王水(読み)オウスイ

デジタル大辞泉 「王水」の意味・読み・例文・類語

おう‐すい〔ワウ‐〕【王水】

容積が濃硝酸1、濃塩酸3の割合混合液通常の酸では溶けない金や白金などの貴金属をも溶かすのでこの名がある。
[類語]硫酸亜硫酸塩酸硝酸硼酸酒石酸燐酸酢酸炭酸枸櫞くえん乳酸

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精選版 日本国語大辞典 「王水」の意味・読み・例文・類語

おう‐すいワウ‥【王水】

  1. 〘 名詞 〙 濃塩酸と濃硝酸との混合液。ふつう、三対一の割合で混合する。強力な酸化溶解性をもち、通常の酸では溶けない金、白金などの貴金属を溶解するので、この名がある。〔薬品名彙(1873)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「王水」の意味・わかりやすい解説

王水 (おうすい)
aqua regia

濃硝酸と濃塩酸を混合した溶液。ふつうは濃硝酸1容と濃塩酸3容を混合したものをいう。硝酸は強力な酸化剤であり,不働態をつくるアルミニウム,鉄,クロムなどは別としてほとんどの金属を侵すが,金,白金,ロジウムイリジウムなどの貴金属は溶かすことができない。この硝酸だけでは反応しない貴金属もこの溶液には溶解することから,錬金術師によってaqua regia(〈水の王〉の意)と名づけられた。溶液中では次式に示す平衡が成り立っており,生ずる遊離塩素および塩化ニトロシルNOClが有効な触媒となって金属と反応する。

 4H3O⁺+3Cl⁻+NO3⇄NOCl+Cl2+6H2O

また塩化物イオンCl⁻の金属陽イオンに対する複雑な作用も重要である。加熱溶解をする場合は酸が失われていくので,還流冷却器をつけて反応させるほうがよい。また試料と長く反応させる必要がある場合は,水で倍に薄めて使うほうが効率がよい。これを希王水と呼ぶ。一般に王水処理で溶解した溶液は薄めても酸化力が残っているから,硫酸あるいは塩酸を加えながら熱して硝酸を追い出しておいたほうが,次に還元性の試薬を用いる場合などに操作がしやすい。なお,王水は分解しやすいので使用都度つくったほうがよい。硝酸3容と塩酸1容の混液を逆王水という。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「王水」の意味・わかりやすい解説

王水
おうすい
aqua regia

濃硝酸と濃塩酸との混合物通称。普通のどんな酸にも溶けない金や白金のような貴金属をも溶かすのでこの名がある。普通は濃硝酸1容と濃塩酸3容を混合したものであるが、試料を熱するなどの必要がある場合には初めから2倍に薄めて使うこともあり、これを希王水という。また組成を逆にした濃硝酸3容と濃塩酸1容の混合物を逆王水とよび、たとえば黄鉄鉱中の硫黄(いおう)を酸化溶解して硫酸イオンにする場合などに用いられる。

 王水の酸化作用は次の反応の平衡が右へ行くことによって生ずる発生期の塩素と塩化ニトロシルの反応性によるものであるとされている。


一般に王水で処理して溶かすと金属イオンはその金属の最高原子価を示すのであって、たとえば、

のようである。

[中原勝儼]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「王水」の意味・わかりやすい解説

王水
おうすい
aqua regia

濃塩酸に濃硝酸を混ぜた混合物のことで,通常体積比で濃塩酸3に濃硝酸1を混ぜたものをいう。この溶液中には,次の反応で生じる塩素や塩化ニトロシル (赤色) が含まれ,強い酸化作用を呈する。

HNO3+3HCl→Cl2+NOCl+2H2O

王水は単独の硝酸,塩酸に溶けない金,白金などの貴金属を塩化物として溶解させる。また硫化物鉱石やテルル・セレン鉱物,鉛や銅の合金,種々の金属のヒ化物鉱石,亜鉛合金,ニッケル鉱,フェロタングステンなどの分析試料をよく溶解するので,化学分析における分解剤として重要である。

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化学辞典 第2版 「王水」の解説

王水
オウスイ
aqua regia

濃塩酸と濃硝酸とを体積比で3:1にまぜたもの.混合液中には,

HNO3 + 3HCl = Cl2 + NOCl + 2H2O

によってNOClと Cl2 を生じ,強い酸化剤となる.塩酸や硝酸のみでは溶けない金や白金も溶かす.塩酸と硝酸との体積比を1:3とした混合液は逆王水といわれ,黄鉄鉱中の硫黄分を硫酸に酸化する作用がある.王水はあまり安定でないので,使用時に調整する.

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百科事典マイペディア 「王水」の意味・わかりやすい解説

王水【おうすい】

濃塩酸と濃硝酸の混合物。通常は濃塩酸3と濃硝酸1に混合。硝酸では溶解しない金,白金などの貴金属をも溶かすのでこの名がある。強酸化剤。分析化学で溶解剤として使用。濃塩酸1,濃硝酸3の混合物は逆王水という。

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栄養・生化学辞典 「王水」の解説

王水

 硝酸1,塩酸3の比率で混合した混合酸.金や白金などの貴金属を溶解することができる.

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