窮鼠猫を噛む(読み)キュウソネコヲカム

デジタル大辞泉 「窮鼠猫を噛む」の意味・読み・例文・類語

窮鼠きゅうそねこ

《「塩鉄論刑法から》追いつめられた鼠が猫にかみつくように、弱い者も追いつめられると強い者に反撃することがある。
[類語]逆らう盾突く反抗抵抗歯向かう手向かう抗する立ち向かう蟷螂の斧

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ことわざを知る辞典 「窮鼠猫を噛む」の解説

窮鼠猫を噛む

追い詰められて逃げ場がなくなったネズミは、猫にかみつく。弱者も絶体絶命の窮地に追い込まれると、必死に反撃することのたとえ。

[使用例] よしや、かように捕方に囲まれずとも、このままで逃げおおせるものではない、〈略〉どちらにしても袋の鼠になってしまったのだ。と言うて手をつかねて捕われるのも愚な話、窮鼠かえって猫を噛むというわけではないが、時にとっての非常手段を試みるよりほかはない[中里介山*大菩薩峠|1913~41]

[使用例] そこでぼくは、もう、これ以上いうと危険だな、と思った。いわゆる窮鼠猫を噛むということもある。あんまり追詰めて倉橋君に居直られても困る。ヤケクソになってべらべらと警視庁にぶちまけられたら、一巻の終りだからね[松本清張中央流沙|1968]

[解説] 猫は、いわばネズミの天敵で、ネズミが争ってもとても敵わない相手です。しかし、そんなネズミでも追い詰められると、立ち向かってくるということで、比喩的には、弱者や下位の者をみくびったり、侮ってはならないということにもなります。
 「窮鼠」と漢文調ではじまり、時おり「かえって猫を噛む」ともいうのは、漢文訓読名残でしょう。中国漢代の「えんてつろん」に「窮鼠狸を噛む」とあるのが出典とされ、そこでは、比喩的には政治を行うものが民衆を追い詰めてはならないと諭していました。なお、この原文をよく見ると、「猫」ではなく「狸」になっています。日本でも、鎌倉時代文献はこのとおりに表記していました。なぜタヌキが出てくるのか不思議な感じがしますが、じつはこの「狸」はヤマネコの類を意味していて、日本でも当時はネコと訓読みしていたようです。

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故事成語を知る辞典 「窮鼠猫を噛む」の解説

窮鼠猫を嚙む

弱い者でも、追いつめられると、強い者に反撃を加えることのたとえ。

[使用例] いわゆる窮鼠猫を嚙むということもある。あんまり追詰めて倉橋君に居直られても困る[松本清張*中央流沙|1968]

[由来] 紀元前二世紀に行われた経済政策の議論をまとめた「塩鉄論―詔聖」の一節から。「窮鼠もを嚙む(追い詰められた小さなネズミは、大きなタヌキにだってかみつく)」ということもあるので、人々の生活を脅かすと反乱が起きかねない、と厳しい経済統制に反対しています。なお、この文章では「貍(狸と同じ)」となっていますが、一般には「猫」の形で使われます。

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