読書などのように眼を持続的に使うと、眼の疲労感、眼の重圧感だけでなく、全身にも疲労、頭痛、肩こり、吐き気などが起こることがありますが、これを一般的に眼精疲労といいます。
眼精疲労の原因は、実にさまざまなものが考えられています。原因を特定することが難しい場合が多く、原因と考えられるものを一つ一つ除外して追及していきます。
眼精疲労の原因は、大きく4つに分けて考えられています。①眼に原因があるもの、②全身に原因があるもの、③精神的なもの、④環境的なもの、です。
①眼に原因があるもの
a.屈折異常によるもの
遠視、近視、乱視などの屈折異常が原因で起こる眼精疲労が最も多いようです。いずれも、物が適正に見えないために、それを無理に調節して見ようとして、眼を無理に働かせるために眼精疲労が発生します。
遠視の場合は、調節力が低下し始める30代後半~40代にかけて起こりやすいのですが、20代でも起こります。
老視の起こり始めには、遠視でなくても眼精疲労になることがあります。この場合は、小さな字でもすらすらと読めるので、本人は老視のための眼精疲労とはわかりません。
近視の場合は、眼鏡屋さんで近視の眼鏡をつくる時に、遠方がより見えるレンズを自分で選び、そのために眼精疲労を訴える患者さんを時々みかけます。遠くがよく見える眼鏡が必ずしもよいわけではないので、眼科で適正な眼鏡の処方をしてもらいましょう。
b.
斜視とは、片眼は眼の中心にあるのに他眼が中心からずれているため、両眼で同時に見えない状態です。一方、ふだんは両眼視できても、片眼を手で隠すなどすると眼の位置がずれる状態を
斜視が固定していて両眼視ができていない場合は、かえって眼精疲労は起こりませんが、斜位などの場合は両眼視をしようと努力するために眼精疲労が現れやすくなります。水平方向の眼位(眼の位置)の異常よりも、
c.
両眼の屈折値の差が大きい時、つまり、レンズの度が左右で相当違う時などは、左右の眼に感じる映像の大きさが異なるので眼精疲労が起こります。この場合はコンタクトレンズにすると眼精疲労は起こりにくいようです。
d.その他の眼の病気によるもの
さかさまつ毛、結膜炎、角膜炎などによっても起こります。最近では眼精疲労の原因として、ドライアイが重要視されています。
②全身に原因があるもの
全身疾患によっても眼精疲労が起こります。高血圧、低血圧、糖尿病、バセドウ病、貧血、自律神経失調症、月経異常など、さまざまな病気で眼精疲労が発生します。
③精神的なもの
職場での不適合、心身症、神経症なども眼精疲労の一因となります。
④環境的なもの
紫外線や赤外線、過度の照明などの光刺激によるものがありますが、近年注目されているのがVDT作業による眼精疲労で、VDT症候群と呼ばれています。
また、機械的刺激によるものとしてクーラーの風やごみなどがあります。化学的刺激としては、ガスや有機溶剤によるものがあり、最近は新築の家などで起こるシックハウス症候群(コラム)が注目されています。
最初は眼が重い感じがしますが、眼が痛くなり、じんじんし、かすんできたり、まぶしくなったり、眼が赤くなったり、涙が出たりします。
全身的には頭痛、肩こり、吐き気などが起こります。
視力、視野、眼圧、
眼に原因がないと考えられる時は、全身検査を含めて前記した原因を精密検査します。
眼精疲労の的確な治療はその原因によってまったく異なるので、原因追及が最も重要です。
眼精疲労の原因が前記の精神的なもの、環境的なものと予想がついた時は、自分でそれをまず除外してください。そうでない時は、まず眼科医、その後に内科医の診察を受けるようにしましょう。
大西 克尚
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
従来、目を使っているとき、正常ならば疲れない程度の仕事で疲れる状態が眼精疲労とよばれてきた。しかし、こうした目が疲れるという状況を考えてみると、目に異常があるとき、体が疲れているとき、環境とくに照明環境が不適正なときに目を使えば、疲れるのは当然である。目の異常としては、近視、遠視、老視などの矯正が正しく行われていないとき、斜視、斜位、輻輳(ふくそう)異常があるとき、結膜炎や角膜炎、さらにある種の緑内障などがあるときで、こんなときに目を使って疲れるというのは当然であり、これらの異常に対する症状の一つである。また、体調を整え、照明環境を正しくすれば、疲れがとれるはずである。したがって、眼精疲労とはこうしたいろいろな原因を除いてもなお残る目の疲れということになる。このような眼精疲労の患者の訴えは、単に目が疲れるというだけでなく、眼瞼(がんけん)(まぶた)が開けられない、人と目をあわせることができない、朝からすぐ目が疲れるといったものが多く、さらに吐き気、嘔吐(おうと)などがみられることもある。つまり、このような意味での眼精疲労は、心身症あるいは体質的なものと考えることができる。体質としては、低血圧や胃下垂などを伴っている循環無力性体質によくみられる。
[松井瑞夫]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
眼を使う仕事をするとき,普通の人では疲れない程度でも容易に疲れて,眼の痛み,かすみ,充血,流涙のほか,全身的に頭痛,肩こり,吐き気などをおこす状態。眼を休めるとともに,眼に合った眼鏡をかけるようにする。
執筆者:丸尾 敏夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…通常,肉体疲労は発生しやすいが回復も早いのに対し,精神(神経)疲労は発生しにくいかわりに回復は遅いと考えられている。視覚器官の過度の使用によって生ずる眼精疲労は,この両者の中間にある疲労である。
[疲労によって生ずる生体反応]
疲労を,人間をとりまく外環境と生体のホメオスタシスの維持,すなわち生体防衛の一般現象としてとらえる立場から,疲労の発生メカニズムについて,いくつかの説がある。…
※「眼精疲労」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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