真珠庵(読み)しんじゆあん

日本歴史地名大系 「真珠庵」の解説

真珠庵
しんじゆあん

大徳寺の塔頭境内北東端にある。一休宗純没(文明一三年)後、延徳三年(一四九一)に一休帰依者のさかい(現大阪府堺市)の豪商尾和宗臨らによって一休の塔所として創建された(同年二月二七日「大徳寺塔頭敷地文書」大徳寺文書)。現在の建物はいずれも江戸初期のもので、方丈は寛永一五年(一六三八)の建築。方丈背後の通僊つうせん院は単層・入母屋造・柿葺の書院で、もと正親町天皇の女御の化粧殿を移したものと伝えられ、これも同一五年の建築。

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改訂新版 世界大百科事典 「真珠庵」の意味・わかりやすい解説

真珠庵 (しんじゅあん)

京都市北区にある臨済宗大徳寺の塔頭(たつちゆう)。開山一休宗純。その寂後10年目の1491年(延徳3)に完成。造立経費は大徳寺再建を援助した堺の貿易商尾和宗臨(おわそうりん)(?-1501)はじめ,数寄者村田珠光,連歌師宗長などの寄進。現在の建物は江戸初期の再建である。庫裏(1609),方丈(1638),二畳台目茶室庭玉軒を備える通僊院(1638),方丈安置の一休和尚座像は重要文化財。襖絵は《真山水図》《花鳥図》《草山水図》が伝曾我蛇足筆,《商山四皓図》《蜆子猪頭図》が伝長谷川等伯筆で,絵画の《百鬼夜行図》《竹石白鶴図》《苦行釈迦像》《達磨像》《臨済和尚像》《白衣観音像》《六祖大鑑禅師像》《観音像》《山水図》《十一面観音像》および《一休宗純像》(4幅)とともに重要文化財。書跡は〈大灯国師墨蹟〉が国宝で,〈一休和尚自筆法灯再興書状〉〈南浦紹明墨蹟〉〈一休宗純墨蹟〉が重要文化財。なお境内には茶人村田珠光,能楽観世流の祖観世清次の墓がある。
大徳寺
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百科事典マイペディア 「真珠庵」の意味・わかりやすい解説

真珠庵【しんじゅあん】

京都市北区紫野にある大徳寺の塔頭(たっちゅう)の一つで,堺の尾和宗臨が一休の徳をしのんで死後創立したもの。曾我蛇足(じゃそく)筆の襖絵(ふすまえ)のある方丈,東福門院旧殿を移築したといわれる書院通僊院,大徳寺内で最も古い庫裏(くり)などがあり,また大灯国師や一休の墨跡などすぐれた書画が多い。通僊院には金森宗和好みと伝える二畳台目中柱の茶席庭玉軒があり,雪深い飛騨高山の防寒法をとり入れた内蹲踞(つくばい)で有名である。
→関連項目曾我派太祇百鬼夜行

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「真珠庵」の意味・わかりやすい解説

真珠庵
しんじゅあん

京都市北区にある臨済宗大徳寺の塔頭。堺の豪商尾和宗臨が一休宗純の塔所として延徳3 (1491) 年に創建したもの。現存する建物のうち,方丈,庫裏,通僊院 (つうせんいん) は重要文化財に指定され,庭園とともに史跡名勝。方丈の東庭は室町時代の作であり,南北に細長く,南から七,五,三,の石を配置していることから「七五三の庭」と呼ばれる。寺宝として国宝の大燈国師 (→妙超 ) 墨跡をはじめ,方丈襖絵,伝蛇足筆紙本著色苦行釈迦像,墨渓筆紙本墨画達磨像,伝蛇足筆紙本臨済和尚像,一休宗純和尚坐像,一休宗純像,木造一休和尚坐像,一休宗純墨跡などの重要文化財を擁する。境内には村田珠光,観阿弥清次,世阿弥元清などの墓もある。

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世界大百科事典(旧版)内の真珠庵の言及

【曾我蛇足】より

…室町時代の画家の名とされるが,諸説があり不明な点が多い。現行の説で有力なものは,(1)蛇足軒は大徳寺真珠庵客殿の《山水花鳥図襖》あるいは群馬県立近代美術館蔵の《山水図》などを描いた夫泉宗丈(ふうせんそうじよう)(曾我派第2代,別号赤蠅)の軒号であり,確かに存在した名前である,(2)蛇足は江戸時代以降の文献にのみ見られる名前であり,真珠庵創建当時の画人の名としては確認できないので,後世混入の訛伝にほかならない,の2説がある。さらに最近は,(3)蛇足は墨渓以後の曾我派が代々用いた軒号であり,確かに存在した名前ではあるが一人の人物に確定することはできない,とする説も出されている。…

【大徳寺】より

…庫裏の北にある大仙院の本堂(1513,国宝)は山内塔頭のうち最古で,大灯国師墨蹟(1330,国宝)などを蔵する。真珠庵には曾我蛇足筆といわれる《山水図》《花鳥図》(ともに室町時代,重要文化財)が,聚光(じゆこう)院には狩野永徳筆とされる《花鳥図》などの方丈障壁画(国宝)がある。伽藍の南にある竜源院の本堂(重要文化財)は大仙院本堂に次ぐ古さで,黄梅院の庫裏(1589,重要文化財)は年代の判明する禅宗塔頭庫裏では最古の遺構であり,また同時期の方丈(1588,重要文化財)とそろって残る例として珍しい。…

※「真珠庵」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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