石鎌(読み)イシガマ

デジタル大辞泉 「石鎌」の意味・読み・例文・類語

いし‐がま【石鎌】

鎌の形をした弥生時代磨製石器。木の柄をつけ、収穫・草刈りに用いたらしい。

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精選版 日本国語大辞典 「石鎌」の意味・読み・例文・類語

いし‐がま【石鎌】

  1. 〘 名詞 〙 彌生時代石器一つ穀物の刈り取りに用いた農具。鎌に似ており、柄をつけて使った。→石包丁

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改訂新版 世界大百科事典 「石鎌」の意味・わかりやすい解説

石鎌 (いしがま)

先史時代および古代農耕社会で用いられた石製の収穫具。その起源はオリエント地方の中石器時代以降にみられ,木や骨で作った柄の側面に溝を彫り,そこへ石刃を植えつけた小麦用の収穫具に求められる。ヨーロッパでは新石器時代後期に湾曲した木柄に石刃を差し込んだ鎌が現れるが,のちに地中海東部先進地域の青銅製の鎌を模した三日月形の石鎌に変化する。中国では石刀と呼び,竜山文化期(約4000年前)にほぼ全土にわたって磨製の石鎌が出現する。刃部が直線をなすものと,内湾するものの二つの形態が認められ,殷代には前者が流行し,漢代に至るまで継続して使われるが,戦国時代には一方で鉄鎌使用が始まる。朝鮮半島では新石器時代の後期に石鎌や植刃鎌の出現がみられ,続く無文土器文化では石鎌は今のところ少なく,鉄器化が始まるとみられている。

 日本では縄文終末期に朝鮮半島から水稲耕作が導入されると共に大陸系の磨製石器各種も取り入れられ,石鎌の使用もこのときから始まった。その形には,刃部が直線のものと内湾するものの二つがあり,長さは10cm前後から20cmくらいまでがふつうの大きさで,まれには30cmを超す長大なものまである。西日本に広く分布するが,その中心は福岡県東部から山口県西部にかけての地域に集中している。弥生時代の中期中ごろには石鎌の使用はしだいにおとろえて,鉄鎌へと移っていった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「石鎌」の意味・わかりやすい解説

石鎌
いしがま

磨製石器の一種。粘板岩頁岩(けつがん)などの水成岩質の岩石を研磨し、現在の鉄製鎌に類似した石器。穀類の穂つみ用具と考えられるが、同用途の石包丁と比較すると、分布圏も狭く、出土例もきわめて少ない。同型の青銅品、鉄製品も弥生(やよい)文化の遺跡で1、2の破片が発見されている。朝鮮半島、中国大陸河南・河北省方面からも類似の磨製石器の発見があり、この型の石器は、弥生文化の時代に大陸から朝鮮半島を経て、青銅製品とともに渡来したが、西北九州の一部で使用されただけであったと考えられる。鎌のように反りのあるものもあり、一端は先がとがり、他端は方形で、端部に近い両側にはえぐり込みがあり、紐(ひも)で柄部へ結び付きやすくしてある。

[江坂輝彌]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「石鎌」の意味・わかりやすい解説

石鎌
いしがま

穀物を刈入れる農具。イランでは中石器時代にフリント製の石刃を細長い骨棒に数個縦列にはめこんだものが出土している。やがてこの技法は,西アジアで興った原始農耕の農具に受継がれ,小麦の収穫などに使われた。一方中国では,新石器時代に粘板岩を鎌形に磨き上げ,内側に刃を施したものが出現する。これは柄をつけて使用したものである。日本でも弥生時代の遺跡から,これに類するものが発見されるが,すべて農具として使われたかは疑問である。というのは刃部が厚く重量もあり,武器としての機能も持合せているからである。

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世界大百科事典(旧版)内の石鎌の言及

【鎌】より

…なぎ鎌を使うと鎌のおよそ5倍の速度で収穫できる反面穂首折れも多く,落穂拾いを必要とする。中国の新石器時代にも石鎌がある。しかし,穂の部分を摘みとる石庖丁が広く使われた。…

【裴李崗文化】より

…第2次調査でアワと思われる炭化穀物が確認され,豚・羊・犬・牛骨,豚や羊の頭部土偶も出土しており,畑作による農耕と家畜飼養が行われていたと考えられる。 生産工具には石鏟(せきさん),石斧,石鑿,石鎌,石庖丁,石磨盤,石磨棒がある。石鏟には扁平磨製の両端が円弧をなす牛舌状と有肩状の2種があるが前者が多い。…

※「石鎌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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