神の国(アウグスティヌスの著作)(読み)かみのくに(英語表記)De civitate Dei contra paganos libri viginti duo

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

神の国(アウグスティヌスの著作)
かみのくに
De civitate Dei contra paganos libri viginti duo

ローマ時代末期の教父・思想家アウグスティヌスの著作。正式には『異教徒論駁(ろんばく)して神の国について論ずる』と題する。22巻があり、アウグスティヌスの浩瀚(こうかん)な著作のなかでも、『告白録』13巻とともにもっとも著名な代表作の一つである。彼自身もいうように、本書は「大きな、ほねのおれる仕事」であって、410年から426年にわたって執筆されたものである。その間、脱稿するごとに部分的に公刊されていたようである。

 本書執筆の動機としてまずあげられるものに、410年8月24日アラリック王に率いられたゴート人が「永遠の都」ローマを陥落させた大事件と、ローマ帝国に襲いかかったこの禍害キリスト教の責任にしようとする異教徒の非難・攻撃があった。これらに対して、アウグスティヌスは「神の家に対する熱心に燃え立ち」キリスト教の真理を擁護し、地上において巡礼しつつ、ついに勝利の栄光に輝く神の国(都)について、歴史神学的、哲学的な視点から壮大な論考を企図し、実現したのである。本書は、護民官を務めた敬虔(けいけん)なキリスト者であり、殉教したマルケリヌスに献呈されている。本当に善き、あるべき国は信仰基礎のうえに建てられるべきであるという、彼の年来主張も本書構想の背景にあることは、マルケリヌスあての手紙などによって知られる。

[中沢宣夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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