物質を高温度に加熱するための装置の総称。高温室は各種耐火物でつくり、外側を各種断熱材で覆ったものである。単に窯(かま)あるいは炉ともいうが、その区別は明瞭(めいりょう)でない。一般に窯にはkiln、炉にはfurnaceをあてることが多い。窯炉がその主体となる工業を窯業(セラミックス工業)という。
ヨーロッパ、アメリカなどでは、セラミックス成形体を焼成して、乾燥した状態あるいはいくらか弱い状態から、使用に耐える状態の硬い石のような物質に変えるための炉の一形式を窯という。加熱する器物または物質を直接に燃料あるいは加熱ガスに接触させる場合に「窯」が用いられ、品物を匣鉢(さや)に詰め燃料や加熱ガスから保護する場合には「オーブン」ovenが、内部の室で保護するものを「マッフル」muffleあるいは「マッフル・オーブン」muffle-ovenという語を用いる。これらの用語は、ときに厳密に区別して使われない場合もあり、窯とオーブンは差別なく用いられているが、陶磁器業者は後者を、れんがやタイル製造業者は前者を用いている。しかし日本ではこれらを区別せずに「窯」「炉」あるいは「窯炉」を同じように使用している。日本で窯の字が一般に用いられるようになったのは明治中期のことである。
[素木洋一]
窯炉の種類はきわめて多く、分類の仕方も、使用目的によるもの、熱源によるもの、形によるもの、炎の方向によるものなど、いろいろな観点からなされる。
セメント工業では回転形のロータリーキルン(回転窯)が広く使用されている。長い円筒形をした窯で、一般に傾斜し、その軸線の周りをゆっくり回転する形式のものである。
また、ガラス製造にはタンク窯(タンク炉tank furnaceとも)がある。これは耐火物製の大きな槽の中に溶融ガラスを満たし、一端から調合物を投入し別の端からガラス種を取り出して製品をつくるもので、通常連続式である。「――炉」とよばれ、一般に用いられているものに、暖炉、香炉などがあるが、化学工業の方面で「炉」というときには、800℃またはそれ以上の温度で物質を加熱、溶融したり、化学変化をおこさせるために燃料を燃やす耐火物製の装置をさす。溶鉱炉、転炉、平炉などがそうである。また、ボイラーで燃料を燃焼する火格子の部分、たき口から火堰(ひせき)までの部分も「炉」とよばれる。
[素木洋一]
耐火物,耐熱材料,断熱材で周囲,内部を構成した窯業用の炉.ガス,油,石炭,あるいは電熱加熱により内部を加熱して,セラミックス,金属などの焼成,焼入れ,焼なましなどの熱間加工を行う.作業の連続性により,連続炉,半連続炉,不連続炉の区別,炎の方向により横炎式,昇炎式,倒炎式,製品の炎との接触の仕方により直火式,半マッフル炉,マッフル炉,燃料により薪材,石炭,ガス,電気,重油炉,焼成の程度により素焼,本焼,上絵付,フリット炉,または形状により丸がま,角がま,輪がま,登りがま,トンネル炉がある.3000 ℃ 近く昇温できる炉もある.雰囲気により酸化炉と還元炉の区別があるが,燃焼式のものでは完全な雰囲気制御は困難で,水素,窒素,アンモニアクラッキングガス,不活性ガス,または真空の場合は電気炉でなくてはならない.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…熱を逃がさないように囲いがしてある。窯と炉を総称して窯炉と呼んだり,窯と炉を区別することもあるが,この区別はあまり厳密ではない。窯を使う産業を窯業と称し,陶磁器,ガラス,セメント,耐火物などが窯業製品である。…
…セラミックス分野では炉と窯の区別は明りょうではないが,炉にはfurnaceをあて,窯にはkilnをあてている。また,窯炉のように区別を避けた表現もある。一般に,伝統的セラミックス(陶磁器,ガラス,セメント,耐火物など)の分野では好んで〈窯〉を用い,新しいセラミックス(エレクトロニクスセラミックス,ニューセラミックスなど)の分野では〈炉〉を用いる傾向が強い。…
※「窯炉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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