家庭医学館 「百日ぜき」の解説
ひゃくにちかぜ【百日ぜき Pertussis, Whooping Cough】
百日ぜき菌の飛沫感染(ひまつかんせん)(会話や、せきといっしょに飛ばすしぶき)でおこります。
特有なせきの発作がおこったり、おさまったりを長期間くり返します。
●かかりやすい年齢
かかりやすいのは3歳以下の乳幼児で、母親から免疫(めんえき)を受け継がないので、新生児でもかかることがあります。
一度かかれば終生免疫ができ、二度とかかることはありません。
●流行する季節
夏に多い傾向ですが、1年中みられます。予防接種が普及し、近年は、少なくなりました。
[症状]
潜伏期は1~2週間です。初め、せきが出るだけです。熱はなく、たんも少ないのに、せきがしだいに増加し、とくに夜間に多くなります。この時期をカタル期といい、1~2週間続きます。
そのうちに、特有なせきの出る発作期に入ります。こんこんと短い爆発的なせきが10~15回連続しておこり、子どもは息も吸えずに苦しみます。顔が赤くなり、目は充血し、くちびるは紫色になり、嘔吐(おうと)をすることもあります。夜中にこのせき発作(ほっさ)がおこると、起き上がり、前かがみになって苦しみます。
このようなせきのあと、1回ひゅーっと深く息を吸い込みます。これを俗に「内へひく」といいますが、正式にはレプリーゼといいます。
大きな子どもは、このせき発作を数回くり返した後に、粘った透明なたんを出して、健康な状態にもどりますが、乳児は、「内へひく」現象はおこらず、呼吸が止まったり、けいれんがおこったりします。
1回のせき発作は2~3分ですが、1日に数十回おこることもあって、夜間に頻発するので睡眠不足になります。発作のないときは健康時と変わりありません。
せき発作が激しいのは、初めの2~3週間で、後は激しさも回数もしだいに減少して治ります。
●合併症
肺炎(はいえん)や中耳炎(ちゅうじえん)を併発することがあります。
[治療]
抗生物質や、気管を拡張してたんを出やすくする薬を用います。乳児で呼吸困難や合併症をおこしたときは、入院治療が必要になることもあります。
●家庭看護のポイント
食事、泣くなど、ちょっとした気分の変化や気道(きどう)の変化でせき発作がおこるので、環境や食事に注意してください。
せきだけで、合併症がなければ、寝かせておく必要はありません。他の子どもに感染させる危険がなければ、新鮮な空気の戸外で遊ばせます。
おなかいっぱい食べるとせきがでやすいので、栄養のあるものを少量ずつ何回にも分けて与えます。
熱は出ないのがふつうです。発熱したときは、合併症をおこした疑いがあるので、医師に報告しましょう。
[予防]
学童は、せきがでなくなるまで学校を休ませます。百日ぜきは学校伝染病(がっこうでんせんびょう)なので、出校停止扱いで欠席にはなりません。
予防接種(予防接種とはの「予防接種の種類」)が有効です。