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神の存在証明 カミノソンザイショウメイ

百科事典マイペディアの解説

神の存在証明【かみのそんざいしょうめい】

信仰を理性によって根拠づけるための努力で,キリスト教学,哲学の主題の一つ。完全な存在としてのの概念からその存在を推論する本体論的(存在論的)証明,自然の運動からその原因としての神の存在を推論する宇宙論的証明,自然の合目的性,美から推論する目的論的証明,道徳的要請から推論する道徳的証明などがある。

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世界大百科事典 第2版の解説

かみのそんざいしょうめい【神の存在証明】

〈神は存在するか〉という問いは科学的方法によって探求され,解答が発見される種類の問いではないが,人間の発する諸々の問いの根底にひそむ抑えがたい問いであり,すぐれて〈実存的〉ないし〈哲学的〉な問いである。神の存在は霊魂の不滅や意志の自由とともに形而上学の根本問題の一つとされてきたが,カントは形而上学のこうした思弁を人間理性の越権行為として退けた。しかしカントの批判は,神の存在を理論的に証明しようとする試みが大きな困難をふくむことをあきらかにしたが,この試みが不可能であることを証明したとはいえない。

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大辞林 第三版の解説

かみのそんざいしょうめい【神の存在証明】

信仰における神の存在を、理性によって哲学的に証明すること。中世のスコラ哲学・近世哲学・キリスト教神学などにおいて試みられた。その形式により、存在論的証明・宇宙論的証明・目的論的証明・道徳的証明などに分けられる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

神の存在証明
かみのそんざいしょうめい

キリスト教神学・哲学の問題の一つ。キリスト教において、神は信仰の対象であるが、世界における他のさまざまな事物や信仰者自身の存在が理性によって確認されるのに応じて、神の存在もこれらの事物とは異なる、これらの事物を越える存在として信仰者のうちにおいて理性的な道で確認されることを求められる。神の存在証明とはこの確認の手続である。それゆえ、それは第一義的には信仰者のうちにおける信仰内容の理性的な自己確認の手続であるが、同時に、非信仰者に対しては信仰者による神の存立の弁証となる。
 古代ギリシア教父やアウグスティヌスにもその萌芽(ほうが)はみられるが、透徹した論理的な思索を展開した最初の人はアンセルムスである。彼によれば、神とは「それよりも大いなるものが思考されえぬもの」である。このことばを聞き、これを理解する人にとって、それはその人の精神のうちに存する。ところで、精神のうちにだけ存するものと、精神のうちに存するとともに実在のうちにも存するものとでは、後者のほうが前者よりも大きい。しかるに、神は「それよりも大いなるものが思考されえぬもの」であった。それゆえ、神はただ精神のうちに存するだけではなく、実在のうちにも存する――とされる(『プロスロギオン』2)。これは、神の観念からその存在を証明するものとして、のちに「存在論的証明」ontological argumentとよばれる。近世ではデカルトがこれに似た証明を行った。この証明の妥当性については、カント、ヘーゲルをはじめ多くの哲学者が賛否両論を唱え、今日に至るまで論争が絶えない。
 これに対してトマス・アクィナスは、経験論的な基盤から、世界存在の認識に基づき、世界存在を存立させている根拠として神の存立を論証しうるとした。それには五つのやり方があり、「五つの道」quinque viaeとよばれる。第一から第三の道は世界存在の運動変化の事実から出発し、運動変化の第一根拠として神の存立を論証するものであり、アリストテレスによっている。第四の道は世界内の存在事物にみられる完全性の段階の相違に基づき、この段階を成立させる根拠として最高に完全なものである神を論証する。第五の道は世界内に存する理性的秩序の根拠として神を論証する(『神学大全』第1部2の3)。これら世界存在から出発する論証は総括して「宇宙論的論証」cosmological argumentとよばれる。カントは、これらを理性の合理性の要求としては不可避であるが、客観的な妥当性はもちえぬものとし、神はこれらとは別の道で求められるべきであるとした。[加藤信朗]

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