眼精疲労(読み)ガンセイヒロウ(その他表記)Asthenopia (Eye strain)

デジタル大辞泉 「眼精疲労」の意味・読み・例文・類語

がんせい‐ひろう〔‐ヒラウ〕【眼精疲労】

物を見ていると、目が疲れて痛くなり、物がかすんだり二重に見えたり、頭痛悪心おしん嘔吐おうとなどを起こしたりする状態

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精選版 日本国語大辞典 「眼精疲労」の意味・読み・例文・類語

がんせい‐ひろう‥ヒラウ【眼精疲労】

  1. 〘 名詞 〙 物を見ていて目や頭が痛くなったり、頭が重くなったり、吐きけをもよおしたりしてくる状態。
    1. [初出の実例]「夜更しして深酒を飲み、稍(やや)眼精疲労(ガンセイヒラウ)に陥った瞳に」(出典:どぜう地獄(1924)〈岡本一平〉一四)

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六訂版 家庭医学大全科 「眼精疲労」の解説

眼精疲労
がんせいひろう
Asthenopia (Eye strain)
(眼の病気)

どんな病気か

 読書などのように眼を持続的に使うと、眼の疲労感、眼の重圧感だけでなく、全身にも疲労、頭痛、肩こり吐き気などが起こることがありますが、これを一般的に眼精疲労といいます。

原因は何か

 眼精疲労の原因は、実にさまざまなものが考えられています。原因を特定することが難しい場合が多く、原因と考えられるものを一つ一つ除外して追及していきます。

 眼精疲労の原因は、大きく4つに分けて考えられています。①眼に原因があるもの、②全身に原因があるもの、③精神的なもの、④環境的なもの、です。

①眼に原因があるもの

a.屈折異常によるもの

 遠視近視乱視などの屈折異常が原因で起こる眼精疲労が最も多いようです。いずれも、物が適正に見えないために、それを無理に調節して見ようとして、眼を無理に働かせるために眼精疲労が発生します。

 遠視の場合は、調節力が低下し始める30代後半~40代にかけて起こりやすいのですが、20代でも起こります。

 老視の起こり始めには、遠視でなくても眼精疲労になることがあります。この場合は、小さな字でもすらすらと読めるので、本人は老視のための眼精疲労とはわかりません。

 近視の場合は、眼鏡屋さんで近視の眼鏡をつくる時に、遠方がより見えるレンズを自分で選び、そのために眼精疲労を訴える患者さんを時々みかけます。遠くがよく見える眼鏡が必ずしもよいわけではないので、眼科で適正な眼鏡の処方をしてもらいましょう。

b.斜視(しゃし)などによるもの

 斜視とは、片眼は眼の中心にあるのに他眼が中心からずれているため、両眼で同時に見えない状態です。一方、ふだんは両眼視できても、片眼を手で隠すなどすると眼の位置がずれる状態を斜位(しゃい)といいます。

 斜視が固定していて両眼視ができていない場合は、かえって眼精疲労は起こりませんが、斜位などの場合は両眼視をしようと努力するために眼精疲労が現れやすくなります。水平方向の眼位(眼の位置)の異常よりも、融像(ゆうぞう)左右の眼に映った像をひとつにまとめてみるはたらき)の幅が狭いために上下方向の眼位の異常のほうが眼精疲労を起こしやすくなります。

c.不等像視(ふとうぞうし)によるもの

 両眼の屈折値の差が大きい時、つまり、レンズの度が左右で相当違う時などは、左右の眼に感じる映像の大きさが異なるので眼精疲労が起こります。この場合はコンタクトレンズにすると眼精疲労は起こりにくいようです。

d.その他の眼の病気によるもの

 さかさまつ毛結膜炎角膜炎などによっても起こります。最近では眼精疲労の原因として、ドライアイが重要視されています。

 緑内障(りょくないしょう)も眼精疲労の原因になります。緑内障の初期には調節力が低下してくることがあり、老視が早くきたかと思い違いすることがあります。また、緑内障の一種である慢性閉塞隅角(まんせいへいそくぐうかく)緑内障の場合は、時々、霧がかかったように見えたりして眼精疲労と感じることがあります。

②全身に原因があるもの

 全身疾患によっても眼精疲労が起こります。高血圧低血圧糖尿病バセドウ病貧血自律神経失調症、月経異常など、さまざまな病気で眼精疲労が発生します。

③精神的なもの

 職場での不適合、心身症、神経症なども眼精疲労の一因となります。

④環境的なもの

 紫外線赤外線、過度の照明などの光刺激によるものがありますが、近年注目されているのがVDT作業による眼精疲労で、VDT症候群と呼ばれています。

 また、機械的刺激によるものとしてクーラーの風やごみなどがあります。化学的刺激としては、ガスや有機溶剤によるものがあり、最近は新築の家などで起こるシックハウス症候群(コラム)が注目されています。

症状の現れ方

 最初は眼が重い感じがしますが、眼が痛くなり、じんじんし、かすんできたり、まぶしくなったり、眼が赤くなったり、涙が出たりします。

 全身的には頭痛、肩こり、吐き気などが起こります。

検査と診断

 視力、視野、眼圧、細隙灯(さいげきとう)顕微鏡検査、眼底検査などの眼科の一般検査で前記した原因を除外していきますが、調節検査が最も重要です。

 眼に原因がないと考えられる時は、全身検査を含めて前記した原因を精密検査します。

治療の方法

 眼精疲労の的確な治療はその原因によってまったく異なるので、原因追及が最も重要です。

病気に気づいたらどうする

 眼精疲労の原因が前記の精神的なもの、環境的なものと予想がついた時は、自分でそれをまず除外してください。そうでない時は、まず眼科医、その後に内科医の診察を受けるようにしましょう。

大西 克尚

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家庭医学館 「眼精疲労」の解説

がんせいひろう【眼精疲労 Asthenopia Eye Strain】

[どんな病気か]
 眼精疲労とは、生理的な疲労(眼疲労(がんひろう))ではなく、病的な疲労です。一般に、眼痛、目が重い、目がしぶい、くしゃくしゃする、目が疲れる、ぼやけるといった眼科的な症状だけでなく、頭痛、頭重感(ずじゅうかん)、眼周辺部圧迫感、眩暈(げんうん)(めまい)、肩こり、関節痛、下痢(げり)、便秘、吐(は)き気(け)など、目以外の症状をともないます。
[原因]
 視器(しき)的要因(目の問題)、内的要因(全身の問題)と心因的要因(心の問題)、外的要因(環境の問題)の3つに大きく分けられます。
 視器的要因には、屈折異常(近視(きんし)、遠視(えんし)、乱視(らんし))、眼位異常(斜位(しゃい)など)、不同視(ふどうし)、不等像視(ふとうぞうし)、調節異常(老視(ろうし))のほか、結膜炎(けつまくえん)、角膜炎(かくまくえん)、緑内障(りょくないしょう)などの病気がある場合もあります。
 内的要因・心因的要因には、心疾患、肝機能障害、糖尿病、自律神経失調(じりつしんけいしっちょう)と、女性であれば貧血(ひんけつ)、月経(げっけい)、妊娠などの内的要因のほか、不安神経症、神経衰弱ヒステリーなどの心因的要因があげられます。
 外的要因には、コンピュータワープロなどのVDT作業のほか、照明や空調などが考えられます。
[治療]
 原則として、原因に対する治療がまず行なわれます。たとえば、屈折異常、老視、不同視、不等像視に対しては、適切なめがね、あるいはコンタクトレンズで対処します。すでに使用している場合でも、正しく矯正(きょうせい)されているかチェックする必要があります。
 眼位異常に対しては、その程度により、プリズムめがねや手術で対応します。全身的、心因的な病気がある場合は適切な診療科で治療しましょう。
 そのほかの目の病気に対しては、それぞれの治療を行ないます。環境への対処については「VDT症候群/テクノストレス症候群」を参照してください。
 眼精疲労は病気であり、単に休息をとれば治る眼疲労とは異なります。目を休めることも大事ですが、眼科を受診して適切な治療を受けましょう。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「眼精疲労」の意味・わかりやすい解説

眼精疲労
がんせいひろう

従来、目を使っているとき、正常ならば疲れない程度の仕事で疲れる状態が眼精疲労とよばれてきた。しかし、こうした目が疲れるという状況を考えてみると、目に異常があるとき、体が疲れているとき、環境とくに照明環境が不適正なときに目を使えば、疲れるのは当然である。目の異常としては、近視、遠視、老視などの矯正が正しく行われていないとき、斜視、斜位、輻輳(ふくそう)異常があるとき、結膜炎や角膜炎、さらにある種の緑内障などがあるときで、こんなときに目を使って疲れるというのは当然であり、これらの異常に対する症状の一つである。また、体調を整え、照明環境を正しくすれば、疲れがとれるはずである。したがって、眼精疲労とはこうしたいろいろな原因を除いてもなお残る目の疲れということになる。このような眼精疲労の患者の訴えは、単に目が疲れるというだけでなく、眼瞼(がんけん)(まぶた)が開けられない、人と目をあわせることができない、朝からすぐ目が疲れるといったものが多く、さらに吐き気、嘔吐(おうと)などがみられることもある。つまり、このような意味での眼精疲労は、心身症あるいは体質的なものと考えることができる。体質としては、低血圧や胃下垂などを伴っている循環無力性体質によくみられる。

[松井瑞夫]

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百科事典マイペディア 「眼精疲労」の意味・わかりやすい解説

眼精疲労【がんせいひろう】

目を使う仕事を続ける時,常人よりも疲労しやすく,前額部の圧迫感,頭痛,眼痛,視力減退,複視などを起こし,仕事が続けられなくなる状態。1.遠視,乱視,老視,調節異常などによる調節性眼精疲労,2.眼筋の疲労や障害による筋性眼精疲労,3.結膜炎トラコーマ,眼瞼(がんけん)縁炎などに合併する症状性眼精疲労,4.神経衰弱ヒステリーなどにみられる神経性眼精疲労,などがある。それぞれ原因をただし,それを治療,矯正する。
→関連項目乱視

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改訂新版 世界大百科事典 「眼精疲労」の意味・わかりやすい解説

眼精疲労 (がんせいひろう)
eye strain

眼を使う仕事をするとき,普通の人では疲れない程度でも容易に疲れて,眼の痛み,かすみ,充血,流涙のほか,全身的に頭痛,肩こり,吐き気などをおこす状態。眼を休めるとともに,眼に合った眼鏡をかけるようにする。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「眼精疲労」の意味・わかりやすい解説

眼精疲労
がんせいひろう
asthenopia

眼を使う仕事を続けたとき,健康者ならば異常がない程度の仕事でも容易に疲れ,前額部の圧迫感,頭痛,視力減退,複視,めまい,ときには吐き気や嘔吐も伴う状態をいう。原因別に,調節性 (遠視,乱視,老視の初期,調節衰弱など) ,筋性 (斜視など) ,症候性 (結膜炎,単性緑内障の初期など) ,不等像性 (左右の網膜に写る像の大きさが違う場合) ,神経性 (ノイローゼ,ヒステリーなど) などに分けられる。治療は原因療法に主眼をおくほか,体質,精神状態,環境などの改善も必要である。

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世界大百科事典(旧版)内の眼精疲労の言及

【疲労】より

…通常,肉体疲労は発生しやすいが回復も早いのに対し,精神(神経)疲労は発生しにくいかわりに回復は遅いと考えられている。視覚器官の過度の使用によって生ずる眼精疲労は,この両者の中間にある疲労である。
[疲労によって生ずる生体反応]
 疲労を,人間をとりまく外環境と生体のホメオスタシスの維持,すなわち生体防衛の一般現象としてとらえる立場から,疲労の発生メカニズムについて,いくつかの説がある。…

※「眼精疲労」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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