由(よ)らしむべし」であったのを排して、経済危機の実体を客観的かつ率直に国民の前に明らかにし、経済緊急対策の必要性を訴えた。これが好評を得て、以後毎年報告書が発表されることになり、1951年度から『年次経済報告』と表題が固定した。各種の白書中もっとも古いものであると同時に、大来(おおきた)佐武郎、後藤誉之助(よのすけ)、向坂(さきさか)正男、宍戸寿雄(ししどとしお)、金森久雄、宮崎勇、高橋毅夫(たけお)等々、有能な官庁エコノミストが編集執筆にあたったことで、その水準が権威づけられている。しかし当初は、国民にわかりやすい説明であったものが、しだいに高度な理論的および実証的分析を用いて内容が難解になってきている。その一方で、このことは官庁エコノミストの経済分析力のレベルの高さを端的に示している。
[一杉哲也・羽田 亨]
『経済企画庁編『現代日本経済の展開――経済企画庁30年史』(1976・大蔵省印刷局)』▽『三橋規宏・内田茂男・池田吉紀著『ゼミナール日本経済入門』改訂版(2008・日本経済新聞出版社)』▽『日本経済新聞社編『Q&A日本経済100の常識』各年版(日本経済新聞出版社)』
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