白色革命(読み)はくしょくかくめい(その他表記)Inqilāb-i Sefīd

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「白色革命」の意味・わかりやすい解説

白色革命
はくしょくかくめい
Inqilāb-i Sefīd

1963年国民投票によって承認されたイラン国王の側からの改革。「国王と国民の革命」Inqilāb-i Shāh o Millatともいう。1950年代イランは政治的に不安定であったが,ムハンマド・レザー・シャーは 1960年代初めに国王中心型の権力確立を目指して,1961~63年に議会を解散させみずからの大権で改革を準備した。1963年1月,次の 6項目からなる「白色革命」を国民投票にかけた。すなわち (1) 農地改革,(2) 森林,牧草地の国有化,(3) 国有工場の払い下げ,(4) 工場労働者に対する企業の利益配分,(5) 女性参政権,(6) セパーエ・ダーニシ創設であり,特に (1) に重点がおかれた。1965年までに (7) 保健部隊,(8) 開発部隊,(9) 村落裁判所の設置が加えられて,農地改革以後の農村の改造を目指した。1967年10月さらに,(10) 水資源国有化,(11) 都市と地方の再開発,(12) 行政・教育改革が追加された。これら「十二大改革」は低開発水準から急速な社会経済,文化の改革を目指した措置で,1960年代後半からの経済の高度成長に支えられて実施された。他方,この改革は大きな社会,経済のひずみをもたらし,その是正のため,1975年8月 (13) 私企業株式の一般公開,(14) インフレーション抑止,が勅令として発布された。12月7日 (15) 教育の無料化を,12月23日 (16) 幼児への無料給食,(17) 保険制度拡充,を追加したが,イラン革命でこれらは解消した。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「白色革命」の解説

白色革命(はくしょくかくめい)
Enqelāb-e Sefīd

イランのパフラヴィー2世による広範な近代化・西洋化プログラムの総称。1961年に議会を停止した王は,土地改革,森林国有化,国有工場の払い下げと労働者への利潤配分,労使関係規定,女性参政権実施,識字部隊の創設などからなる改革を断行し,イランの社会・経済構造の改革に成果をあげた。しかし,宗教勢力などによる不満は,のちのイラン革命の素地となった。

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旺文社世界史事典 三訂版 「白色革命」の解説

白色革命
はくしょくかくめい

イランのムハンマドレザー=パフレヴィー2世が1963年以後強行した,上からの近代化政策
アメリカの支援のもと,農地改革・工業化・労働者の待遇改善・女性参政権・教育の向上などの西欧化を進めたが,急激な改革による混乱貧富の差の増大による不満の蓄積によってイラン革命が勃発。パフレヴィー2世は亡命した。

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世界大百科事典(旧版)内の白色革命の言及

【イラン】より

…それはイランをめぐる英ソの勢力均衡を巧みに利用したものであった。 第2次大戦後,モハンマド・レザー・パフラビーは,イランをめぐる冷戦体制のもとで,アメリカとの結びつきを強め,イランの近代国家への脱皮が主権国家への道であることを旗印に,1963年以降白色革命とよばれる上からの強引な〈近代化〉政策を推進する。70年代以降は,増大する石油収入に自信を深め,国王主導型路線を邁進し,これを保証するサバクSAVAKをはじめとする膨大な抑圧機構をつくりあげる。…

【パフラビー朝】より

…57年治安機構(SAVAK)を設立,58年パフラビー財団を創設して社会事業も始めた。60年ファラハ王妃との間に皇太子が誕生,63年白色革命が国民投票で承認された。しかし70年代後半には,石油ブームが特権層のみを潤す形となり,国民各層に広範な経済的不満が広がり,78年これらは反国王デモに結集され,ついにイラン革命で国王は79年1月国外に脱出。…

【モハンマド・レザー・パフラビー】より

…こののち,秘密警察(SAVAK)を設けて反国王運動を弾圧した。62年,農地改革令を発し,63年以降〈白色革命〉を推進して,国王独裁体制を完成した。しかし,70年代後半から経済政策が破綻し,国王独裁体制に反対する広範な勢力を結集したイラン革命が起こると,79年1月イランを逃れ,80年エジプトで病死した。…

※「白色革命」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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