曾我蛇足(読み)そがだそく

精選版 日本国語大辞典 「曾我蛇足」の意味・読み・例文・類語

そが‐だそく【曾我蛇足】

  1. ( 「そがじゃそく」とも ) 室町中・後期の画家大徳寺真珠庵に伝称作品として「山水花鳥襖絵」があり、大徳寺と関係のあった画家といわれる。その襖絵は、直線的な筆刷を用いた勁直な画風で独特な個性を示し、後世影響を与えた。一説に、蛇足とは墨渓以後の曾我派代々軒号という。生没年未詳。

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改訂新版 世界大百科事典 「曾我蛇足」の意味・わかりやすい解説

曾我蛇足 (そがじゃそく)

室町時代の画家の名とされるが,諸説があり不明な点が多い。現行の説で有力なものは,(1)蛇足軒は大徳寺真珠庵客殿の《山水花鳥図襖》あるいは群馬県立近代美術館蔵の《山水図》などを描いた夫泉宗丈(ふうせんそうじよう)(曾我派第2代,別号赤蠅)の軒号であり,確かに存在した名前である,(2)蛇足は江戸時代以降の文献にのみ見られる名前であり,真珠庵創建当時の画人の名としては確認できないので,後世混入の訛伝ほかならない,の2説がある。さらに最近は,(3)蛇足は墨渓以後の曾我派が代々用いた軒号であり,確かに存在した名前ではあるが一人の人物に確定することはできない,とする説も出されている。以上の事情にかかわらず,真珠庵の襖を描いた画家は厳然として存在するので,ここではこれを夫泉宗丈とし,その通称として〈蛇足〉を採る。宗丈は墨渓の子。父同様に一休に参禅し,その禅風の影響を強くうけた。墨渓や一休の高弟である墨斎らとともに,一休の肖像制作やその関係の画事,障屛画の制作等にたずさわったが,特に真珠庵創建に際し,その襖絵を描いて曾我派の画風をきわめた。その後も真珠庵に出入りした形跡があり,一時期は真珠庵に住んだと推定される。余白を生かし枯淡で蕭条とした画境は一休禅の影響もあるが,曾我派が周文流の山水画から受け継いだ中世的な余白の精神を自ら深めていった成果であり,日本の水墨画史の上でも特筆に値しよう。宗丈の作品は上記のほかに《苦行釈迦図》《潑墨山水図屛風》(ともに真珠庵)などがある。
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百科事典マイペディア 「曾我蛇足」の意味・わかりやすい解説

曾我蛇足【そがじゃそく】

〈だそく〉とも読む。室町時代の画家。生没年不詳。1491年大徳寺真珠庵の襖(ふすま)に山水・花鳥を描き,その味わいある山水図は室町末期に周文様式の限界を乗り越えたものとして重視される。蛇足については不明の点が多く,代々の曾我派の画家が名乗った別号とする説などがある。
→関連項目曾我蕭白

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朝日日本歴史人物事典 「曾我蛇足」の解説

曾我蛇足

生年:生没年不詳
室町時代の曾我派を代表する画家。「だそく」とも呼ぶ。その実体は不明な点が多い。現存する禅宗寺院の障壁画中最古のものとして著名な大徳寺塔頭真珠庵襖絵(1491頃)は曾我蛇足筆という伝承があり,蛇足の研究は専らこの襖絵の筆者論を軸として議論されてきた。曾我派の始祖と思われる墨渓の子,夫泉宗丈を当てる説が有力だが,確証はない。ただし「山水図」(群馬県立近代美術館蔵)など,「赤蠅」印を押す数点の作品が真珠庵画と同一筆者であることは,様式の近親性によって確実である。「蛇足」は曾我派の画家の世襲号であるとする説もあるが,同時代史料には見出せず,結論は出ていない。<参考文献>『障壁画全集』8巻,『日本美術絵画全集』3巻

(山下裕二)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「曾我蛇足」の意味・わかりやすい解説

曾我蛇足
そがじゃそく

室町時代の画家。大徳寺の真珠庵襖絵『花鳥図』『山水図』 (1491) の伝説的作者。一休宗純と真珠庵をめぐる曾我派の画家のなかで,蛇足と最も年代が近いのは夫泉宗丈とされている。画風は「赤蠅」印の作者に近いが経歴は不明。静かな画面で,大きな余白のなかに深い奥行と四季の推移がみごとに統一され,年代,場所の近い養徳院の宗継の襖絵とは好対照であり,室町時代水墨画の一つの頂点を示す。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「曾我蛇足」の解説

曾我蛇足 そが-じゃそく

?-? 室町時代の画僧。
曾我派2代夫泉宗丈(ふせん-そうじょう)の別号。延徳3年(1491)創建の大徳寺真珠庵の襖絵(ふすまえ)をかいた。蛇足の号は桃林安栄(兵部墨渓(ひょうぶ-ぼっけい)),曾我紹仙ももちいていたと推測される。個人の名ではなく,流派の世襲号とする説もある。号は「だそく」ともよむ。

曾我蛇足 そが-だそく

そが-じゃそく

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