百鬼夜行(読み)ヒャッキヤコウ

デジタル大辞泉 「百鬼夜行」の意味・読み・例文・類語

ひゃっき‐やこう〔ヒヤクキヤカウ〕【百鬼夜行】

いろいろの化け物夜中に列をなして出歩くこと。ひゃっきやぎょう。
得体の知れない人々が奇怪な振る舞いをすること。ひゃっきやぎょう。「百鬼夜行の政財界」

ひゃっき‐やぎょう〔ヒヤクキヤギヤウ〕【百鬼夜行】

ひゃっきやこう(百鬼夜行)

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精選版 日本国語大辞典 「百鬼夜行」の意味・読み・例文・類語

ひゃっき‐やぎょうヒャクキヤギャウ【百鬼夜行】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 種々の妖怪が列をなして夜歩くこと。ひゃっきやこう。
    1. [初出の実例]「この九条殿は百鬼夜行にあはせたまへるは」(出典:大鏡(12C前)三)
  3. 多くの人々が徒党を組んで、奇怪な行動をすること。
    1. [初出の実例]「喧𠵅買百鬼夜行と肩で風」(出典:雑俳・俳諧觿‐二九(1828))

ひゃっき‐やこうヒャクキヤカウ【百鬼夜行】

  1. 〘 名詞 〙ひゃっきやぎょう(百鬼夜行)
    1. [初出の実例]「或は浴衣の脛も股もあらはに百鬼夜行(ひゃっキヤカウ)といふ体裁で」(出典:欧米印象記(1910)〈中村春雨〉太平洋航海日記)

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四字熟語を知る辞典 「百鬼夜行」の解説

百鬼夜行

いろいろな妖怪が夜にひしめき歩くこと。転じて、多くの悪人や怪しい者が勝手気ままにふるまうこと。

[活用] ―する。

[使用例] 宇宙は永久に怪異ちている。あらゆる科学の書物百鬼夜行絵巻物である。それをひもといてその怪異にせんりつする心持ちがなくなれば、もう科学は死んでしまうのである[寺田寅彦*化物の進化|1929]

[使用例] 明治維新の大きな破壊の中からあらわれて来た仮装者の多くは、彼にとっては百鬼夜行の行列を見るごときものであった[島崎藤村夜明け前|1932~35]

[使用例] あなたもそろそろ、眼が見えなくなって来たようだから、それだけ、あなたのなかに住んでいる、いろいろな化物は、横行し出すはずよ。つまり百鬼夜行ですよね[円地文子*花食いうば|1974]

[解説] 「今の国会は百鬼夜行だ」「百鬼夜行の世の中」というように、魑魅魍魎(得体の知れない人々。)がはびこって、醜い行いをすることを言います。もとは、妖怪どもが夜にぞろぞろ行進することを言いました。
 おんみょうどう(日本で発達した占いの考え方)では、百鬼夜行のある夜には外出を控えたといいます。夜に妖怪が行進するということは、陰陽道だけでなく、民間でも広く信じられていました。
 「百鬼夜行」は「ひゃっきやぎょう」とも読まれます。室町末期~近世初期の辞書を見ると「~やぎょう」と書いてあるものが多いので、古くはこの読みだったかもしれません。ただし、同時期に「~やこう」とする辞書もあります。
 現代では、「ひゃっきやこう」とする国語辞典多数派です。どちらでも意味に差がない以上、「夜行列車」などと読みが同じで理解しやすい「~やこう」のほうが広まったのは自然な流れです。

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百科事典マイペディア 「百鬼夜行」の意味・わかりやすい解説

百鬼夜行【ひゃっきやぎょう】

夜,さまざまな怪異のものが列をなして練り歩くこと。《江談抄》で小野篁藤原高藤〔838-900〕がこれに出会ったとされるのが早く,《今昔物語集》巻14-42ほかの藤原常行〔876-915〕が出会った話,《大鏡》ほかの藤原師輔〔908-960〕の話などの例が伝えられる。これらはいずれも大内裏の南辺に出ており,《尊勝陀羅尼》の効験で難を免れている。また《宇治拾遺物語》17は修行僧が摂津国の古寺で〈百人ばかりのあさましき物ども〉と遭遇する話で,目録はこれを〈百鬼夜行に逢ふ〉としている。なお著名な真珠庵本の《百鬼夜行絵巻》は,実際は造られて100年近くなった道具類の霊である付喪神(つくもがみ)を描いたもので,百鬼夜行図には該当しない。

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世界大百科事典(旧版)内の百鬼夜行の言及

【鬼】より

…鬼が出現する場所や時刻は一定していないが,町や村里のはずれの辻や橋や門など異界(他界)との接点に現れる傾向があり,時刻は夕方から夜明けまでの夜の間とする考えが広く認められている。鬼などの妖怪たちが列をなして夜行することを意味する〈百鬼夜行〉という語は,鬼の夜行性をよく示している。 地獄の獄卒である鬼や天神となった菅原道真の霊に支配される雷神として鬼が,どのような経過を経て鬼になったかは明らかでないが,日本の鬼は,人間や神とまったく切り離された別個の存在として想像されたものではなく,互いに変換しうるものとして考えられていた。…

【百物語】より

…たそがれ時を期し,まず一座中に灯を百ともし,こわい話を一つずつしていくたびに一つずつ灯を消していき,丑(うし)三つ(今の午前2時~2時半)ころにおよんで百の灯をみな消したときに,必ず怪異が現れるといい伝えられた。ことに文化・文政期(1804‐30)に至って,とくに狂歌師仲間で百物語の狂歌を一夜一ヵ所に集まって詠むことが流行し,《狂歌百鬼夜行》《百鬼夜楽》などの類が刊行された。その源流は室町時代に現れた〈百鬼夜行〉で,とくに江戸時代に入ってから,武士階級の間に練胆の会として行われ,また怪談が流行して,中国の怪談が輸入され,多くの絵画や読物が刊行された。…

※「百鬼夜行」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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